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光ある概念の終日  作者: 茶三朗
傭兵業務
187/217

地をいく傭兵団 26

乱暴に無我夢中で地に伏せるダイバーを蹴り、踏みつけ、最後にその背を足で強く押さえつける

疲れたわけでもないのに息があがり、満足感と優越感には遠く、やるせなさだけしかない

押さえつけられながらなんとか頭を左に向けたダイバーのその眼は、自身に憐れみを向ける眼でより腹が立ってきた


「くそ!くそ!くそ!そんな眼で僕を見るな!憐れむな!恨め!憎めよ!イホを殺し、聖帝に楯突く僕を!僅かながらでも同情するな!」


「少なくとも・・・!あんたが妹と、故郷を失ったことへの心情は・・・ぐっ!!」


これ以上、喋らせたくないので踏み込む力を強くする

骨の砕ける音がした。ダイバーの口から少量ながらも鮮血が吐き出される


「後腐れのないよう、ぐしゃぐしゃの肉片にしてやる!」


投擲した円錐槍を手に戻し、雷撃をその身に走らせる。それを踏みつられ地面に伏せるダイバーへ突き刺そうとしたが、突如として黒い羽根が降り始めた

ふと、つい円錐槍を握る手が止まってしまう。何度も見たことのある光景のはずなのに

だからこそ、なのかもしれない


「ランベーーーーーーっっっ!!!」


彼の名を叫び、血走る眼を向け、大太刀を手に猛スピードで迫ってきた

そのエモンの姿に思わず鼻で笑い、「必死になれ」と一言送り、踏み押さえつけているダイバーを蹴り飛ばし、ぶつける

助ける為に受け止めはせず、右に跳び彼を躱しながら大太刀を大きく振るい、黒羽根を散らせると共に斬撃を放った


「それが通じると思ったか!?」


左手に握った盾で撲られ、その斬撃は容易に弾き砕かれてしまう

斬撃を放ち、その到達までの距離を能力を使い一瞬にしてランベの目前へ移動

脳天へ大太刀を振り落とした


邪裂光一刀(じゃれつこういっとう)!!」


盾は先程の斬撃を撲り弾くのに使われた直後の隙を狙う

しかし、そう易々と攻撃後の隙を晒す油断はない。盾を手から落とし、その左手に雷を生じさせる

脳天に大太刀が振り下ろされるより先に、迫る刃へ左手が掴みにかかった。掴んだ直後、間を置かずに円錐槍でその腹を突き破るつもりで

しかし、振り下ろされた大太刀よりも先にエモンの右膝がランベの顎下へ撃ち込まれた


「っ!?」


重い一撃を与へ、太刀を振り下ろすのを中断し両手を地につけ、ランベの腹部を重点的に連続蹴りを入れ、蹴り続けながら逆立ちの様になり相手を浮かせ、最後に大きく蹴り上げた

そして続けてダイバーが蹴り上げられたランベを殴り落とす


「重ぇーな!!」


地面に打ち付けられたランベは鉄臭い咳を一回行い、追撃に備えすぐさま立ち上がり、口角から垂れる血を舌で舐めとると同時に円錐槍を振り雷撃を飛ばす

至近距離から飛ばされた雷撃はエモンを狙うが、ダイバーが地面を殴り叩くことで噴き出したマグマの壁に邪魔をされ、雷撃を受け止めたマグマの壁ごと大太刀で斬り払い、接近し斬り抜け技にかかる


