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光ある概念の終日  作者: 茶三朗
巻き込まれの護衛任務
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青み夜空の終わりは夜明け

少年は再び眠りにつこうとしたが右隣に座っていたミナールにもたれかけてしまい、拳を右頬に受けてしまった

このまま眠ると再度起こしてしまいそうなのでタイガの右隣に移動

彼女は頬から赤らめているが、灯りがないので誰も自分も知ることはない

やはり、夢の無い眠りであった。列車の時とは違い短い時間で目を覚ますとほぼ同じタイミングで馬車が停まる

モトキへドロップキックをした鎧を身にする者が扉を開け、まず目に入るは壺を抱え上げる女性の彫刻像


「御到着しました」


屋敷までの道を示すかのように幾多も細かく敷き詰められた円状の平らな石

女性の像前で分かれ囲み後ろで再び一つの道に

馬車から降り開かれた門扉は透き通る空色、ガラスのようで違う。門を越えると両端は花壇となっており季節の花々が咲きわずかな風でも喜び揺れ


「いかにも地主や商で富を得た方が暮らしていそうな屋敷だな。これだけ敷地が広いのに彫刻像と花以外に物が見当たらない」


「主の3代前の方が外に余計なものを置かないと、次代で新たに加えるにも興味をひくものが無かったのか今のままなのです」


後ろをついていき扉前へ。扉を2回叩くと内より使用人2名が引き開け「よくぞおこしくださいました」と頭を下げると大ホールへ案内される

聞いていた肖像画にはナイフで刺された跡があり、それでも飾ったまま


「では、私はこれで。主の部屋へは別の者に案内させていただきますので」


モトキ達に一礼を、次に先の使用人によろしくお願いしますと一言告げ彼らにも一礼

鎧を身にしているはずなのに音も立てず去る

眼鏡をかけた中年の男性使用人に案内されたのは書斎室前、モトキは特に正装してきたわけでもないがシャツのボタンを上から3つだけ外し、とめ直す

使用人は扉に優しいノックを


「フリスティン様、学園よりの御客人が到着いたしました」


「よいぞ」一言だけ。入室の許可がおり扉を引き開くと使用人は先に入室せずモトキ達を優先に

椅子に深く腰をおろし、背をこちらに向けた姿。前左右と三方の窓より街景色を眺めながら爪を切る音


「ふっ・・・っ!」


切った指爪に息をかけ、椅子を回転させこちらへ顔を向けるとまずは爪切りをデスクに。次に手で払う動きをすると使用人は頭を下げ退室


「間違いや身代わりもなく、推薦された御人であろうな?違うならば早急に帰るがよい」


「残念ながら、証明できるものがないです。とりあえずは信じてくださいよ、このモトキという御人がジョーカーの手紙に書かれていた推薦人です」


タイガの言う通り、証拠がない

例え別の者を連れてきてもこの方がそうですと突き通すことも可能だが。代わりではなく本人である、信じてもらうしかない


「よーし、信じよう」


「理解がはやくて助かります。まだ疑いをかけるのであれば私からは私自身に起きた明らかを語るつもりでした」


強めに身体を椅子に預け怪しく歯を覗かせながら笑う。一瞬で表情が真顔に戻り羽ペンを手に、指で回し挟むとヘシ折り先端のインクが指を汚す

席を立ちモトキの前へ、その手で親指は少年の左頬を残り4本は右頬へやりムギュッと掴む

指を離せば黒インクが少年の両頬に


「Master The Orderではなく、かような者とは。おま・・・そちの名を教えてもらおう」


「モトキです・・・姓はありません」


白いハンカチをわざと汚すように手を拭き黒をつけていく

席に戻り椅子で一度回り、足をデスクに置くことでブレーキ


「良き名かどうかは価値観は知らぬがこれまでにしよう。私はそなたらを信じることにする、鼻からな・・・よくぞ来てくれたと、歓迎的な雰囲気で言っておこう。式典まで時間がある、発つまでに顔を洗ってくるといい。今件対象の娘にも顔を見せに行ってきてくれ、そこの2人は茶でも・・・」


モトキは深く、頭を下げてから退室

退室の際、尻目にタイガの顔が見えたが、彼の顔は曇っているように見えた

さて、顔を洗いたいが洗面所の場所を知っているはずもなく、先程の使用人どころか他の使用人も見当たらない。こんなことならフリスティン・エトワリングより聞けばよかったと

