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光ある概念の終日  作者: 茶三朗
巻き込まれの護衛任務
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五星 3

「スペード・・・スペードさーん?まだおねむですかー?」


「・・・眠っていたのか、私は」


五星が集まるいつもの部屋にて、スペードの手には2枚重ねの親指と人さし指で摘んだ書類

周りを見回すとジョーカーしかいない、ジョーカーに起こされたようだ

テーブルにはグラスに大量の菓子類等、自分の前には転がる万年筆


「討ち取るチャンスだったけど、お前がいなくなると面白くなくなるからやめておいた」


「どうも・・・」


あと2枚の書類に目を通しサインを、ただし2枚目はクシャクシャにして捨てる

グラスに水を注ぎ目覚めの一杯を、ジョーカーはエナジードリンク類をわざわざ数本からグラスに注ぎ飲む。疲労とかではなく味が好きなだけ


「付き合わせて悪かった。昨夜ここへ集まりそなただけ帰らず残っていたので仕事を持ってきてしまった。独り部屋へ籠り仕事をする気にならなくてな・・・何故帰らなかったのだ?」


「床にこぼした牛の乳をカーテンで拭いてしまってな。これは帰ったらメイド長だけでは済みそうになく、こっぴどく怒られるなと帰りにくくなった」


緑の豆をフライした菓子はうっすら塩味。スペードもまた、数ある菓子の中からマシュマロを3粒朝食代わりに

あの2枚で仕事は終了。積み重ねられた書類を持ち上げ、部屋を出ようとするがジョーカーが呼び止める


「待ってー!待ってくださいスペードさまー!このままだと箒を振り回すメイド長に追われる結末しか描かれない」


「は、はぁ・・・そなたと話をしながらで退屈することなく仕事を片付けれたお礼に、共に頭を下げてやることはできるが」


「あ、冗談です。一度帰ってお風呂に浸かってきます、では後ほど」


また五星達による集まりがあるのだが、いつもは夜に行われるはずなのに珍しく昼から

くだらなくも楽しい無駄な話が大半である。けども、集まるだけで意味を成すことはあるからこそ皆はちゃんと集まるのだ

休まるならばよし、情報交換でもよし、五星の内誰でも招集をかけることが可能で、それに応え行くか行かないかは自由だが、大抵は全員集まる


(ジョーカーはいつ寝ているのだろう?)


部屋を出ていこうと扉に近づきながら、ジョーカーの後ろ姿で手を振るのを見てふと考える

さっき起こしてくれたが、先にジョーカーが起きたと捉えるのが普通。しかし、過去に寝ていると思いメイドが毛布をかけようとしたら起きていたり、ダイヤが鼻に花を詰めようとして返り討ちにあったりしていた

今は甲冑が身を包んでいるので余計に確認が不可能である。やつは寝息をまったく立てないのだ

ジョーカーがドアノブに手をかけた次の瞬間、扉が勢いよく開き、やつは扉と壁に挟まれた

慌てた様子の少女がそこにいた。たしか、ジョーカーの側近であるノレムの妹


「ジョーカーさまー!ジョーカー様は!?はっ!スペード様!騒ぎをたて申し訳ございません!」


「うむ。そなたの求め者ならば、そなたが開いた扉の裏だ」


指をさす先に反動でゆっくりと戻る扉。そこには壁に埋まったジョーカーの姿が

彼女はすぐに引っ張り出すと頭を床に着け謝り続けるが、ジョーカーは「いいからいいから」と宥める


僕に用があったのだろ、急報?」


「そ、そうです!お兄様を!お兄様を止めてください!エトワリング家の御令嬢を連れてくることに失敗した責任をとると、腹を切ろうとして!」


「は?切腹?介錯は?」


疑問を持つとこはそこではないはずだとスペードは声に出さず、内心で

ジョーカーは「わかった」の一言を彼女に告げ、先ほど埋まった壁を突き破り向かう。普通に扉から出ろとまた声に出さず

少女もまた、一度スペードに頭を下げてからジョーカーを追いかけていった。自分だけとなったスペードは、箒と大きめの塵取りを用具室より拝借し、突き破った壁の残骸を掃きながら塵取りへ入れ、残骸により山盛りになったそれを右手に、左手には下から積み重なる書類の山を支え部屋を退出


「まぁ、見ていて暇つぶしにはなったかな・・・」


朝露により草木に水気を感じる。曇り空でも桜の色気すら思わせる美しさは損なわれはしない

そっと手を開き、待てば花弁そこへ落ちる

ノレムは一本の大木の下で、枝垂れ桜を眺めていた

上半身に衣服を着ず、手には短刀


「死する際 多なる生も 世は華美に 映るとなれば 幻として」


辞世の句を一つ

桜の雨が降り落ちる中でひとひらの花弁を握り、その場へ座る

瞳を閉じ、ジョーカーへ今までの感謝の言葉と、最期の相手があいつでよかったと、倒せずに終わる後悔と己の弱さの念を心で述べ、短刀の刃先を腹部へ向けた


「なにやってんのおまえー!」


刺さる寸前に、ジョーカーから左よりドロップキック。手から短刀が飛び、地にに刺さり、ノレムは桜の木へ激突

ジョーカーは受け身をとらず地に着いた際、衝撃で全身を包む甲冑の頭が取れた

顔は見えない。ソニームがすぐに拾い上げ、バスケットボールにおけるダンクシュートの要領で被らせる

ノレムもまた、短刀を拾い切腹しようとするがジョーカーが背後から羽交い締めに


「死んで御詫びを!自分は任を成し遂げることができず!」


「お前は極端に考えすぎだ」

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