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光ある概念の終日  作者: 茶三朗
傭兵業務
183/217

地をいく傭兵団 22

ゾムジを討ち取れば革命軍からすれば大手柄であり、名声から見ても剣聖を討ったとなるので名が知れ渡るだろう

革命軍の尖兵達は一斉に彼に襲いかかる

ついでにこの場にいるタイガも攻撃を仕掛けられるが、最初の1人を正拳突きで殴り飛ばす

吹き飛んだ男に複数が巻き込まれ、追撃として正拳突きを放った右手に刀を出現させそれを振り抜き、真空波のようなものを発生させ相手に撃ちつける

強大な轟音と共に、大きく地面ごと多人数を蹴散らした


「ほぉ・・・威武道か!かような初歩も初歩な技をこうまで!うむ、才能ある者、天才らはすぐ技を編み出したり習得できるが、1つ1つに練度が足らなく敗北することもあるからな」


威武道という技自体、十代に満たない頃に見てそれきりだったので久々であった

タイガの自らの技に対しての姿勢に敬意を覚え、教科書にするべきぐらいの気持ちである

関心する最中、ゾムジは鞘から刀を抜かずに敵の猛攻を適当に捌き、受け流すだけ


「む?」


刀を振り切ってすぐ、次の攻撃に備えようとした時、銃声が聞こえたのと同時に海の異変に気付いた

発砲され頭部に迫った弾丸を指で摘み捕らえた最中で、2隻の船が海中より浮上して姿を現わす


「あれは、消えた2隻の船か!」


弾丸を握り潰し粉々にすると、突如として現れた船へ向かってタイガは走り出した

落雷が聞こえる。稲妻が地を空間を空を走り、降り注ぐ。エモンが戦っているが知ったことではない

追いかけ、襲いかかってくる者達がいるが障害にもならず蹴散らし進む


「鼠ではなく、龍を逃したというべきだろうな」


走り去るタイガの背を目で追う。一度手合わせしてみたかったが本音だが、やつと闘うべき相手は自分ではない

悟ったような顔で刀を鞘から抜くと八相の構えを取り、足元から影を広げていく


影裏(かげうら)逆切(さかき)り」


その広がらせた影に踏み込めば、外世界の音が静かになり、自分で足は確かに走っているのに進めずに固まってしまったかのような感覚に襲われる

八相の構えを取ったまま、佇むゾムジは次の瞬間に切先を下へ持っていき、地面を少し触れ斬ってから刀を大振りに斬り上げ、瞬時に目で捉えるには不可なスピードで刃先を反転させて振り落とす

