夜明けは過ぎて陽射し入る
馬車は2台、モトキ達が乗ってきた馬車とは違い絢爛豪華であり、車をひく馬は4頭全てが白毛
主であるフリスティンがもう先に乗り込んでおり、窓から笑顔で手を振る
「茶髪のモトキ様、父上とは別の馬車へ先にお乗りください」
「承知しました・・・」
茶髪をつけず名前だけでいいのにと心で愚痴りながら、自分がスペースを多く取ってはいけないと、なるべく奥の隅に座り身体も必要以上にくっつけて
フェーナーは馬車扉の前で動かずにいた。乗ろうともせず左手は腰に当て、右手は差し出す
「・・・あの、乗らないのですか?」
「乗りますよ。ほら・・・ほら!御手をお嬢様ぐらいしてくださいよ!」
モトキは苦笑いをし、1度馬車から降りるとフェーナーの手を取り、エスコートしながら馬車へ乗せる
続いてソレンダが馬車に乗り、タイガも乗ろうとした時に
「黒紅とマイナス茶髪はお父様が乗る馬車へ、推薦されていたのは茶髪だけでしたから。この御二方でよろしいです」
タイガはこれは失礼と一言残し、前方の馬車へ
ミナールはしばらくその場に留まり、左足を地に数回叩きつけてから横目で睨みつけフリスティンが乗る馬車へ移動
「お言葉ですがお嬢様、せめてあとミナール殿かタイガ殿のどちらかを・・・」
「あら、ソレンダは自信を持ち合わせてないの?それに、お父様はあなた方4名以外に護衛をお付けすることはないですから」
不安だ、モトキ自身は不安が抜けない。ジョーカーが過去に起こした二件のように済めばよいのだが
仮に最悪が起きたとすれば敵の数、送られる刺客の実力規模。排除できる範囲内だとしても、数に言わせそれは囮である可能性。守り逃す前にフェーナーに被害を及ばない戦闘を心掛けなければならない
不安が残るまま、馬車は出発した
(本当に来るのか、実行人数も分からない。この移動中、式典の最中、帰り、どこからだ?)
移動は1時間も要さなかった。モトキはずっと警戒し、落ち着かない様子でいたのだがフェーナーに何故かジャムが練りこまれたクッキーを渡され、「落ち着きなさい」と指で頬を突かれた。いつ仕掛けてくるかわからない緊張感が抜けてしまい、一口でクッキーを食す
式典まで時間があるというのに、博物館前の広場には人集り。博物館開館の喜びかエトワリング家の人望かのどちらかだろう
裏へまわり、馬車を停めフェーナーがモトキに先降りるよう命令。命令どうり先に馬車から降りると忘れずに手を差し出し、エスコートしながら彼女を馬車より降ろす
館長が出迎えエトワリング家の親子に頭を下げるとフリスティンはその手をとりしっかりと握手を
主と御令嬢にはソレンダを付かせ、自分はミナールとタイガの元へ
「タイガ、広場の集まりを目にしたか?人が多いのは良くないな」
「紛れているかもな。だが1人ずつ調べるにもそれに気づかれ姿を消されるだろう。向こうから動いてくれるのを待つしかない。だから、しっかり気を引き締めないと」
「送られた刺客の人数、もしかしたら広場の大半、状況悪くして全員。良い方は送りこんでいない」
何事もなく済むのが最善、前例2件のようにざわめきだけであることを願いたい
フェーナーがモトキを呼ぶ、式典まで退屈なので先に博物館内を拝見させてもらおうと誘う
館長が「では職員に案内を」と申したが断り、モトキとソレンダだけでと主張
「もし刺客が現れてやばかったら遠慮なく大声で呼んでいいぞ。助けてタイガ!って、間違えてミナールと呼んでもたぶん行く。ちょっと悔しがるかもしれないがな」
「俺を助けに現れるよりも、フェーナーお嬢様をその場から逃すことに力をいれてほしいな」
ソレンダが走る。広い館内を走るフェーナーお嬢様を追いかける為に
雰囲気を出す為に灯りは薄暗いが、歴史的遺跡で発掘されたものや美術品を展示しているわけではなさそうだ
錆びがついた鉄製である自分の身長よりわずかに低い高さのトロッコに石炭が満帆に入れられている
「石炭・・・?」
「それはですね、昔この街を発展する要となった貿易物。この博物館は鉄道やまだ街となる前に民の生活風景、道具から発展となった物を展示してますの」
昔の改札鋏に敷かれていた線路の一部、整備道具。鉄道が敷かれるさらに昔の生活は漁や農作物が主であったのか銛と網、獣や鮫の歯を使用した独特な漁道具に鍬等の田畑を耕す道具
「でかい籠だな、5つも必要か?」
「これでも種類が少ない方、買わずに各家庭で自ら作られた物を含めれば数は増えることでしょう。これらは一般的に置かれていたもの。作物や道具だけでなく狩った獣に魚の保存にも分けなければいけませんからね。それぞれ専門に売っていた者もいたようで」
フェーナーの次はソレンダの説明
藁、動物の毛皮、岩石に残りの2つは何の植物で作られたものか少年にはわからない。岩石や藁は農具に狩道具が主で、毛皮の物でもいいはず。道具類ならどの籠にいれてもいいのだろう
「ん・・・?」
一瞬だけだが気配が風となり肌に触れた。だがフェーナーかソレンダのがずっと感じられていたので動きにより流れが変わっただけかもしれない
念の為フェーナーの前に立つ。彼女は背を指でなぞってきた、けっこうしつこく