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光ある概念の終日  作者: 茶三朗
傭兵業務
189/217

地をいく傭兵団 28

抑えつけられながらも、余裕のありそうな気味の悪い笑い声を払拭する為、この先どういった展開になろうが先ずはこのヴァンパイアを排除しようとクローイは魔撃の銃内部で形成できる銀製の弾丸を撃ち込むことにした

うつ伏せに抑えつけられているヴァンパイアの背中から心臓に一発だけはない。後頭部、頸、背中、尻にも容赦なく発砲して完全に消滅させてやると


「ヴァンパイアにはヴァンパイアらしい幕引きをくれてやろう!魔撃から放たれる銀の弾丸で!」


「くくく・・・その銃は恐ろしいが、お嬢様ちゃんに恐怖を抱く刻は一時もなく」


不利な状況であるくせに挑発するような態度、戯言として聞き流すことにした

バイクの後輪で彼を抑えつけるゾゾイに気を抜くなと釘を刺してから引き金に指をかける。これでまずはこの者が銀の弾丸を撃たれ、砂となるか光となって消滅するか、それとも新しい消滅の仕方を目の当たりにするのか

しかし、トリガーを引く次の瞬間、クローイの右肩に青い球状の物体が落ちてきた。間を置かずに続けてもう一つが右腕に落ちる


「ぐぁっっ!?」


完全に右腕の折れる音がした。最初に落ちてきたのが肩に着弾はさた反動で手から魔撃を落としてしまう

その球状の物体はクローイだけでなく、広範囲に敵味方関係なく降り注ぐ


「なんだこりゃあ!?」


疑問を口に出しながらアルフィーはアオバの頭上を飛び越えながら、彼女に落ちてきたその球状の物体を蹴り飛ばした

着地した直後、今度は人物に落ちてきたのをアオバが長巻で斬り裂く

その手応えは突然に硬い物から柔らかい物を斬るような感触になったかと思えばそれは破裂した


「ふ、風船?」


正体は風船であった。風船が空から砲丸の如く硬く、重くなって降ってきたのだ


「御名答・・・」


アオバの声が聞こえていたのか、抑えつけられながらも独り言のように呟き、その状態のまま先程噛んだ際に親指から出る血を飛ばした

血は弾丸のように放たれ、落ちてくる風船の一つにぶつけ弾くとそれをゾゾイの左脇腹に命中させる


「グッハァッッ!!!」


吹き飛ばされるように彼がバイクから離れたので、全身を大の字に広げるように立ち上がった

櫛で髪を整え、高らかに笑う


「フハハハハハハハ!あー、おかし・・・」


血は再びサーベルを形成し、背から翼を生やして空中へ


「流れがこちらに、とは?ククク・・・!」


ジャージ姿なのでヴァンパイア特有の翼が似合ってないなと思いながらクローイは、あのグラディフの娘による怪力で生じた地の破片から細長めでちょうどいいサイズのを添え木代わりに、上着の裾を破き包帯として折れた右腕に巻く


「所詮清く静かな流れとは!嵐一つでなる濁流で呆気もなく押し返され風景が変わるものです!!」


何を仕掛けてくるのかと身構えたが、イルベターは背を見せ猛スピードで自分達とは反対の方向へと飛び去っていた

見る限りは逃走である

すぐにでもその背に一撃を与えてやりたかったが、空気が上から押してくる流れへと変わった

その異変はすぐにして気配から視界へと現れた。空に影が覆う。ダメージが意外に大きく、身体を起こすのにまだ時間のかかりそうなゾゾイ以外の3人が見上げるとそこには巨大化したクググクが落下し迫ってきていた


「小さき命は諸共に潰れてしまえんでーーーーーん!!」


全身に白色の気を纏うように発生させ、自らがまさに隕石と化したかのように


「あれの何が濁流だ!ふざけたことぬかしやがって!」


落下してくるクググクへ黒い球体を蹴り放ち、風穴を空けてやるなり、粉砕してやろうとアルフィーは試みようとするも、アオバが止める


「私達に来ていた流れを静水として、それを覆す濁流だとするなら、こっちにも対する濁流があるわ・・・」


彼女も、クローイも、目の当たりしたことがある者だけに、邪悪に染まりかける力を察していた

ネフウィネを相手にした際に凶変ともいうべき、あの時の気配と空気

その力に賭ける。この濁流を押し返せる濁流として。アオバは少し息を吸い、口に空気を含んでから叫ぶように声を出す


「モトキくーーーーん!!!!」


その声に合わせて氷海を突き破り飛び出した一つの影がグラディフの娘の上空を通過し、猛スピードでクググクすら越えて瞬時に光線が屈折したかのような急な方向転換から巨人の体へ強襲

