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光ある概念の終日  作者: 茶三朗
巻き込まれの護衛任務
25/217

夜明けは過ぎて陽射し入る 9

気温が外気に比べ低く、人など寄りつかない荒野に建ているがもはや廃墟。外の草を掻き分ければ線路の跡

存在を忘れられた汽車が眠る廃墟に、ノレムとソニームの兄妹が解かれていく糸の塊玉より


「お兄様、私の声が聞こえますか?」


「聞こえている。俺で敗走するならば放っておけばいいものを・・・」


口から血を吐き、蹴られた脇腹を両手で押さえ立ち上がるが鈍痛が響く

膝から崩れそうになるも根性で耐え、再び血を吐き、歯を噛み締め、汽車の巨大な車輪に身を預けると力を全て抜き座り込んでしまう


「負けたのかい?残念だったねと慰めるのと初めから期待していないと冷たくするのどちらがお望み?」


妹が座り込んだ兄へ心配の声をかけるよりも先に別の声、汽車の運転席から顔を出したのはにっこり笑顔の青年

優しくも気味の悪さを感じさせる笑い声が廃墟内をこだまし、更に不気味さを増す


「クアンツさん!いつからですか!?」


「んー・・・お主ら・・・?あれ?貴殿ら?お前ら・・・!これだ!お前らと一緒ぐらいですかな」


座り込むノレムへ近づき、眉間を指で突いてみると明らか不機嫌顔に

にっこり笑顔のままでも不敵だと捉えてしまうような雰囲気を出し、嫌がらせに連続突き

ノレムが掴もうと腕を伸ばしたが一歩後退し、届かない距離で笑う


「ははぁー!はぁ・・・終わりましたとしても、結局は表向きにしろお嬢様を連れてくることはできず。ジョーカー様にどのようにして言い訳します?」


モトキ側だけでなくこちらも終了とした。目的を全ては成し遂げられはしなかったが、主であるジョーカーより任としてスペードの興味に余計なお世話をすることはできた

ノレムは、最後に自分へ蹴りを撃ち込む寸前のモトキの顔が忘れられずにいる


「あいつの顔、いつか倒さなきゃ忘れることはできないだろうな・・・」


そんなモトキもまた、博物館での2人が頭から離れない。役目を終えて屋敷から去ろうとする彼はふと2人の顔が過る。特にノレムが頭に浮かび残っていた

彼はどうして、たとえ捨て駒であり利用されていてもジョーカーをそこまで心酔できるのだろうか


「ほら、ぼーっとしてないで」


「あぁ・・・すまない」


フェーナーより、もっとゆっくり、数日の宿ぐらいは用意してあげてもいいと申してきたが感謝を述べ断った

学園に戻るだけ、去る前にお嬢様はモトキの手を取り、しっかりと握る。迷いのない瞳でしっかりと彼の顔を見つめ


「モトキ・・・学園を卒業してから、またはヘマをして退学になったら私に雇われてみませんか。どうです、考えておいてくれません?」


「ははは・・・まぁ、片隅に留めておきます」


彼女の手は熱かった。ギリギリまで手と手の皮膚は触れ合い、フェーナーは小さく手を振り見送る。横にいるソレンダも頭を下げていた

モトキもまた小さく手を振り続け、互いの姿が見えなくなると少年は下を向きながら歩く


「辛いか?」


「ちょっとな・・・辛いな、辛いなー・・・」


フェーナーを守ることはできたが、フェーナーを救うことはできなかった

彼女は強かった。もしかしたら泣きながら責められた方が心に残るものがマシだったかもしれない

それすら考える自分が嫌になる


「もしも・・・もしもだ、ここにあいつがいたら今の俺にどう言葉を投げかけるだろうな?」


「モトキ・・・疲れてるんだ、ifがすぎる。兄さんは、いない」


「・・・そうだよな、そうだったな。なーんてな。うん、なんてお前がどの立場であっても・・・ここにいなくても帰れば弱音を聞いてどう返す?・・・なぁ、答えてくれ・・・」


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