刀の二撃と、刃に乗せた影の斬撃で複数人を斬り捨ててから、そそくさと退散を開始


「また会おう。いずれの運命の訪れと結末の後に」


黒髪の者の背を見送ってから、夜と影にゾムジは姿を晦ます

タイガは考えていた。いや、考えるにしてはどちらも攻撃と突破という脳筋全開で似たような内容ではあるが

船にこのまま突撃するか、船から下船してきたやつらを蹴散らすかの選択に悩んでいた

野となれ山となれでいいだろうに落ち着く

革命軍の幹部はエモンとダイバーに任せており、そちらは問題ない。他は雑魚のみ、船2隻に集中できる


「まずは船を両方ともぶっ飛ばす!そして残ったやつらをぶっ飛ばす!」


刀を鞘に納め、右拳には炎が宿る。船までの一定距離まで近づいたところで踏み込み、炎を纏う拳を突き出した


「逆鱗!!パンチィィィィッッ!!!」


突き出された拳より豪炎を放つ遠距離攻撃。船2隻を容易に呑み込む規模の火炎が迫る

このまま燃え尽きさせるかと思われたが、突如として勝るとも劣らない火炎がタイガの火炎を防ぐ

船からの兵器というわけではない。あの炎からは凄まじい生命の力を感じた


「岩や鉄どころか、城壁すら容易く焼き溶かせれる炎だな」


火炎と火炎のぶつかり合った相手と相手の距離の間、陸は燃え、海面は煮えたぎる

拳と腕に残る炎を振り払い、再び駆け出したタイガ。砂浜に到着する前の距離で踏み込み、足周りに出現した光の線が地面にサークルを描くと右足に集約され、大きく跳躍

天高くより突き出した右足による跳び蹴りを放つ


陽輝(ひのき)一撃(いちげき)!」


足底から解放される光の力が、高熱を伴い赤褐色が尾を引く。以前、ジョーカーには通じなかった技だが、船の1隻2隻ならば問題なかろう

しかし、蹴り抜くより先に船より何かが突き破って上空へ

続けて海へ誰かが飛び込んだ

そして最初に飛び立った何かが、タイガより更に上空から急降下による突撃を行い、彼の背中から腕と脚を胴体に回して捕らえる


「頭カチ割れやがれ下等生物側が!!」


空中で無理矢理方向転換がなされ、タイガの頭を地上へ向けられてしまう。よりスピードを上げ、落下によって頭から地面に叩きつけるつもりだ


「誰だか知らねーが、それごときでお前のランク付けでいう下等生物を葬れると考えるのは甘いんじゃねーのか?」


頭が下で落下する最中、状態起こしで背後から自分を拘束した者を下へ。このままでは仕掛けたやつがタイガの下敷きになり、地面に叩きつけられてしまう


「うお!?なんの!!」


体を捻り、タイガを下へ。しかし、再び彼は「なんの!!」と同じように体を捻らせ落下の上下位置を逆に

互いに「なんの!!」を何度も発しながら、それと同じ数だけ上下のポジションチェンジを繰り返し行う

次第に埒が明かないと判断したのか、タイガが下のまま落下


「諦めやがったな!根性なしめ!」


反論はしない。地面直撃まで10メートルもないという位置で、落下スピードが急激に増して激突

地鳴りを発する轟音と視界を遮る量の塵と舞う地面の破片、落下地点から全方位に亀裂が走り地中底の海水を噴き出させ、大地が隆起する


「ザマーねぇなぁっっ!!馬鹿め!!」


タイガを叩きつけてすぐ、高く後方へ跳んだ。離れた位置で土塵の中、見えない彼を指さす

高笑いから、徐々に声量が小さくなっていった


「イグバッツ様、あなた様が歩む道に落ちる1番大きな小石は排除しておきました。随時他の小石も片付けておきますので・・・!」


我が主にとって、一番の障害となるのはあの少年だった。イグバッツが船に迫る火炎を火炎で対抗した際の表情で解る

だから動いた。手を煩わせない為に

たった今、そいつは頭を潰されて地に伏したであろう。邪魔は消えたので、これよりゾムジと合流する

主であるイグバッツへの報告しに一度戻ろうかとした次の瞬間、塵の舞う中、豪風で切り開き、右拳に光のエネルギーを握ったタイガが突撃してきた

一瞬驚きで唖然とするも、ただ生きていただけ。あれで死ななかっただけ

蹴られた小石は道脇の溝に落ちていろと、ヘターも手の爪先から肘にかけて闇が液体で濡らされたかのように貼り付き、肘から黒紫の尾が引く拳を放った


「ブラック・アウト!!」


拳と拳が、混じりっけなしに両者正面から激突する。しかし混じりっけがないからこそ、実力の差がはっきりと出てしまう

闇は光にあっさり押し負けたのである

