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光ある概念の終日  作者: 茶三朗
傭兵業務
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地をいく傭兵団 9

「そういえば・・・」と先頭を歩いていたクローイは思い出したかのように、エモンと知り合いであることに触れてきた

関係性を過去を巡って深々と語るのも面倒なので、「一応」とだけ答えておく


「災害の拠り所の英雄か・・・名前ぐらいはあたいも知ってる。傭兵団だけじゃ不安残るから聖帝様より派遣されたのだろう」


「お前達傭兵団を甘く見られ、舐められてるとは考えないのか?」


「全然。こちらはちゃんと傭金を前払いで貰ってるから、負担が減るのはむしろ願ったり、どんどんどうぞ。そりゃあ、仕事のプロ意識とかプライドで快く思わない輩もいないわけじゃないけどさ、あくまでもビジネスの一環と割り切らなきゃならない時もある」


義理や情、誇りだけでは飯は食えぬである。それも正しい。逆に捉えれば、金で雇うのは1番分かりやすく、信頼できて裏切るのが少ないのかもしれない

それはそうとエモンである。代理としばらくの補強として務めているはずの憲兵の仕事をサボるなと何度か注意したことあるが、あいつはちゃんと忙しい身なのだと、彼の姿の一部をこの目で見た


「お前や団長さんがそれで納得しているなら結構だ。先に契約料金の支払いをしておくのも、これまで培われた信頼の表れか・・・」


「かなりの大金を聖帝関係者から前払いしては貰ったけど、前払いは前払いでデメリットがあんの。このご時世、報酬範囲外の戦いになることなんてザラだし、過多な出費や被害が出るから、後で料金上乗せ、追加報酬の説得しに行くのは気怠るくなる。大国や帝関係ならそんな心配はほとんどないのだけど」


「勝ちを得るのにケチるはなるべくするなとはよく言うものだな・・・あれ?アオバは?」


いつのまにか近くにいた彼女の姿が無くなっていた。遠くに行ったわけでなく、すぐに見つかったがモトキとクローイを置いて先々と歩み進んでいる

考え事をしていて周りが見えなくなっているのか、こちらに気づいちゃいない

モトキは彼女を呼ぼうとしたが、それより先にアオバは何者かとぶつかってしまった


「ってーな!」


ぶつかられ、仰け反りそうになる。ぶつかったアオバも悪いが、気づいていながらもワザとぶつからせた相手も悪い

気怠そうな目をしていた。現状にやる気を感じられなさそうな、素行の悪そうな男である


「どこのどいつだ?いるには似つかわしくない服装しやがって。迷子か?さっきの体当たりは痛かったぞ。ワザとだな。どう個人の責を負う?」


すぐに謝るつもりだったが、どうにも相手の態度は言いがかりを加えてきそうだったので、様子見。男は舐め回すような目でアオバの全身を見渡すが、ふと視線にクローイが入り、胸奥がキュッと締まった


「げっ!クローイ同伴かよ。命拾いしたな」


顔を隠しながら、恐れを抱いて、そそくさと逃げるように退散


「どうやら、ぶん殴る必要はなくなったようだな」


モトキはいつでも攻めに入れるようにしていた。使わないで済んだ右手首を回す


「ご迷惑をかけたわ・・・」


「アオバがあんなヘマするなんてな。それ程のことでもあったのか?思い詰めていたようだったけど?」


「ここの団長さんが私を知っていたこにずっと引っかかっていて。何故、どこで知ったのか、心当たりはあるけどいくつかのもしかしたらを並べていたらああなってたの」


「その心当たりは?」


「私のお祖父ちゃんが、もしかしたら。いや、きっとそうかも!深く考えすぎたり、ちょっと怯える必要なんてなかったわ!」


珍しく、鋭い顔で歯軋りしながら怒っている。少し体温が上がったのか、頬からじんわり赤くなっていく

あれは、恥ずかしさからだろう


「そうよ写真!写真で見たことあるって。絶対に私の写真を見せびらかしたのお祖父ちゃんだわ!もぉー!やめて欲しい!そういった溺愛からくる自慢!何度恥ずかしい目に遭ったことか!」


帰ったら覚えておけよだが、その時の高揚によるもので、帰る頃には落ち着いて、忘れているだろう

モトキには、身内から自慢されて恥ずかしくなる理由が解らない


「静かな雰囲気ずっと保ってたのに急にうるさくなったな、女。口論なり、痴話喧嘩してないでさっさと行こ」


「俺とアオバが喧嘩してるわけじゃないんだけどな」


クローイが案内を再開しようとした次の瞬間、3名の前に顔中瘤だらけでそこに小さな枝が刺さったゾゾイと出くわした

吹っ飛んでいったが無事だったみたいだ。見た目は無事ではなさそうだが


「あーあ、空が青いなー」


「目をそらすなよクローイ殿!明らかに唖然としてたぞ!」


「よーし、モトキ!アオバ!すぐに挨拶済ませておきたい御仁がいるから遅刻した早朝の如く急ごう」


「あ!いないことにしやがったな!」


本当にいないことにしているのか、それ以降付いてきてるゾゾイに一切触れることはなかった

そして、この辺りでは中でも一際大きなテントに辿り着く。寝床として使われているタイプではないが、こうして他のテントを含めて見ても、やはり最初目にした時から団長のテントが一番小さかったのでは?と思えてくる


