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光ある概念の終日  作者: 茶三朗
巻き込まれの護衛任務
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青み夜空 経過

夜空の青みから、夜明けは近いだろう。見ればわかる。

学園長が言っていた向かった駅には5両の列車が着いており、それへ先に乗り込んだモトキとミナールは、出発時刻が近づくのに乗ってこないタイガを待っていた。


「あいつは・・・!」


ミナールがイラつき始め、もう置いていこうと提案してきそうな雰囲気になってようやく彼は乗り込んできた。

手には白い紙袋を合計3袋を持ち、モトキとミナールに1袋ずつ着席前に投げ渡す。

タイガがモトキの隣に座ったところで2人は、彼から渡された温かみのある紙袋の中身を確かめようといらけば、甘みを伴う香ばしさが漂い、なんともいえない至福を与えてくれる。

紙袋の中身はアップルパイであった。


「小腹が空いてたからな。ここへ来る途中に寄り道したらパン屋の店主がわざわざ焼きたてをくれた」


学園から出たタイガは真っ先に駅に向かわず、何か食おうかと思い立ち、早朝から営業をしているパン屋へ立ち寄ることにした。

自分の分だけでよかったのだが、目の前で食えばモトキの腹の虫がうるさくなりそうだし、じゃあモトキの分も買おうにもミナールを除ける理由もないので、今日の気分からアップルパイを一応3人分買ってきた。


「珍しく快眠だった日に限って急に呼ばれちまって朝食を食いそびれてたからな。助かるー!ありがとなタイガ!」


「だろ」


ありがたくアップルパイをいただくモトキの向かい座るミナールもまた、タイガへ小さく「ありがと」と呟き、一口かじったところで、ふと思い出す。


「そういえばあの日・・・あとにケーキを贈ったはずだけど、食べてくれた?」


それを尋ねられたモトキは、アップルパイを手にしたまま、固まってしまう。

エモンすら悶絶した見た目は最高のケーキの味は、悪い方で忘れ難しな一品であった。


「あ、あー・・・あれか・・・1ホールをわざわざ。ありがとな」


「お礼なんていいわよ。それより、味はどうだった?自分で言うのもあれだけど、なかなかの出来栄え、まさに傑作だったわ!」


悟られぬように、視線を逸らさないよう努めるが、言葉がつい詰まる。

言えない。しっかりとまずい味だったと。


「い、いやー・・・・・つ、ついペロリと1ホール食べてしまったな」


「そっか、そっか!ふんふふーん♪」


それを聞いた彼女は喜んでいるのか、短い鼻歌を奏でた。

モトキは口をつけてしまったので、ケーキを全て食べはしたが、あの味と食べ尽くすまでの辛さを思い出して心の中で泣く。


「ふふふ・・・まーた気でも向いたら作ってあげるわ」


その気まぐれが、再び訪れないことを願うばかりである。

楽しみにしているとは言えず、苦笑いをし、思わず背筋が伸びた。


「ご厚意に感謝する・・・」


アップルパイを食べ終えると、夜中に叩き起こされたこともあってか、睡魔が突如として襲う。

発車した列車の中、リズムよく繰り返される揺れの中でモトキはいつの間にか眠りにつく。

ほとんど、夢を見ることはない。いつものことだ。

見た時は、記憶に深く残りやすい。

眠ってしまった彼を起こさないよう、タイガとミナールの2名は、一言も会話をすることはなかった。

単にあまり仲が良くないので、話題が無かっただけかもしれない。


「暇になった・・・」


ミナールの前でわざとそう呟いたタイガの声が、微かに聞こえた。

それから、どれほど眠っていたのだろうか。モトキの肩を誰かが優しく掴み、軽く揺りながら起きるように声をかける。


「ほら、さっさと立ちなさい!」





間抜けな鼻息と喉奥からの詰まり引っかかる声をあげ、完全に目覚め切れてない身体で列車から降りると


ガラスが貼られた天井の駅に3人が乗ってきた他に列車が5両、残り8両を止められる


乗車した駅と規模が違いホーム内にいくつも店があり、朝の時間のおかげでもあるのか賑わいをみせている

あの店で列車旅の疲れを取ろうと誘う暇もなく、駅から出るがここからどうやって行くのか道も知らない

学園長から使者が駅に迎えにあると言うが


「なぁモトキ、気さくに話しかけたらいかにも無礼と斬捨ててくれそうなのがいるが・・・まさかあれじゃないよな?」


人よりもまず馬車に目がいく、2頭の栗毛と青毛の巨体な馬

手綱を持ち、首に革布を巻いた鎧を身に纏う者が近づきがたい雰囲気を漏らし、存在感を出す


「うん、きっと違う。ここ辺りにいる人達に手当たり次第に声をかけていくか」


馬車と鎧を着た者から目を逸らし背を向けた次の瞬間、背後よりドロップキックを受けてしまう

背を両足で踏みつけ乗られ、腹部と胸部にくる人と鎧の重みと服越しに皮膚へ伝わる冷たさ


「あんたが使者?お迎えの礼儀は背中から蹴りをいれるよう習ったのかしら」


「モトキー、生きてるかー?」


返事するにも駅前のレンガを敷き詰めコンクリートを流し固めた地は砕かれ、下の土が口にはいり声が出ない

右手を挙げ親指と人さし指でリングをつくり生きてる証を


「これは失礼しました、ついこの者が余計なことをしなければと考えると胸から騒めきと怒りが込み上げてきまして」


モトキの背中、腰、尻を踏み、馬車へと移動し扉を開ける。豪奢な馬車とまではいかないが大きさだけなら劣るどころか越える車である

外からは内部を見れないよう窓に施しがされていた

窓からの光が唯一の灯りであり、目的地へちゃんと届けてくれるのか疑問を持つミナールとは別にタイガは疑いを微塵も持たず乗り込む


「馬車形が横にした四角柱だからか、まるで巨大な窓付きの棺桶だな。もしかしたら、このまま3人埋めようとでも」


「ちょっと冗談にならないわ、相手側の棺桶にならないことを願うばかりね」


扉が閉められ、馬車が動きだす。このまま事が起きなければいいが


「あ、モトキを置き忘れしてる。すみませーん、止めてくださーい」




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