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光ある概念の終日  作者: 茶三朗
違う輝き
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前兆前 9

スッ・・・と菓子楊枝が羊羹へ沈み、一口サイズに切れた。光沢に、陽の光を通さない羊羹は断面すら美しい。味はどうだろうか?楊枝に刺した羊羹を口へ

幼少より食べ慣れた味は飽きなどあり得ず、口の友である

微かな水流れの音が耳を通過する学園の中庭を広い範囲で占拠し、日毛氈を敷き、和傘を立て、心の憩いを過ごすが、人の少ない休みの日でなければ非常に迷惑となるだろうな場所で寛ぐ

用事を済ませ、このまま帰るのもよかったのだがミナールやタイガも学園にいると小耳に挟んだのでキハネは面白い事でも起きないかなと期待しながら暫く様子見。今日は親戚の集まりがあったのだが、長くつまらないしか覚えがないのでこちらを選択した


「涼しい日ねぇ・・・」


本当は行きたくないちょっとした理由が欲しいだけなのだろう。行かなかった事で怒られるのならば、他のMaster The Orderと色々ねと退路の細道は確保できるだろう

自分悪い娘だなと独り笑いながら茶を点てていると、遠くの窓よりタイガとミナールが見えたような気がした。気のせいだったのかもしれないが、念の為に1枚のお札を向かわせることにした

だが、お札を手から離してすぐに2人が見えたので気のせいでなく、ちゃんといて移動中の最中。お札を戻そうとしたがまぁいいかと、逆にどうするのか試してみたい

しかし、キハネは知らなかった。2人より前を歩いていたモトキの存在に

2人以外に、誰かが視界に映ってはいたのだがタイガとミナールの近くをたまたま歩いている通行人としか見ておらず、風に乗り、急上昇してはフワリと降下するを繰り返し進むお札が迫っていた


「うわ・・・また靴紐が」


食堂からここに来るまでにモトキのブーツの靴紐が3回解けた。これで4回目

突然、紐に限界でもきたのだろうか?下駄の鼻緒が切れたとは違うが、先程から嫌な予感がする

嫌な予感があって、起きた試しがよくあるので不安に襲われていた。予測してみる。一度、憲兵に捕らわれた身なので警戒され少しでも怪しい動きをして捕まる。タイガが加減を間違えて彼の拳か刀が胸を貫く。ミナールに理由も分からず攻撃される。彼女の取り巻き達が連れ去ったと勘違いされリンチに合う。考え過ぎかとブーツの見た目を捨て紐をしっかりと左右2重に結んでおいた

4回解けたので、4回酷い目に遭わないことを願うばかりであった


「うん?ちょっと、あんた・・・」


「おー・・・モトキー、危ないぞー」


2人の声に「はい?」と一声を発した次の瞬間であった。窓ガラスに壁が破壊され、1枚のお札が現れたのだが青白い炎で燃え尽き、光線の線で空間に円を描かれ、モトキの姿がまばたきよりも一瞬で消えてしまった

光の輪は床に張り付き、筆で書かれたような「封」の文字がいくつも浮かびあがる


「はぁ・・・これは・・・」


ミナールは誰の仕業かわかっていた。その人物の名を出す前に、全身白を基調とした巫女服の女性が破壊された壁からひょこっと顔を覗かせ、タイガとミナールに手を振る。割れた窓ガラス、壁の瓦礫を踏み進み2人に近づくが自分より先に向かわせたお札が消えたことに途中気づいた

「誰かいたのですか?」と2人に訊く。タイガとミナールは1回だけ頷き、キハネは2人が指をさす先へ目を向けると床には封印術式が発動され、誰かを封印している

自分が悪いくせに世話がやけると愚痴り、封印を解除しようとするが床に張り付いた光の輪と封の文字にヒビが入り、突き破ってモトキが現れた


「ほーぉほう、自分で抜け出してしまいましたか。私も、まだまだですね」


「怖かった!めちゃくちゃ怖かった!暗くて、冷たくて、動けなくて、ドロドロして、周りにはおかしな火球が浮遊してて・・・なんつーか、言葉で表せない世界で!」


抜け出せた事、元の世界であった事、タイガとミナールがいる事、安心に溢れて胸を撫で下ろす。色気のある息を吐くモトキに、数枚のお札を貼っていく

次は消滅系の術を何度も発動してみようとしたが、モトキは全て剥がしくしゃくしゃに丸め投げ返した。丸められたお札の塊は淡い紫の炎が発火し、消えた


「ふむ、試させてはくれないのですか?」


「試させてってどういうことだ!?それと壁を破壊して俺をどこかへ閉じ込めた理由を言えっ!」


壁を破壊してタイガとミナールの2人を驚かせるだけのつもりで、あわよくば封印してしまったらを期待してだったのだが、たまたまいたモトキにお札が貼り付き封印術が発動してしまったのだ。事故だと謝罪する気などさらさら無い言い訳

