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光ある概念の終日  作者: 茶三朗
継がれることのない聖剣
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革命軍 2

モトキは動かなくなっていた。倒れる彼の側へニハは降り立つ

しばらく彼を眺めてみた。眼は白くなり、身体の半分以上を染める黒混じりの鮮血はまだ生温かいだろう


「もったいないことしたかなー?連れて帰り洗脳して育てれば革命軍のまあまあな戦力ぐらいにはなれてたかもねー」


こうしてもよかった選択肢を浮かべるも、やっぱり必要ないかと己に言い聞かせ区切りをつけ去ろうとするが、まさかいきなり起き上がってないだろうと振り返り身構えてみたが何も起きなかった

ちょっと恥ずかしくなる


「剣も無くて、邪魔をされて・・・剣探し再開するにもやる気が起きなーい。適当な言い訳考え・・・」


その時、新しい音がした。喩えるなら大きな氷塊をアイスピックで細かく砕いていくような音

その音はモトキからしていた

胸から右肩にかけての傷、そして切断部より乱れた網目状の赤い肉色をした繊維みたいなものが傷口を覆い、右腕を失った切断部から伸びていた


「な、なに!?一体!」


離れた右腕も独りでに動き、やはり繊維みたいなものが切断部から伸びて爆発による傷を覆っている

伸びた繊維は絡み合い、距離を無くしていきくっつく


「そんな・・・これじゃ・・・これじゃまるで!ボスと一緒じゃない!」


一歩大きく退がる。傷は完全に治り塞がれ、モトキの目が開くと勢いよく起き上がった

瞳は潜む狩りではなく一気に襲いかかる獣、彼の背後よりそれを感じる。息は荒く、乱れ崩れたリズムを繰り返し、顔は怒っているようでほくそ笑んでいるようにも見える


「後方より感じるもの、これもボスと・・・いえ、似ているようで全然違う」


呼吸は静かになる。俯いてしまい左手に剣を右手に盾を持ちながらゆらり揺れ歩き始めた

彼女は嫌な予感がした。かつてボスが五星であるスペードとクローバーの前で、窮地となり変貌した時を思い出す

モトキの顔が正面を向く。彼女は瞳しか確認できず、1回の息を吸う前にはもう剣刃が首に触れていた

動揺を除けないまま、翼でモトキの腹部を貫き押し無理にでも距離をつくる

抜け落ちるが立ち上がろうとするので飛び迫り、上から蹴り押さえると両翼で何度も速く、重く斬りつけながら撲る連撃を

しかし、翼が動かなくなってしまう。地に失せいたとしても両翼をモトキの両手が、指を鎧に食い込ませ掴んでいた


(やっぱり・・・)


力をいれ、両翼を捥ぎ取った。彼女の翼が取れた箇所からは青と橙の光が液体状に飛び散るも、すぐ鎧の翼は再度形成されていく

ニハはモトキの頭を踏みつけ、脇腹や背を容赦なく蹴る。言葉も発さず無言で蹴り続け、彼の捥ぎ取った翼の鎧を1枚1枚破片へと分解させ宙に浮かせると2本の長い尖のあるものをつくり背に刺す

確実な急所、だが彼女は警戒を解かない。前例をこの目で見たことがあるからだ

再度、両翼よりそれぞれ波打つ光で光塊をつくり放とうとするが背中に突き刺さったまま、右拳を握るモトキが目前に

油断したところを突いてきたわけでもない、だが起き上がるところも走り向かってくるところもずっと見ていたのに見えなかった


「くたばれぇっ!」


親指を軽く添えた拳はニハの腹部へ、握り締めた光の属性エネルギーが隙間より漏れ散る

ゆっくりと拳から彼女から離れていくかと思えば一気に速度が変わり、一瞬で姿をモトキの前から消す

吹き飛ばされた彼女の行き先は、モトキも知る場所


「ぐはぁっ!」


自分が青き光で破壊した遺跡、更地と化し遺跡の跡地となってしまった場所まで彼女は飛ばされたが両翼の先端を地に刺すことで叩きつけられることも、これ以上飛ばされることもなく停止

彼女はくすりと笑う、最初はここから彼が吹き飛んでいったが次は自分が飛ばされここへ戻ってきたことに


(やっぱり、パワーだけは微ながらも上がっている。興奮の高まりにより自暴自棄?無我夢中?抑制が効かなくなり始めている。ボスと違うねー・・・まだ序と言ったところかなー?)


月明かりだけ照らす夜の世界、視線の先に剣と盾を持ちこちらへ歩み向かってくるモトキの姿。顔は影に隠れてしまい、双眼の色が不気味に輝く

彼の後ろには巨大で鋭い眼だけを同じく輝かせる真っ黒で形すらなく、霧のような正体のわからない存在

存在しているのかすら怪しい、ただの幻、彼からの気配によるものかもしれない


(ここであいつを仕留めるつもりだったけど・・・もしボスの隠れた身内とかだったらどうしよう。ボスに報告するだけでも・・・)


モトキの背後にいる黒いものが突如咆哮をあげる。空気すら目にできるほど揺れ、自然が恐れて震えているようだ

彼は走り出す。ニハは急なことで驚きはしたが翼で自身を包んだ。仕留めるにせよしないにせよ、モトキに攻撃をし痛い目にあってもらおう


「うん?」


ここで後方より、僅かにだが光を感じた。転がる遺跡の残骸達、その内一つにすぎない土塊のヒビから漏れている光

ヒビは増えていき、一度光を失う。次の瞬間、砕ける音と共に何かが飛び出してきた


「まさか・・・」



飛びした「それ」は迫るモトキの顔面に直撃。仰け反り仰向けに倒れてしまう

背後にいた黒いものは消え、一瞬にして空気も圧も描き変えてしまった


「へ?は?え・・・?」


さっきまでとは全然違う。始めに戻ったとしていいのだろうか?起こったこと理解できぬまま、腹部と胸からくる重みに気づく

鞘に納められた一振りの剣がそこに、自分の持つ剣とは違う。二人は剣より発せられているオーラが見えていた


「この剣は・・・?」


「はーっははははははっ!ちゃんと現存したのね!来た甲斐があった!語る、継がれる、伝は全て偽りじゃなーい!どのようであれー!」


今度は彼女から、一度飛び急降下をしてモトキに迫る


「くっ!今は伝説でもなんでもいい、あるものに頼らせてもら・・・」


しかし、剣は抜けなかった。どんなに力をこめて、どんなに精神を落ち着かせ、どんなに呼吸を整えても


「抜けないんですけど。俺で戦えとして来たわけじゃないみたいだな」


「まだそうと決まったわけじゃないけどねー!どうであれ剣は自分で存在させてあなたのところに来たのー!」


モトキを掴み上空へ、月を背景に一時停止すると2人揃って逆さになり落下。この間の時間、とても長く感じた

ニハは回転を加え、モトキは抵抗することなく抜けない鞘に納められたままの剣を手離す

膨大な土が噴火の如く、凄まじい音は遅れて。空へ衝撃により打ち上げられた土は降り落ちる土砂の雨となる

彼女の笑い声が響く

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