五魚(いうお)の喰らい!!」


水に落とした餌に獰猛に群がり喰らう魚から名付けられた剣技

最初は前方より素早く斬り抜け

次は背後から同様に斬り抜けると

左右どちらからでもいいので斜めから

さらに追撃で先のとは対照の斜めより

最後は相手の頭上より叩き斬り一刀両断でトドメ

しかし最初の一撃を円錐槍に防がれることで技が不発に終わり、大太刀と円錐槍の鍔迫り合いへ


「僕が手から盾を放すのを知っていたかのようだったね」


「お前の盾を持つやつがお前と同じことをしてきたのでな!」


モトキの相手を何度かした際に、同じ手を使ってきたことがあった

想定しての仕掛け。片方の手に盾を持つ者は、最悪盾がなくとも捨ててでも戦えるようにはなっている

モトキとの経験を利用したのだ

それをランベ自身が盾を落とすかは正直賭けであった


「僕の盾か・・・。自らの意地で手放したので未練はないが、他の輩に使われているとすれば腹ただしくなってくるものだな!」


力技で鍔迫り合いからエモンを弾き飛ばすと、その直後を狙って彼を貫こうと槍を月放ったが突撃してきたダイバーの斧がその一撃を防ぐ

先端から雷の力が生じる突き。防ぎはしたのものの斧を隔てて突きの威力の衝撃と稲妻が二人まとめて吹き飛ばしてしまった

両者の手からそれぞれの武器が落ち、地面に刺さると遅れて二人も地面に叩きつけられてる


「先の技、五魚の喰らいは教官の技だな。役に立たぬカスの教えを直向きに練習し、それが僕に通じると思ったのかい?せめて教官の二十魚ぐらい使え。あの程度、そなたならできるだろうに。初撃を防がれちゃ百だろうが無意味だが」


