地をいく傭兵団 21
「雷抗・ベンティングショット」の掛け声と共に、盾の面全体に纏わせた雷の力を中央へ凝縮するように一点集させ、ビーム状に放出する
速いが一直線に迫るので避ければいいとそんな甘くはない
途中でビームが膨張を経由し、散弾の如く稲妻を無数に散らせ範囲を広めてくるからだ
よく知ってるからこそ、盾に雷を纏わせた瞬間から対処することしか頭にない
「初っ端から飛ばしやがる!」
大太刀の刃に光の力を刀身の根元から侵食させ始めるが、エモンの前にダイバーが立つ
斧は上空に投げており、落ちてくるより先に右拳を地面に突き立てた
「岩漿盤壊!」
拳を突き立てた地面の箇所から前へ亀裂が走り、地中より激しいマグマを噴き出させ雷撃を上へ受け流す
自身の力を通じて相手の力が伝わり、ダイバーは鋭い剣幕でランべを睨んだ
「貴様にしては冷静さのない先制だなとは思っていたが、威力を感じぬ!馬鹿にしてるだろ!」
「見てくれだけだ。馬鹿にしちゃいない、よくあるまずは様子見をそなたらレベルに合わせてやってるだけだ」
巨大な円錐槍に稲妻を走らせ投擲を仕掛ける。噴き出したマグマを貫くつもりでいたが、エモンが先手を打ってきた
「その場から動くなよ!ランべ!」
吹き出すマグマを隔て、エモンの声が聞こえる。来るか?とランべは警戒して一旦投擲の構えを解いた
マグマの向こうで、空間を裂くように大太刀で一太刀を入れると飛ばした斬撃はマグマを切断し、ランべに迫る
「お望み通り、動いてやらないでおくさ」
動く動かない、どちらも間違いで正解である。到達した斬撃を右手に握る巨大な円錐槍で叩き払うが、鈍い轟音と空間に一波走った後、火花を散らす
斬撃はエモンに変わっていた。正しくは変わったのではなく、斬撃を払消した直後に彼が現れたのである。大太刀と円錐槍の接触により生じた力の衝撃と音は周囲の地盤を砕き、革命軍の尖兵を吹き飛ばした
押し勝ち斬り伏せようと力を入れるが、ランべが少し稲妻を発し腕と手に力を加えただけで、容易に弾かれてしまう
一瞬、彼は戸惑った顔を覗かせたが
「やはり、そう都合よくいかねーな。お前を相手に。能力を知り尽くされている」
「僕は能力を持ってはいないのでね。羨ましかったさ、そなたらがずっと」
「無い物ねだり、隣の芝はなんとやら。アタリとハズレはともかく、能力あるくせにずっとお前に追いつこうとしてた俺らからすれば嫌味にしか聞こえないぜ」
エモンの能力は切った範囲だけ空間を削り、その距離分移動したり、引き寄せることができる。斬撃を飛ばせば、その到達位置に瞬時に移動可能
ダイバーはマグマ関連の能力を使える。正しくはマグマが地上に噴出されたのは溶岩であるのだが、よく混同されるのはマグマを起源とする物質のうち、流出した溶融物だからである。だが、溶岩だけでなく、軽石や火山弾等の姿を取ることもできるのでマグマと一括りにしている
瞬時に冷えさせ固めて動きを止めたり足場にしたり、その気になれば肉体を凌駕する量のマグマを生成可能
「知り尽くすされてるので、授かった力の一部を出し惜しみするかい?」
「するわけないだろ。銃を知り尽くしてるやつに銃を使わないことはあるか?自分の持つ力の1つを使わないで何が戦闘だ」
「知っているの意味が違う気もするが、そなたの心意気は解った。2人の技術、経験、属性エネルギー、能力を全てぶつけたとて、この僕に恨みを乗せながら倒すなんて到底無理な話となろうが」
強大な円錐状の槍を軽々と横一線を描くように振り、風圧を生じさせる
その槍先を天に掲げれば、手から発せられた稲妻が槍を伝って先端より放たれ夜空へと昇っていった
「そうかな?自分の泣き顔をちゃんと見るために鏡を用意してろよ!」
大太刀を水平に構え、地面を蹴って低空を跳ぶ。刀身の峰部に並ぶように出現した幾つもの球体から炎を噴出させ、大太刀に引っ張られるようになりながら、斬りつける
しかしランべも受け止める体勢を整えていた。槍に走る稲妻は、螺旋状に渦巻き、それを突き放つ
「ブーストエッジ!」
「礎削!駑流流!」
黒羽根を撒き散らせながら振り切ろうとした峰から噴出する刃は、高速で突き放たれた槍の一撃に止められる
何かを削る耳につくうるさい音と、力の余波で空間と地面に稲妻が流れていった
「どうした!?昔より弱くなってるじゃないか!ならばそなたの行動と弱さに甘え!易々とそなたを貫き!酷く肉片と臓物を撒き散らさせてやろう!」
堪えた顔は浮かばず、大太刀の峰に左手を添え押す力を増してきた。焼け石に水だと一思いに貫き殺そうとしたが、彼は大太刀を手放し、その一振りは槍の突きで弾かれたが、流すようにしてエモンはランべの上空を跳び越える
その直後、地面を突き破ってマグマと共にダイバーが姿を現わす
