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光ある概念の終日  作者: 茶三朗
傭兵業務
163/217

地をいく傭兵団2

猛スピードで引き摺られ、連れていかれ、駅到着し汽車に飛び乗った。なんだか、最近鉄道を利用する機会が多い気がする

適当な空いてる席に放り投げられ、クローイはその向かいに座り、前の乗客が忘れたのか持って捨てに行くのが面倒だったのか放置されていた新聞を広げた

素肌に網目のボディータイツの上に履いているレザースカートから伸びる足を組む


「道に見覚えある場所ばかりだったから、段差が来るたびにヒヤリとしたぞ。案の定、痛かったな」


「あっそう」


塩な返事、新聞を読むのに集中している。裏面に目を通したが、大手老舗料亭が火事で燃えた記事の内容だけを読み、窓の外を眺めた

これからどこまで行くのか?には、慣れてきた。この短い間に、何回鉄道の窓から外を眺めただろうか

時間潰しになるかは個人差だが、ボーっとしようてしていたらタイガが、遅れて息を切らしながらアオバが到着する


「はぁ、はぁ・・・!急すぎて、状況整理と心を落ち着かせる前にただ追いかけてきちゃった」


モトキを連れ戻しにきた、突然連れてかれて心配だから、このどちらでも心のどこかにあったかもしれないが、目の前で起こったことに驚きもあり、ただ追いかけてしまった

追いかけて、乗車してしまい、そして今、汽車は出発してしまう。もう戻れない

とにかく、どうしようもなくなったので、モトキの隣に座る。自然と彼の横に座ったのは、クローイにまだ警戒が残っているからである

タイガは初めましての娘の隣に座る気は起きなかったが、仕方なく腰を下ろした


「余分が2名付いてきたけど、こうまできたら旅は道連れというわけで」


クローイは新聞を畳み、それを適当に投げ捨てると別の席で座り居眠りしていたシルクハットの男性に当たった。ハタ迷惑である

到着はどれぐらい要するのか?と彼女に尋ね、「10時間ぐらい?」と返ってきてモトキとアオバは固まってしまった


「まさか、私が学園の授業をこんな形でサボることになるなんて・・・」


「もう、どうとも思ってなくなってしまった自分がいる」


「サボることに慣れてきたな、モトキ」


最悪窓から飛び降り下車して逃げるもあると、タイガがとんでもない強行手段を提案してきた


「その手があったか!」


「その手があったかじゃないでしょ!モトキ君!」


生徒会長のネフウィネだけでなく、この二人も常識が通じないことがよく解ったアオバであった。本当に、やりかねないのである


「10時間、帰りも10時間ね・・・」


当たり前である。楽しい旅行でもないので、帰りも同じ時間であることを懸念すると重い息が出てしまう

それでも体感的に遅く感じても、時間は進み、数時間して、ここでタイガが最初に気づく。時間が経つごとに、乗客の数が目に見えて減っていっているのだ

途中数人、乗車してくることもあった次の駅で乗車人数を優に超える数が下車し、半分である5時間程で、乗客はモトキ達だけとなってしまう

さらにそこから5時間。終点ではない駅のはずなのに、残る客はいないか見回りに来た車掌らしき人物から「終点です」と報された


「終点には見えない殺風景な一駅だけどな・・・」


「臨時終点駅となっていますので・・・」


車掌は何かを説明するつもりだったようだが、クローイが遮ってきた。慌て口調で「わー!わー!終点なんだから早く降りようじゃないの!」と大声で急かす

おかしく思うが、ここで問い詰めても迷惑になりしょうがないので、終点と言われているこの駅で下車

景色は殺風景な荒野が広がっていた

乾いた風が吹く

周りに建物は見えない。こんな場所に突然放り出されたら遭難に等しいだろう


「ここでキャンプでもするのか?寝て起きたら口に砂利が入ってそうなこの場所で」


土も乾いている。所々に自生する植物は普段は花壇とかで抜いて処理する対象となる草ですら弱々しく映るも逞しく見える

雑草という草はないとは聞くものだ

モトキの口からキャンプと聞いて、なんだか楽しくなってきたタイガであるが、その気持ちは一旦片隅に置いておき、まずはクローイに訊ねる


「10時間ぐらいでの到着だったなら、ここが臨時駅になっている理由を知っているな?」


モトキもアオバもそれは気になっており、汽車内で問い詰めてもしょうがなく、後回しにしていたのだが、タイガが先陣を切った


「薄々、勘付いているやつもいるだろーに。あんたみたいなのとか」


一度もこちらに顔を向けず、視線も合わせず、知ってるか知らずかの返答もなく、クローイは腰に携帯していた懐中時計を確認する。何か都合が悪かったのか、険しい顔で「遅刻しやがって」の独り言