ダメージが大きかったのか足にくる。起き上がるさえ酷く疲労している感覚だ

ダイバーに安否の声かけすら惜しい。大太刀を引き抜き、刃先を向ける


「通じるか通じないかじゃねぇ。教えられたこと、できることをやるだけだ。策もなしにお前に挑んでんだからそれしかねーんだよ!」


その抵抗姿勢をランべは馬鹿してるのか鼻で笑った

大太刀の刃先を向けるエモンの後方にふと目をやるが、共に地面に叩きつけられたダイバーの姿がないことに気づく

そこにはマグマ溜まりの穴があり、察する

どうせまた地中にでも潜ったのだろう、芸のないやつだとかつてと変わりない彼の行動にくだらなさで口角が緩んだ


「傭兵団の頭ではなく、生ゴミ穴を掘る係でもしてろ」


ならば円錐槍を地面に突き立て、この見渡せる範囲全域の地中に雷の力を走らせるまで

雷撃をくらい飛び出てくるか、そのまま埋葬済みとなるか楽しみである

これから彼がするエモンがそうはさせるかと斬撃を飛ばそうとしたその時、巨大なる力が空と大地と空間を通じて伝わり、一瞬にして一面は閃光に包まれた

遠く別場所で戦っているタイガとイグバッツによる技のぶつかり合いである

誰の声も聞こえない。何の音も聞こえない

強い力を感じ取り、そちらに顔が向けられる頃にはエモンもランべも吹き飛ばされてしまう


「ぬおおおおおおぉぉぉーーーーーっっっ!!!逃がさぬぞエモン!!ダイバー!!己が因縁を断ち切るまで!!」


閃光が視界を奪う最中でランべはエモンを捉えた

舞う抉れた地面や岩の瓦礫や他の革命軍の者達を円錐槍を振るうことで生じた風圧と雷で一斉に蹴散らし、閃光の中をエモンに接近

激しい衝撃音から閃光が一瞬にして晴れた時、ランべの稲妻走るその手が彼の首を掴もうとしていた

後は全身に雷を動かなくなるまで送り流し続けるだけ

イホの時と同じやり方である


「お前も目処が甘いな!」


見開かれた睨むエモンの眼がランべを突き刺さし、その手首を掴んだ

そしてへし折る

鈍い音がした後、ランべの背後から地面を突き破ってダイバーが姿を現わした


「溶岩・・・!!」


冗談で思いついた造語の「前後多難だな」を口にしてみたがそんな余裕はあまりないかもしれない

エモンを反射的に蹴り飛ばし、利き腕である右手首の骨を折られはしたが、御構い無しに円錐槍を手にその先端を避雷針として自らに雷を落とす

続けて360度の回転を行い薙ぎ払うように落ちた雷を帯びた円錐槍を素早く力強く振り回した

蹴散らされ、吹き飛ばされたエモンとダイバーだが、対象であるランべを視界から外してはいない

1枚の黒羽根が、エモンの手より飛ばされた


「っ!?」


不意打ちに近い。ランベの意識が吹き飛ばされた二人を交互に見る為、エモンからダイバーに移った時に飛ばされた黒羽根は彼の右耳を掠る

躱された。ダイバーに意識はいったがすぐに気づかれてしまい、咄嗟に頭のみを動かすことで眉間に刺さるのは免れてしまった

だが、これでいい


「あんな小さな1枚の黒羽根で・・・反射的に避けてはみたが眉間に刺したぐらいでくたばるとでも!?」


だが、すぐに目を丸くして耳に少し掠り切れをつけられたことを思い出す

黒羽根が通過した軌道は斬った距離

刺す為ではない。あの黒羽根自体が切る投げナイフに似た役目

エモンの姿はとっくに消え、大太刀を手にランべのすぐ背後に現れ、肩に左手を置いた

憎みの入った爪を立て力強く握ると、大太刀を左肩から入れ、斜めに切断する為に振り落とす

振り向いたランべと斬りかかるエモン、二人の目が合った瞬間に血が舞った

斬った手応えはあった。しかし、大太刀に血液が付着しているものの、斬られたランべはその場に転がってはいない

離れた位置で片膝をつき、槍を握っていた手は血が流れる腹部を押さえていた


「ぐっっ!!あっ!あぁっっ!!」


ついに耐え切れなくなり、空いてる片方の手を地面につける

今はなんとも無様な姿だろう。エモンとダイバーを前に自分がこのような弱々しく片膝をつき、手をつく姿を晒すとは数年前なら考えられなかった


「浅かったか!!」


仕留められなければ全てが浅い

ギリギリで逃れられはしたが、この傷はまずい。やはり都合よく躱せて距離を置くまでにはいかない

完全に自分の落ち度である

エモンの能力を見誤ったわけではない。別の手段で斬る方法を使ってきた


「世代も変わりはするが個人も変わるか・・・」


やはり、自分には得にもならず時間の無駄ではあったが、親友だったので己への損得抜きでエモンやダイバー、イホに組手や手合わせの相手をしてやり叩きのめしていたあの頃とは違うか

嫌でもこの数年の間に何回かは場数を経験してきたということである

それとも盾を落としてくると読んで賭けに出れた際といい、自分との戦闘を予め目をかけている者を相手にして想定してきたのか


「そんな傷を負ったお前なら、俺らが二人がかりでなんとかなるかもしれんな!」


ダイバーにしてはすごく生意気な口ぶりである。斧の刃を地面につけ引きずるを初動に、高速でランベに突撃して斬り払った

彼は痛みと出血で足が少しもつれはしたが、振り向き様に素早く盾で斧による一撃を防ぐ

腹部に傷を負った?手首を折られた?だからなんだとていうのだ

二人にこうして再会するまでに、これより危険な状況に何度も遭ってきた


「そなたなんぞぉ、盾で十分だ!」


盾に発生した雷を斧を通じてダイバーへと送り、稲妻に纏われた彼を軽く押し弾くと続けて盾で上から撲り落とす

鈍く大きな音と共に地面に叩き伏せられたダイバーを容赦なく何度も盾で撲ろうとしたが、猛スピードでエモンが斬りかかってきたので円錐槍を地に突き立て、雷を走らせた


「ブーストエッジ!!」


迫り来る稲妻を大太刀で斬り払い退け、炎と光の力を得た刃がランベに到達しようとしたその時、エモンの視界が一瞬暗闇に奪われてしまう

手応えがあったかどうかの問題ではない。何が起きたのか?それは大太刀よりも先に円錐槍による強烈な一撃を薙ぎ払うように叩き込まれてしまったからであった

力を込めた一撃。メキメキと軋む音からそのまま撲り飛ばされてしまう

次に盾を落とした左手を瞬時に心臓の鼓動が1番に感じられる左の胸部に手を当て、雷を送り全身に行き渡せた


迅鼓帯雷(じんこたいらい)・・・!」


身体に雷を走らせ、両手に持つ円錐槍と盾を上空へ放り投げると地面に伏せているダイバーを容赦なく蹴り飛ばしてから目にも留まらぬスピードで駆け出した

その場には僅かな稲妻だけが残る

撲り飛ばされ、地面に落ちたばかりのエモンは視界が赤く染まり、歪み霞みながらもなんとか立ち上がろうとしていた。地面に沁みとなる粘り気のある濃く赤い液体は頭部からなのか、目からか鼻から口からかなのかわからない