歩いて見回っているだけでは光る原石あるものを発掘できないと同じようにダメなのでまず1番近くの扉から


「金庫か宝物庫であっても泥棒と間違われませんように」


込める必要のないくだらない願いを胸に扉を開くと白いレースのカーテンが窓からの風により波打ち、窓下の床には鎧が丁寧にまとめ置かれている

そして、水の溜まった桶の横で濡らした布を手に首を拭いている薄い黄土色をした長髪の女性

上半身は裸であり胸は豊かであった

少年は固まってしまう、女性の目は段々と細まっていき、込み上げてくる怒りが滲む。彼女もまた突然のことでモトキと同じくわずかな秒間だが固まってしまっていたのだ


「し・・・失礼しましたー・・・」


扉を閉めてその場を立ち去ろうとしたが駅前で受けたドロップキックを再び

胸を右腕で隠し、容赦のない蹴りによりモトキは床に伏せ倒れ彼女はその背に両足底で踏みつけ乗る


「このまま誰かを呼べば、あなたが私を襲いに参って返り討ちにあったと・・・ね?」


「ごめんなさい、ノックもせずに入った私に全て罪を押しつけてかまいませんので襲いに参じたありもしないことは言わないでください」


ごめんなさいと力無い声で連呼する姿に、さすがにやりすぎたと反省、モトキを踏みつける両足を離す

少年はすぐに手と額を床に着けて謝り続けた


「もういいです、理由も聞かずに手を・・・足をあげた私にも非はあります。すぐに去ろうとしたのと、あなたの態度から間違えただけでしょう。顔でも洗うつもりでしたらこの先を真っ直ぐに・・・いえ、この水でよければ」


「ありがたく」


彼女が身体を拭くのに使用した布ではなく綺麗な別の布を。桶で布を濡らし顔を拭く際にミディアムヘアーをなるべく後ろへ流してから

顔の黒インクを拭き取り、彼女にお礼を。顔以外に鎧を装備した彼女はどうせならとフリスティンの娘であるお嬢様の部屋へ案内を

ノックをするが返事はない、女性はいつものことなのか返事を待たずに部屋へ。部屋にはタイガとミナールが先に着いておりティーカップとソーサーを持たされ淹れたてなのか湯気が舞う


「ソレンダもお飲みになるかしら?そちらの方も」


ミナールはまず香りを堪能し、口から喉へ含みここでまた上がってくる香りを楽しむ。タイガは飲まない、紅茶の水面をただ覗き込むだけ

何故ここに?フリスティンのことをタイガに訊ねると、どうやらモトキが退室してすぐ、ここの御令嬢が来たようだ

引っ張られるように自分の部屋へ招待され、今に至る

彼女はその間に紅茶を2人分淹れ、ソレンダと呼ばれた彼女とモトキにもソーサーに乗せたティーカップを渡す


「コーヒーが飲みたかった・・・」


小さい声でだがミナールには聞こえたのか頸に軽く手刀を、まったく動じず仕方なさそうな顔で紅茶を口に

モトキは香りを楽しむ礼儀など無く、一回で半分を飲む


「お嬢様、この方がジョーカーの手紙に記されていた・・・」


光りにより、どの色にも染まりそうな白を基調としたドレスは眩しく映り、紅茶のティーカップを回収ついでに少年の顔をまじまじ正面から、右から左から


「どうして女性のようなミディアムヘアーなのでしょー?では・・・茶髪!今よりあなたは茶髪ですね!」


髪の色をそのままを呼び名にされた

タイガの方を見ると、彼は指で自分の髪を叩き、次にミナールの髪を指さす。2人もなのだろうと察した


「こほん・・・お嬢様、茶髪ではなくモトキという名をお持ちです。姓が無いので下名でけっこうなそうです」


「そ・・・モトキ、モトキ・・・。お初目にモトキ様、私はフェーナー・エトワリング。護の任務を承っていただき感謝いたします」


可愛らしい、煌びやかを思わせる美しい瞳に桃の唇がより可愛いらしさを引き立たせ、歳に見合わない美しさ

モトキも彼女に続き頭を下げる


「ですが、ジョーカーに直接申したいものですね・・・攫えるのならばお好きにと」


このお嬢様は不意に驚くようなことを、からかうようにモトキだけでなくタイガとミナールにも含め向け笑う

ソレンダは顔も変えず、このような性格のお方だと長き付き合いでの諦め


「ジョーカー・・・スペードもですが常に甲冑で身を包み素顔を知る者など皆無、その顔は様々な憶測と噂が蔓延っていますね。平凡だとは耳にしたことありませんが、戦いにより大きな傷があるや、焼き爛れている、容姿のコンプレックスにより隠している、眉目秀麗とも・・・攫われたならばぜひ、その素顔を拝見させてくださいと所望しますね」


「それは肝が据わってるではなくてただの好奇心が充満した子供ね」


ミナールの言葉に耳を傾けず、白く上品さを感じさせる手袋をはめた

最後までちょっとずつ飲んでいたタイガのティーカップを回収しテーブルへ


「さぁて、お時間も頃合いですし・・・行きますよ!ソレンダ、茶髪、マイナス茶髪、黒紅」


マイナス茶髪とはミナールのことであり、黒紅はタイガのこと。自己紹介と、紅茶をごちそうになって、髪色からの呼び名をつけられジョーカーの素顔を知りたい願望を教えてくれただけ

作戦や配置の話など無かった

フリスティンからは顔を見せに行ってくれとしか言われてないので、これでよかったのだろうと今は自分に言い聞かせるしかない






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