右の掌にドロリと滴れるマグマの塊に、腕は火炎で燃え盛っていた
地中を自らマグマと化して進んできたようだ
「豪噴火!」
突き出した右掌からは膨大な量のマグマが噴き出された。咄嗟に雷を纏わせた盾でそれを防ぐ
だが、マグマに紛れダイバーは接近していた。最初あたりに投げた斧が彼の手に落ち、それを掴んで重く激しい連撃を浴びせる
その攻撃を防ぐ盾からは何度も鈍い音が響いた
「エモンもいる!」
思い出したかのように口ずさんだ。背後からエモンが再度ブーストエッジで迫ってきていた
ガラ空きだぜ!と声をあげて教えてくれればいいものを、そう都合よく気づかせてくれるはずがない
落ち着け、冷静なれ。さすればこいつらを捌くのは容易である
「はぁぁ・・・!あぁっっ!!」
螺旋する稲妻を纏った槍で猛攻を続ける最中のダイバーを力技で薙ぎ払う。その一払いは彼の脇腹に食い込ませ、口から鮮血を吐きながらランべの視界から一瞬にして消えた
瞬時に方向転換を行い、同時に盾から雷撃を放ちエモンに攻撃。彼は大太刀で雷撃を斬り流したが、それに意識が一度向けられた直後にはランべが目前にまで接近しており、稲妻の走る盾による強烈な突きの一撃をお見舞い
追撃として自らへ上空から落雷を落とし、稲妻の凄まじき閃光が周囲を包んだ。エモンとダイバーの悲鳴が聞こえる
「雷鳴を吠える獣に喰われろ!」
頭に落ちた落雷は天を貫く角となる率いていた他の革命軍の者達の被害などお構いなしの無差別攻撃
巨大な円錐の槍も盾も、より膨大な稲妻が走る
「先のでくたばるわけがなかろう」
もしくたばるならば不完全燃焼でるが、くたばったならくたばったで後は指を二本畳んで残るはレネージュのみ
最後に彼女を葬れば、自分の過去は全て片付く
最大の戦いとなるのは覚悟している
「火山滅弾!!」
放物線を描くように、上空へ放たれた無数の燃え盛る巨大な火山弾がランべ目掛け降り注ぐ
「やはりな」と呟くと、円錐の槍で空を突き放ち、それにより生じた落雷で全ての火山弾を一瞬にして撃ち砕いた
「よそ見するなよ!!」
エモンが叫ぶ。声の方を反射的に振り向けば、そこには光を右手に集め、突き出す寸前の彼の姿が
「光期か!」
「そうだ!」
しかし、何か違和感がある。それはすぐに察した
こちらを呼ぶように声を挙げ、注意を向けるようにし始めた事。今まさに、技を出すのにワンテンポ敢えて遅らせている気がする
小癪な真似をしてくるつもりなのだろうが、敢えて釣り針にかかってみよう
口に針が刺さるのではない、釣り糸を掴んで釣り上げられるのだ
「到達するは光の果て!お前も光となり消滅せよ!!」
光の集まる右手には粒子の輝きが生まれ、その手を突き出す
風に靡くベールのような、波打つ光線が放たれた
「機雷兵!」
盾を落とし、左手の全指先から光弾を連続して発射。幾つもの光弾は膨大化し、稲妻が走る球体としてエモンからランべの間にて展開
防御壁の役割でもあり、波打つ光線が接触、着弾した際につ1つから雷撃を爆散させる
空間を振動させ、稲妻が走り、その爆発に呑まれる両者
「ケホ・・・っ」
稲妻と爆煙が治り始めた中で全身に雷撃を走らせ、煙を口から吐き倒れたエモンに対し、ランべは何事もなく立っていた
右手に握る円錐状の槍を振るい、それで生じた風圧で残る稲妻と爆煙を搔き消す
しかし、そこには自分に接近していたダイバーの姿があった
動かぬ左腕の代わりにマグマがその形を模して巨拳を撃ち込む
決める。この一撃で
「熔岩発拳!!」
巨大化させた正拳突きだが、ランべの槍を握る雷を纏った右腕に容易に受け止められてしまった
「左腕が使えず、肉体の伴わなくなったその技など怖くないぞ」
左手に持つ盾で殴り飛ばした。地面に叩きつけられ、何度も跳ねて転がっていくダイバーを尻目に、再び螺旋状の稲妻を纏った槍をエモン目掛けて投擲
倒れていた彼は全身が動かずとも、なんとか大太刀を握る手を動かす
小さく、僅かな振るう力でも、それで十分
「逃げるな!僕の過去からもう這い出てくるな!」
右手からの雷撃で倒れるエモンを撃ち抜こうとしたが、背後から不意にダイバーが突撃してきた
能力も使わず、斧で斬らずにただの突撃。本当にただエモンを救うことだけにいっぱいいっぱいだったのだろう
しかし腐っても元は同じ飯を食べた同僚。威力はあり、重い鈍痛が背中から、ランべの口内には鉄臭い味が広がる
「この過去廃棄物共め!」
振り向きざまにダイバーの頭に肘を落とし、腹部に膝を打ち込む。続けて盾を背に叩きつけ地面に押し付けると何度も蹴りを浴びせる
その間、エモンはなんとか斬撃を飛ばし遠くへ移動。投げられた槍を躱した
命中した場所は槍の威力と雷撃で広範囲に爆砕され、稲妻が広範囲を攻撃する
やはり、周りの被害などお構いなし。連れてきていた他の革命軍の者達など省みない