さすがに先程の一撃は重かった

全身に激痛がのしかかるように響き、どこの骨がやられたか確認する余裕すらない

血反吐を吐き、地につけ震える手を気持ちを強く持ち抑えようとするが、猛スピードで全身に雷を走らせたランベが彼を蹴り飛ばす


「放り投げた槍と盾が落下するまでがリミットだ!」


高く上空まで蹴り上げられたエモンに一線の稲妻となり一瞬にして追いつくと殴りと蹴りの素早い連撃を浴びせ、背後に回り込みその背に稲妻を握りしめた右拳で一閃の突きを叩き込んだ

夜の空に巨大な一筋の雷光が刻む


「死に去らせ!!災害の休憩所の英雄よ!!」


一筋の雷光が大地に炸裂した。地を砕き、落下地点から多方へ生じた裂け目より凄まじい稲妻が水飛沫が如く噴き出し、飛び交う

雷を全身に纏った男がその光景を見送りながら着地

仕掛ける前に放り投げた槍と盾が落ちてきたので掴んだが、直後に片膝から崩れ口から吐血をしてしまった


「ぐっっ!!なにが浅かっただ!!」


先程エモンに斬られた箇所である腹部からは止めどなく鮮血が口から吐かれたのと共に地面に溢れ落ちていく

血を流しすぎたもあるが疲労が顔に出始めた

迅鼓帯雷は血流速度と心拍数を無理矢理上げ、身体能力を高める技である。時間制限があるので、武器で攻撃するよりかは肉体が強化されるので怒涛の打撃を浴びせる方が効率が良い

寿命が縮むような物騒なデメリットはないが、使用すれば体力をかなり消耗する

対レネージュ用の手札の一つとして、昔にこの二人とイホに付き合ってもらい生み出したのだが、まさかレネージュより先に協力してくれた者へ先に使うこととなるとは

焦っているなと自覚がある


「どちらかさえ討てれば1人など相手にならん。さぁ、どこにいったダイバー?祈りながら生きてみろ!」


周囲を探る為に辺りを見渡しはせず、もう一度彼の口から血反吐が吐かれた

苦痛の表情だったがすぐに呆れた表情へ変わり、その場からすっと軽い足取りで離れる

その次の瞬間、自分のいた位置の地面を突き破ってマグマと共にダイバーが飛び出した


「芸のない手だ・・・」


立て続けに斧を投擲してきたがこれも当たらないな、当たるわけがないなと退屈すら覚える溜め息が出てしまう

その眼はダイバーを完全に捉えていた。斧を容易に躱し、それに続けて稲妻を走らせた円錐槍を投げつけ彼の胴体を貫こうとする

しかし噴き出したマグマの向こうから突如として現れたエモンが斬りかかってきた

彼の姿を見てランベは驚きを隠せない。ボロボロと言うに正しい姿で出血が全身に行き渡るほどであり、それを目にして「さっきのでくたばれよ!」とつい口から漏れてしまう


「ブースト・・・エッジ・・・」


虚ろな目をしている。もう限界に到達しているのか、それとも自分と戦っていることによる心境の複雑さが今頃にか

だが、もう悲しい戦いは終わる。自分が招いたことは自分で後始末をつけてやる

墓を建ててはやれないが喪に服すぐらいはしてやる。今日この日を毎年、二人の1番の好物を並べてその前で食事してやる


「そんな弱り切った技で僕を崩せるものか!」


力んだことで腹部から血が少量吹き出すもお構いなしに迎え撃ち、エモンの頭上より円錐槍を振り落とし叩き潰すように力を込めた一撃を放つ

地面を陥没させ、大量の黒羽根を舞い散らせながらめり込まれたエモンに今度は確実なトドメとしてこの目で見ながら貫こうとする

だが、自分の後方より凄まじき殺気を感じとり、意識をそちらに移す

両腕からマグマを噴き出させ、肩を動かし腕を振り上げるようにしてマグマの巨大刃を放った


溶岩刃(ようがんば)大絶交(だいぜっこう)!!!」


地面を裂き溶かす二つの刃が交差するように動き、ランベの元へ

彼は見たことのない技であったが問題ないと片方の手に持つ盾に雷を帯びさせ、受け止めた。雷の盾の力が押し返し、マグマの刃が弾けるように消えると力の余波により生じた膨大な雷撃がダイバーを襲う