「歩ける時間帯の内に歩き、町でも探すべきでもあるんだろうけど・・・」


「俺もそうしたいがアオバ、ここは見知らぬ土地だ。今の行動決定権はクローイにあるから黙って従おう」


「おぉ、モトキ。ファーストコンタクトのイメージからは思えないあたいにとっては良き都合な心がけだな。ちょっと予定より遅れてるだけ、あと30分で来なかったら迎えに来てくれるはずだったそいつの腹に膝を叩き込みに行くから」


どうやら迎えが来ているはずだったようだ。来ない可能性もあるが、まずはそれを頼りに待ってみよう

その間、暇なのでこのだだっ広い荒野を利用し、モトキはタイガと闘って互いを鍛えようとしたが、遅刻に30分の許容時間が与えられてからリミット開始5分程で、遠くより一台のシックな深いグリーンカラーの車見えた

タイヤを切りつけられ砂埃を撒き散らし、クローイを見つけたのか、開けていた運転席の窓から手を出して振る


「おーいおーよ!」


一気にスピードを上げ、カッコつけのつもりかドリフトを行い、モトキ達に土と砂利と土煙を浴びせて停車するという迷惑さ

土まみれになった彼らにお構いなく、バリバリになった白いコートを羽織る男は車から出てきた


「いやーいや!遅れて悪い悪い!ちょいと仮眠とるつもりがガッツリ8時間の健康睡眠!あ!でも怒るなよ!これでも予定より早く出発したのでな!」


それ踏まえてプラスマイナスゼロにしろとでも?その考えが甘かった。クローイは土に汚れたまま、男に延髄蹴りをお見舞いする


「おろえぇっ!?」


目玉が飛び出しそうて、男の鼻から鼻血が出るというリアクション顔としては100点。蹴られたり延髄部に両手を掴むように当て、ゴロゴロとその場にのたうち回る男を捨て置き、クローイは後部座席に乗り込んだ


「ほら、早く乗りなよ」


以前、彼女に痛めつけられたはずのアオバが真っ先に乗った。同じ後部座席に

何故か、クローイは隣に座ったアオバの膝に頭を置く

移動の長旅は疲れるものだ


「俺らは走るのもありだぞ、モトキ」


「いや、乗ろうじゃないか。車自体に大した興味はないけど、俺らがいる街じゃ馬車を見かけるのが多いからあまりお目にかかれるものじゃないしさ」


「そうか。まー、冗談のつもりだったんだけどな」


冗談が半分、それでも構わないが半分。どちらでもよかったが、ノッてくれたり、軽いツッコミぐらいは欲しかった気もする

転がっている男に一切気をかけず、タイガは助手席に座った

モトキの座る座席の選択肢は後部座席しかない。隣に座るアオバに一言、「失礼」を述べ、右からクローイ、真ん中にアオバ、そして自分である

狭い、ギリギリである。アオバから良い匂いがした


「・・・で、出発できるのか?」


乗ったのはいいが出発しない。モトキの呟きを聞いて、クローイはアオバの膝から頭を上げた。今、車内で運転できる者はいない。運転できるのは、さっき延髄へ蹴りを喰らわせたあいつだけ。気だるそうに彼女は窓から顔を出し、横たわる男に向け叫ぶ


「いつまでお昼寝してんの!さっさと運転しなよ!あんたの金玉蹴り潰すぞ!」


起き上がった男は、「只今!」と意気揚々であるが、嫌がらせか駆け足で蛇行に進んで時間稼ぎ

それを見てイラッとしたのか、クローイは車の窓から飛び出したので、男は固まってしまう

蛇に睨まれた蛙状態となっていたが、彼女が走り出したので、逃走。モトキ達はしばらく待たされ、やがて遠くから悲鳴が聞こえた

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