猛スピードで吹き飛ばされたへターだったが、船から地に降り立ったイグバッツが胴で彼を受け止めた


「おっと・・・!小さくも確かな威力の弾丸は弾かれたようだ」


軽く受け止めたヘターの右足首を掴み、逆さで持ち上げると様子は大大丈夫そうではあるが、気遣いとして「大丈夫か?」と問う

彼は情け無さそうな笑い声を返すだけ


「へへへ・・・」


ヘターの足首を掴む手を放し、落ちた彼は慌ただしい足取りで何処かへ駆けて行ってしまった

彼が去り、イグバッツは顔をタイガの方へ向ける。彼は黒髪を夜風に靡かせ、威武堂々に佇んでいた

対面する両者、張り詰める両者の気迫、その間に緊迫感が流れだしたようではあるが、周りから見た景色なだけでお互いまだ警戒はしておらず、戦意もなく


「あの劫火、貴殿の仕業であるな」


「それはこちらの台詞だ」


タイガに顔を向けながら、瞳は辺りを見渡し、確認を行う。見つかったと報告を受けたはずのゾムジの姿はなく、呆れた溜め息が出そうだ

革命軍との戦闘が始まり、その助太刀に来たのだが


「ゾムジ殿はまったく・・・しかし、よかろう。ひょっこり出て行ったなら、またひょっこり戻ってくるはず。だといいのだが」


革命軍の面々は戦慄していた。ゾムジに続き、姿を現したイグバッツの存在

息を呑む者、自然と足がジリジリと後退を始めてしまう者、武者震いしながらあいつを討てば自分の名は一気にと無謀な野望に燃える者と様々

しかし、そんな革命軍共など眼中にはなく、彼自身に映るのは前にいる男のみ


「ゾック殿を討ったのは貴殿であるのか?記されていたらしい赤い鉢巻きをしてはいないようだが?」


「これか?」


ズボンポケットに畳んで入れていた元は兄のスカーフである赤い布を取り出し、今この場で頭に巻いた

確かめておきたいような顔だったので


「そうか、貴殿が・・・!」


なにやら寂しそうな表情である。思い出が巡っているのか、そのせいで余計に感情が剥き出しになりそうなのか、口を噛み締め、噛み締め、顔前でゆっくり突き上げた右拳を握る


「ゾック殿は平気で他を見下し、良い噂もあまりなく、女癖も酷く悪かったが、古い歴史に囚われたやつらとは違い、早時期からダイヤ殿とジョーカー殿の才能を見抜けて共感してくれた者だった!地位は違えど、我輩の友であった!」


タイガへ威圧と殺意を具現化させたかのように、深い濃い紅きオーラが眼力と共に放たれた

その眼力のみで、幾多もの革命軍の意識を失わせたり、震えあがらせ、慄かせ、漏らす者もいた

その眼力に、タイガは同じく強大な眼力で睨み返す

濁りのない純粋な赤色が稲妻として、イグバッツのオーラとぶつかり合う


「イグバッツ様!!」


先程駆け出して何処かに行ってしまっていたヘターであるが、何故か大量の瓦を積んで持ってきた

それをイグバッツの前に置く。怖いもの知らずか、単に鈍いのか、それとも威圧に呑まれない実力を持っているのか


「せい!はっ!」


積まれた瓦の頂に右手を置き、掛け声と共に力を入れ押す。すると見事に瓦が全て!なんてことにはならず、真ん中の1枚だけを割った

どうやら力を見せびらかす為の披露会ではなかったようだ


「数の中での1人だとするならば、いずれ貴殿もこうなる」


技術集中の為の掛け声。自分の身長より高く積まれた瓦を割るのに、その気になれば掛け声と共に力む必要はない

積まれた瓦を薙ぎ払うように蹴りどかし、右拳を突きつける


「この者だけは!貴殿だけは!我輩自らもこうして参じ!直接叩かなければならぬ!この者は!放っておけば必ずや魔王帝様の強大な脅威となるだろう!」


パキキッ!という何かにヒビが入ったのと似た音が走る

その音の原因はすぐに明らかとなった。イグバッツの背に赤い翼が生え始めたのだ


「竜人種か!お前!」


その問いに答えが返ってくることはなかった

イグバッツは背には翼を、皮膚の一部は鱗となり、頭部には一対の二本角を生やして段々と二足歩行の衣服を着たファンタジー溢れる見た目のドラゴンへと姿を化していた。口から、並ぶ牙と牙の隙間から炎が溢れる


「まだ若い者に酷なことを言うが、我輩は貴殿を全力で潰しにかかろう!!!」


「問題ねーよ」といつも通りに、変わりなく敵対者と闘う姿勢で、タイガは出現させた槍の柄部分を肩に置き、掲げる

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