その間にフラフラながらも立ち上がったエモンは舞い散る黒羽根を掴める量をできるだけ掴み、空中でばら撒かせるように投げつけた


「ええい!1秒でも生きようとするな!足掻くな!」


雷撃を受け全身から煙をあげながら這い蹲るダイバーを盾から射出される雷で仕留めようとするが、傷の痛がより増し、口角から血が垂れる

この傷、早く手当てしなければまずいのは解っている。一瞬、発つ前にボスから大きな怪我、致命傷を負った際に使うようにと1本の注射器を渡された場面が脳裏を過ぎるがすぐに忘れることにした

あんな物を使わぬとも、こいつらに勝てる。今は使うべきではない


「グリップサンダー!」


素早く盾を手から消し、半回転ターンからのバックステップを行いながら左拳を握って突き出した片腕から稲妻を密集させ1つの束状にした光線を放つ技

狙うはエモン。だが、彼の目に映った光景はぱっと見は少量ながらも数はある舞い散る黒羽根であった

大太刀を持ったエモンが黒羽根が隔てる先より迫る


「馬鹿め!そんな黒羽根ごと消し炭にしてやる!これで最後だ!エモン!!」


黒羽根だけの攻撃なら自分が当たる範囲だけを消滅させるのは容易い。最初から1枚でもいいので黒羽根で斬る目的として投げておけばいいものを

幕切れを与える為、左拳を突き出し、もはや間5メートルもない至近距離からエモン目掛けて束となった稲妻を放った

しかし、同時に突如として舞い散る黒羽根の全てが空間に固定されたかのように停止し、羽柄の先端が一斉に下へ向けられ、落ち始めた


「っ!!」


自分に降る範囲の黒羽根を咄嗟に円錐槍を上方に振り払うことで風圧をも利用し払い退けるが、逃れた1枚が右肩を掠ることで察した

眩い雷光の先にエモンはいない。避けられた

この降り注ぐ黒羽根は斬る動きをしている。やつはこの斬る中を移動している

そしてエモンは姿を見せ、光を帯びた大太刀で一太刀を打ち込み、瞬間移動しては一太刀、また一太刀を浴びせていく

それを辛うじて円錐槍で防いではいくが、ついに黒羽根の1枚が右肩から腹部を貫いた時、腹と喉からの叫びと共に大太刀がランベの胴体に入り、右腕を切断する

続けて再び、ダイバーの名を呼び叫んだ


「ダイバーーーーーーァァァァァ!!!!!」


黒羽根が全て消えると同時に、ランベの目の前に地面を突き破ってダイバーが姿を現した

また同じ手、芸のないと笑うなら笑え

渾身のマグマを纏った右拳がランベの腹部に放たれ、そのマグマが腹を貫き、そのまま上空へ殴り飛ばされると幾つもの火山弾が上空から集中的にぶつけられ、そこへ噴火と共に跳躍してきたダイバーがマグマと化した左の巨大拳の一撃を叩き込む


「溶岩発拳!!!攻地(こうち)!!!!」


ランベが最後に見たダイバーの顔は怒っているのか、泣いているのか、わからなかった。どちらでもいいだろう

火山弾と共に殴り飛ばされたランベは遥か海面の彼方まで消え、やがて熱した鉄を水に浸けた際の音と莫大な範囲の水蒸気を発生させる

エモンは座り込んでしまい、息切れを起こしながら辺りを見渡す

あるのは地形すら、景色すら変えらた戦いの被害と巻き込まれた複数の他革命軍の死体

恨みとか憎しみや、悲しさも湧かない。あるのは「馬鹿なことを・・・」の一言


「終わった。終わったな。終わってしまった・・・」


ここでようやく同期であり、親友であったランベの死を実感した

自分達の手でイホの敵は討った。同時に親友をまた失ってしまう

泣きはしない、嘆くこともしない

ただ無言のまま、疲れも加わってエモンは顔を伏せるように俯くだけ

ダイバーはただ、その場で立ち尽くし刻の経過を待つだけ

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