ミナールがこらこらと彼女の右頬を優しく突く。2人は顔見知りなのだろうか?ミナールの取り巻きを思いつく限り並べるが誰も当てはまらず

ミナールに言われ巫女服を着た女性は丁寧に謝る。酷い目には遭ったが命は失わず、堪え難い激痛を受けたわけではないので特に気にはしていなかった

やれやれと少し溜息混じりの吐息、そんなモトキに不運な気配を感じたのか1枚のお札に御呪いをかけ、彼の手を取り、握り渡す


「これは・・・?またお札か、本当は俺に恨みがあるんじゃないのか?すまんが覚えがない、初面だよなお互い?」


「違います、せめてのお詫びのつもりですよ。気休めかもしれませんが、札に御呪いをかけておきました。少しでも、運が良くなりますようにと御守りに・・・」


自分は幸薄いと見られているのは引っかかるが、彼女なりに気を使って渡してくれたのだからありがたくポケットに忍ばせておく

次にモトキは改め、君は一体誰なんだ?と聞こうとした次の瞬間であった。太い藁の縄で縛られた巨大な岩がモトキの頭に落ちた

足首まで床に沈み顔上半分を影が覆う。岩は消え、モトキはピクリとも動かなくなってしまった。気絶したのではない、何が起こり自分はどう口を開き動けばいいのか分からずにいるのだ


「あ、間違えました。このお札は別の・・・」


「勘弁してくれ」


どこから用意したのか、タイガは氷の入った袋をモトキの岩が落ちた頭部に当てるが袋の中の氷はすぐに溶けてしまった。岩の当たった部分が熱持っているとしても高温の熱を発している。それを不思議がりながらも言及せずただ様子見するキハネは、ふとポーシバールでの話を思い出す

薄々だが察していた。タイガの話していた少年がこの人であることを

まだ確信したわけではないが、タイガの人柄に惚れて側に置いて欲しいと志願してくる者がいるのだがミナールのように取り巻き等を置くのは断り、わざと近づき難くしている彼が親しそうなのだから


「藪から棒ですがタイガ殿がテントで仰られてたお方は、あなたでしょうか?」


「うん?俺を知っているのか?」


上から下まで舐め回すように、茶髪に女性みたいなミディアムヘア、服の上からだと目立たないが触ると実感できそうなカッコつけの細マッチョとは比べものにならない鍛えられた身体

モトキはただ困った顔、鼻を摘まれ、髪を指で挟まれ、胸や腹を触られ、この娘の目的が予想できずにいた。ここでミナールからの助け船、手を叩きながら「はいはい、困ってるでしょ」とキハネの両肩に両手を置く


「なるほどなるほど・・・タイガ殿、この者が」


モトキはタイガへ目を向けたが、彼は視線を逸らす。苦笑いながらも内心はこの娘に何か言ったのかこのヤローと問いただす

目は逸らしたままだがモトキには手で謝り、キハネには「そうだ」と一言


「名は?いえ、まずは尋ねるより自分から名乗るのが礼儀ですね。私、これでもMaster The Orderをさせていただいてますキハネと申します。あなたのことはタイガ殿より小耳に挟んでます」


「これはご丁寧に。タイガが自分をどう紹介したかわかりませんが、俺はモトキといいます」


礼儀正しく頭を下げ合う。モトキはなんとなくであるがタイガとミナールへの接し方から只者ではないと勘づいていた。Master The Orderの3人といる食堂でよりも異様な光景がそこにある

挨拶が終わり、彼女は手を差し出してきたのでモトキはその手を握った。ミナールの時とは違い血生臭い始まりにならなくて良かったと安心していたのだが、キハネはモトキに一本背負いを行い床に叩きつける

不意であったが、なんとか空いた片方の腕の肘と両足を先に床へ着けさせ免れた

「油断してはなりませんよ」と邪を感じるにっこり笑顔、モトキは怒る気が起きず、小さく「はい」と返事


「へぇ・・・何故、このモトキ殿はMaster The Orderに入っておられないのでしょうか?申し分ないと、私は・・・」


「さぁな、入学した時期の問題かもな」


大まかながらも、ファーストタッチでモトキを測ってみたがこれは冗談のつもりだろうか?彼女の言葉はタイガも頷きたくなる意見である

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