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光ある概念の終日  作者: 茶三朗
傭兵業務
162/217

地をいく傭兵団

山々での出来事の数日前、キボウを倒してからあくる日の朝、一番にモトキはアオバと共に花壇の水やりを行なっていた

大して花に興味はないが、嫌いではない。花に集まる虫、それを狙う肉食昆虫による捕食光景を観察するのは好きである

ネフウィネは今日こないので生徒会は静かな1日になりそうだ


「勝手に学園側が植えといて、用務員の方が怪我で来られなくなったから生徒にやらせるなんて酷い話と思わない?」


「用務員と違って給料出るわけじゃないしな」


愚痴りたい時もある。アオバは普段見せないような不満顔に

なんだか、学園長に対して無性に腹が立ってきたので、今度揚げたコロッケを持った手でメガネのレンズを触ってやろうかと企む

ふと、デカいスズメバチが横切った。蜂は花壇のある庭園のベンチで寝転がるタイガの突き立てた指先に止まる。彼の身長ではベンチに寝転がっても収まらず、はみ出す足は曲げ、地面につけていた


「タイガ、暇なら手伝ってくれるとありがたいんだけどな」


「ありがたいか。言われたいわけじゃないから、俺はここでゆっくり昼寝ならぬ朝方の寝る。朝寝?、でもしておくから」


「それはもう二度寝だ」


指先に止まっていたスズメバチが飛び立った。蜂は花壇の花を食べたいが為によじ登ってきた毛虫を捕らえ、モトキ達には見えないが肉団子にして巣へと持ち帰る

植物や野菜には、毛虫や青虫に齧られるとスズメバチやアシナガバチを呼ぶに進化している種もあるようだが


「改め、学園に来てるMaster The Orderがお前だけだとこうも静かなんだな・・・」


「ネフウィネがぶっちぎりでうるさいだけだ。その近くにいなきゃならなくなる生徒会に身を置いているなら尚更だろ」


モトキに背を向け、寝るから放っておいてくれと背中で訴える。そもそも、手伝えと頼むのもおかしな話だったなと水やりに戻ろうとした時である

タイガの寝ていたベンチが吹き飛び、モトキの頭上ギリギリを掠め飛んでいった

ベンチで寝ていたタイガごと吹き飛び、学園長が趣味で庭園に設置した噴水に激突。噴水とベンチは無惨にも木っ端微塵の瓦礫の山と化す


「な、なんだ!?なんだ!?」


1番何が起こったのか理解できないのはタイガであろう。瓦礫の山に埋もれ、すぐに這い出してくる気配はない

甲高い声で、何故か自分に怒りをぶつけてくるような声で、「モトキィーーっ!!」と名を呼ばれた


「しばらく、ね」


「お前は・・・クローイか!」


地をいく傭兵団に所属しているらしく、物珍しかったり、名のある武器を集めるのが趣味

戦いたくもなかった相手と戦うことになってしまった原因。よく何もなかった顔で自分達の前に現れることができたなと

アオバは彼女に不意討ちから酷い目に遭わされたのだが、露骨に嫌ったり恨む眼をぶつけたり、この前の仕返しとぶん殴るつもりもないが複雑な心境


「突然訪れるなんてな。やはりネフウィネの持つあの剣を諦めきれなかったのか?また次助けるにしても、こうして生きてないかもしれないぞ、俺もお前も」


「そーんな用で来たんじゃない。あんな虎の尾を踏む真似はごめんだから」


あの時、踏まなきゃよかったのにと思い返す。おかげで、そこそこ大変な目に遭った


「団の拠点に帰り、団長にあんたのこと話したの。自分の身にも起きたことだから食事の肴に。そしたら、ぜひ会ってみたいと言ってたので、一度来ないか?ってあんたを誘いに来たわけ、今日」


「そうか、会ったこともない方だが、お会いしたいとは光栄なことだな。また機会があれば、後日そちらにお邪魔させてもらうとしよう」


「なーに言ってんの?わざわざあたいが出向いた意味なくなるじゃない。これより出発だから、地をいく傭兵団のとこへ」


「は?」


しゃがんで、モトキの右足首を掴んだ。引っ張っていくにしても、ここは普通手ではないのか?なんだか嫌な予感がする


「それじゃあレッツらゴー!!」


ガリガリガリ!と顔が削られるような音がする。引き摺られ、猛スピードでモトキは連れて行かれてしまった

唐突に来て、すぐに帰り、残るは嵐の後みたいな静けさだけ。ジョウロを傾けたままで、中の水が無くなった時、アオバは何で自分はただ静観してボーっとしていたのかと我に返り、「モトキ君!」と彼の名を口にしながら、後を追う


「涼しげな爆睡タイムをよくも邪魔してくれたな!」


瓦礫を吹き飛ばし埋まっていたタイガが出てきたが、もう誰もいなかった。遠くでアオバの背が見えたので、すぐに追いつくスピードで走り、砂煙を撒き散らして後を追う

さて、この学園の学園長に就いた際の改装時に、記念の意味を込めて庭園に造らせた噴水の無残な姿を学園長自身が目にすることになるのは1時間後のことであった


「・・・もう、あの子達に花の世話を頼むのはやめておこう」


「なんじゃこりゃーー!!」と叫ばず、慌てず、眼鏡のレンズをゆっくり拭く

噴水どころか、学園の所々を壊されるのは今に始まったことではないからだ



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