胴回し回転蹴りをその巨体に炸裂させ、グラディフの娘目掛け蹴り飛ばす


「よくもワタクシの部下を!いや正しくはお父様の部下なのデ」


避ける為ではなく、飛んでくるクググクを受け止めるべく跳び上がる

その巨体を片手で容易に受け止め、持ち上げた矢先、モトキがその向こうより迫ってきていた

「ちょっとごめんネ」と一言許しを入れてから持ち上げた彼を浮かせ、手に氷で斧を形成

両手剣によ剣撃の一撃を氷の巨大斧が防ぐ


「そんな怖い眼になってしまいましテネー。GIVE ME!スマイル〜〜〜!」


「笑えねーよ・・・」


作り笑顔でモトキにも笑顔の催促をするも彼女自身、冷や汗と焦りが隠せない。先のモトキとは人物が変わったように目には映るのだ

彼から威嚇のように全身から気配として出る光の力に、闇の力が濁り混じり始めている気がした


「Oh!その力、やっぱり」


知っている。その力を自分は知っている。しかし、どこで知ったのか目撃したのか、回想に入るのはやめておこう。氷の巨大斧から亀裂が生じる音が聞こえたからだ

このまま防いでいても斧が砕かれてしまうだけなので思い切って自分の怪力を使って押し返しながら拳の一撃を叩き込もうとした次の瞬間、盾が彼女の胴体に炸裂

何が起こったのか理解に一瞬遅れたが、次に頭の中に出た言葉は「いつのまに?」であった

その隙に両手剣が彼女を容赦なく叩き斬ろうとするも、元のサイズに戻っていたクググクが上空から猛スピードのラリアットでモトキを撲り落とす


「モトキ君!!」


地面に落ち、叩きつけられるかと思われたが、足底から火花を散らしながら滑り、ブレーキをかけけるように着地。そしてその右手には飛んできた盾が戻る

その背に、アオバは再びモトキの名を呼んだがチラリとだけこちらに向けられた眼はどこか冷酷であり、残虐性を含み、どこか戦闘を楽しんでいる喜の眼だ

明らかな変わり様にアルフィーは唖然としていて声をかけることすらできずにいる

以前、Master The OrderのFirst戦の後日、生徒会室でふと彼と闘った際のことを訊いてみたことがあったが、闘争本能が体を動かしているみたいな様子で、多少のダメージなら顧みずに攻めてきていたとネフウィネ当人から聞いていた

あれが本性でないと信じたい


「気分はGOOD?Are you OK?」


グラディフの娘は右手にハイビスカスを模した髪留めを持ち、それを先程戦闘で失われた方に付けながらゆっくりと歩き着実に近づいてきていた

その一歩毎に、地が凍てつく

モトキは瞳を縮小させ、歯を噛み締め笑う。白い息が歯と歯の隙間から漏れていた


「悪くない」


彼女に遅れてその後をリアが、次にイルベターが降り立ち、最後にクググクが

色素薄めの金髪の女性が立ち止まれば、3名は一歩退がる位置で止まる


「狂気に呑み込まれていき、いずれ戦闘と破壊を求める存在となるか、それすら共存して自分の力とし利用する・・・」


間違いではない。モトキと同じ力を持つ者、その者と完全に同じではないが似た威圧と気配の匂いがする

目を閉じれば、その者と初めて会った時まで遡ってしまいそうで、耽ている場合ではないと力強く目を見開く

そして彼女の目は、白かった結膜が、黒く変色していた

同時に強い冷気が吹き荒れ、辺りを無差別に凍らせていく


「キャハハ!COME ON!血の臭いがするネェ!」


「なら、これから飛び散る血の臭いはお前らのにしてやる」


髪の先端、そして左肩から徐々に凍結が始まっていたが盾に両手剣の刃を当て引き、火花を散らして全身に気合いを入れれば氷も吹き飛ぶ

全身を走る血の巡りと心臓の心拍が速くなり、滾らせる

モトキの隣にアルフィーも並んだ

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