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光ある概念の終日  作者: 茶三朗
違う輝き
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前兆前 7

散らばる潰れた空き缶、まるで親に内緒で飲みまくる子供のようなベルガヨル

ボロいソファーに寝転がり、潰しながら数秒で飲んではポイ捨て、それを女性が拾い片付けるも追いつかず。小さな円形テーブル上の缶が少なくなれば、男性が補充していく

時折壁や床に缶を投げつける。八つ当たりなのだろうか、行き場の迷う苛立ちと怒りは無意味だと頭では理解していてもどうすることもできず


「ベルガヨル様、ここのところ毎日ですな。身体に問題は起きてないかい?やけ酒をされるよりマシですけどな」


「るせーよ。何を飲もうが俺の勝手だ、酒は飲む気になれねぇ・・・好きな烏龍茶だから身体に悪いはずないだろ」


仰る通りと回数の少ない拍手、きっと馬鹿にしているがいつもの調子であるようだ。女性の方は拾った缶を袋詰め、それが一杯になると部屋の隅に積むを繰り返す。する必要はないとベルガヨルが言うも、彼女は聞き耳立てず続ける

窓のない広い部屋、1つある扉の先は上へあがる階段。この場所があるのは表向き潰れた店だが、その店内の地下。元はケーキ等の菓子を販売する個人経営の店だったのだが、店主が亡くなり継ぐ者もいなかったのでベルガヨルの親が土地を買い取ったのだが息子がアジト兼憩場として利用している


「あーあぁ・・・くだらねぇ・・・!」


「いい加減、機嫌を直されたら?ポーシバールへ行ってからずっと機嫌悪く・・・」


額に血管が浮き出、開けようとした缶を握り潰してしまう。自身もびしょ濡れになってしまい男と女の2人がすぐにハンカチとタオルで拭く

ベルガヨルは溜息をついた。思い出すのは見学だけのはずだったのに勝手な行動をしたタイガが戦いを終わらせたと帝より讃えられている姿。それとMaster The Order内で自分より上となっているミナールとキハネ、ようはただの嫉妬である。ちゃんと手合わせしたわけでもないのに自分より上にいるやつと、自分より下なのに帝の1人に誉められたタイガへの嫉妬、そうだと自覚していないのだ


「納得のいかない毎日・・・なんて、誰にでもある。遂げれるなら遂げたいが・・・だーっ!もーっ!俺の位置が間違いだと答え合わせをはっきりさせたいのに!学園長の老害め、Master The Order同士の戦闘はなるべく避けて起こすなだと!これだとわかることもわからないの継続じゃねーか!」


寝転がる場所に利用していたソファーを投げ、正面先の壁へ突き刺さる。ただでさえボロっちいソファーだったのに、これではもう使い物にならないだろう

女性が烏龍茶で濡れたベルガヨルの衣服の替えを用意、濡れた衣服とまったく同じ物と色を。女性がいる前でも御構い無しに着替え始めた

今さら恥ずかしがったり目を覆ったりお袈裟なリアクションなど寒いだけ、ベルガヨルと2人は幼少からの長い付き合いである


「あークソが・・・こうなったら敵側の大者、五星とか誰かを討ち取るのが手っ取り早いか?都合よく俺様の前に現れてくれないかなーっと」


「ベルガヨル様が五星の1人でも討ち取ればMaster The OrderのFirst、Secondでは収まりませんな」


理由もなく突然に「イェーイッ!」と2人でハイタッチ、女性はやれやれ顔で脱いだベルガヨルの服を畳む。他人をよく煽り、馬鹿にするベルガヨルだがこの2人との関係は良好な方である


「ふん!学園長も、他のMaster The Orderも臆病で、面倒ごとになるのが嫌なんだろ。あの眼鏡老害め、いつか蹴落としてやる!」


彼が学園長に怒りを見せるのは無理もない。Master The Order内で位を上げるには自分より上の者に勝つか、上の者や周りに認められる、させる方法が主。つまり、学園長がMaster The Order同士での戦いをなるべく避けろとは手段の1つを消している意味になるからだ

タイガのように独断で動くにも、まだ大きな戦が起こる匂いもなく、ポーシバールでのような小規模だろうと重要な戦などそう起こるわけがない。まずは証明させたいのだ、自分より上となっているミナールやキハネに


「同士での戦いをなるべく避けろと仰られたならば、向こうが戦わざるをえない状況、不可避にすればよいのではないのでしょうか?」


「なんだと・・・?」


男の言葉にどういう意味だと質問する前に、女性から烏龍茶の匂いがする畳まれた着替えを渡された。畳んではくれたけど運ぶのは自分自身なんだと苦笑いを浮かべ、取り敢えず着替えはその場に置く

改めて、戦わざるをえない状況をつくる方法を尋ねてみる。すると男は鼻で笑い、あなた様自身が時折思いつくことを実行すればよいだけと返答

ベルガヨルは考える。ミナールやキハネ、他諸々に対し企てやってやろうか?と脳裏をよぎったことのあるものは暗殺はもちろん、奇襲もあれば誰かを人質に、煽り馬鹿にし、立場のプライドを攻めて堪忍袋を破裂させる等。だから、上位3名を除けば残りのやつらからベルガヨルへの評価と態度はあまりよろしくない


「実行か・・・苛立ちで思いつきはあったけど行動したことがなかったな。暗殺を?いやいや、暗殺してこいつは俺がやったと言っても、暗殺で勝ち取ったのかよと見られてしまう、これは敵国にやるべきだな。卑怯卑劣な手段にしても、実力は認められる方法を選ばなければ・・・なれば、人質が煽りを続けて怒らせ攻撃させるか」


「正解、正解ですよベルガヨル様・・・では、さっそく」


「もう行動に移すのか?」


「今日授業は休みですが、学園に行けば必ずといっていい程に高確率で誰かおります。もしかすればMaste The Orderの関係者やひっつき虫の生徒がいるかもしれません」


今日がダメならば明日、明日がダメなら明後日、機会は拾えるが転がるのは待つしかないのである

上がりたいと望むなら、苛立ちによりこうしてやろうかと思いつきを結局はやらないより、多少待つ方がずっと良い


「察するに人質の流れか、だが何故?急に?」


「急ではありません、自分の中では。今までから、ベルガヨル様が最高に苛立ちを振りまいておりますからでしょうか?」


もし次に、ベルガヨルがやっぱりやめると言えばそれでけっこう。男はただ、やって良いこと悪いことなどどうでもよく、ベルガヨルがやりたいと考えることへ止めるか背中を押してやるだけ

ベルガヨルは間髪置かずに立ち上がると、階段へと向かう。2人も、女性は結局置き忘れられた着替えを持ち、彼の後を追った

ベルガヨルも念の為等の一応聞いておこうかなというものはあったが、学園に着いてからまた聞き、考えよう


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