「もしもーし。クローイ、ただ今戻りましたよ、と・・・!」


「ゾゾイも帰ってきたぞ!」


テント内の下には何も敷かれておらず、土の上に大きく広くも、低めのテーブルと適当に集められたであろう統一のない椅子、中には木箱も並べられていた

空いた席もあるが人数分用意したようではなく、数も適当に並べ置いた物。野営での陣地なので、急遽拵えたとしたならこんなものだろう

入る際のテンションとは違い、中の空気は凄く悪かった。換気しなければといったものではない、何かに怒っているようにも映り、警戒しているとも取れ、ただの苛立ちかもしれない

そこにいたのは4人。際奥に座る掛けた丸眼鏡が特徴的な黄色髪をソフトモヒカンにしている初老の男は、こちらに軽く手を振ってくれた

問題はあとの3人。皆と離れた位置に座る1人はルパなのだが、お互い顔を知ってるくせにワザとなのか、敵意をこちらに向けている

丸眼鏡の男のすぐ左手前に座るモトキ達と同じ歳ぐらいの髪を両サイド剃り込み、逆立つようなツンツン頭を持つ男はこちらをより、大半こいつからの空気によるせいであろう敵意を向けて睨んでいた

あとの1人、体を白いローブで包み、光の当たり加減かもしれないが僅かに青みがかった長い黒髪をポニーテールにしている女性だが、鞘に納まる剣を手にしながら他とは違いこちらに背を向け、椅子ではなく地べたに座禅を組む

丸眼鏡の男はまずは「お帰り」と一言、続けて訊ねる


「客人かな?それとも追加人員かな?捕虜かな?」


笑いながらゾゾイは「こんな学生姿のやつらが捕虜なわけなかろう!」と返す

丸眼鏡の男は更に言葉を返しはせず、指で鼻隠すように摘んで黙った


「以前、あたいを救ってくれた恩人の方です。約1名、女はおまけだけど」


普段の態度の割に、ネフウィネから命を守ったことはずっと感謝してくれているようだ


「もっと態度で表してくれてもいいんだぞ」


調子に乗ってみた報いか、クローイから肘を腹に撃ち込まれてしまう


「君が・・・Master The OrderのFirstに噛み付くヘマをし、痛い目に遭った愚か者は」


「いつっ・・・!いやー、まー、自分でも何やってんだと自覚はありましたよ」


自業自得だった彼女をあのまま見捨てても良いと最初は過ぎってしまう普段から真っ当に生きてる自信はないが、邪悪な自分がいた。助けての声に、意識が戻った感覚にされ、自分にも厄となるのに体が動いてしまっていた

本心から、酷い目に遭ったと言える


「けっ!帝共から優遇目で扱われるMaster The Orderのトップはお前と渡り合える程度なのだな!」


「アルフィー・・・僕が今、彼と話したいのだ。口を挟むでない」


ここにいる大半から、あまり歓迎されている雰囲気ではない。興味すらなさそうな者も混じっている

クローイを除けば、ちゃんと迎えてくれているのはこの丸眼鏡の男だけか


「改めてようこそ御客人。僕は一応、この傭兵団中のペンシルをまとめさせてもらう立場でいるヤーデックである。知っておかなくて構わず、知っておいて損にもならず」


「お初目に、私はアオバ・コヨミと申します」


「俺はモトキです」


男はモトキの名前だと耳に入らなくなっていた。アオバのコヨミという姓を聞き、唐突に立ち上がり、周りを驚かせてしまう。つい、体が反応してしまい、周囲へ向け「失礼・・・」の一言


「コヨミ・・・!コヨミさん!君はもしや、ソウジさんとこの!!」


出た名前を聞き、彼女は思わず溜め息が出てしまいそうな難しい顔に


「その反応はそうであるとも表している!ならば、どちらにせよだ!さぁ、こちらに来てその顔をしっかりと見せておくれ!」


言われたとおり、ヤーデックの元へ近づこうとしたが、モトキが彼女の肩に手を置き、止める


「行かなくていい」


その一言を発した次の瞬間、2人に目掛けてアルフィーが両膝撃ちの体勢で飛んできた

咄嗟にモトキはアオバを地面に伏せさせ、その上に被さり庇う形にしておきながら躱す

男はテントを突き破り外へ、そしてすぐに戻ってきた


「お前!危ないだろうが!」


「うるせー!茶髪!逆らう姿勢になりやがって!ここでは俺らに二つ返事ではい!しか口にするな!」


次に一声、動きがあれば殴り合いか取っ組み合いが始まりそうな一触即発の雰囲気

啀み合うモトキとアルフィーであったが、ここは両成敗ということでクローイが軽快なリズムを口遊みながら、2人まとめてタックルでテント外へぶっ飛ばしてしまう

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