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光ある概念の終日  作者: 茶三朗
参加ではない親交会
149/217

ミナールからの依頼 13

滞空をやめ、最初より天へ近づいた男はゆっくりと地に足を着ける

目線の先にはボロ雑巾より酷い状態で、モトキが横たわっていた

原型があるだけでもやるなの一言を贈りたい気分だ。しかし、その身は衣服と共にボロボロである

血溜まりに横たわり、白い煙が至る箇所から昇り、酷い傷だらけと一目でわかる。焦げたかのようで、あの光線により貫通している部分もあるであろう

しかし生きているなら、治癒が始まるはずだ。この者がボスと同じ力を有しているならば

やりすぎな気もするが、鼻から始末するつもりである。その力が見れなくとも結構


「ゔぐぐぅ・・・!」


反応がある、それに驚きはしなかった。捻り出す苦しそうな声と、起き上がることに

振り絞って立ち上がる途中、酷い吐血と穴の空けられた箇所からの出血。頭から、指先へ、足先へ、全身に流れる血の中で、力みを含め睨みつけてくるその眼に慄きを覚える

そして、治癒が始まる。これが見たかった


「やっぱり、ボスと一緒だ・・・精神や気持ちの持ちようで治癒が遅くなったり、最悪治癒されないこともあるみたいだ。今のあんたには機能してくれているようだ」


モトキの血色に、傷は確実に良くなってきている。出血も止まりだしており、荒めになり歯と歯の隙間から漏らしていた呼吸は落ち着いていた

あれでよくと思いながらも、男には一点、先ほどので引っかかる部分がある


「しかし、さっきの・・・盾を手から落とすにしては、間抜けな油断にも、押し負けたようにも、諦めたようにも映らなかった」


あのまま盾を前に直進さえすれば自分に着けるはずだった。近づいたところで、相手に大きな一撃を入れてやろうとしたが、モトキは盾を自らの手から離してしまったせいであの状態に

何故、負けるには早すぎたはずなのに、盾を捨てたのか?ワザとにも見えなかった

その真意を訊ね、彼自身の口から理由があるならば聞いてみたい


「俺だって、自分でもビックリしたさ。何かが俺の意識を跳ね除け、乗っとってきたかのような・・・そんなことが、前々からあるにはあった。ほとんど覚えちゃいないけどな」


「ふん、ニハとセニーも言っていた。始末しただろうと思ったり、そろそろトドメに差し掛かった時にあいつは突然凶変した・・・と!」


右腕が変形し、固定せずに人間が扱いやすいサイズにコンパクト機関銃へ。シンプルに、1発だけ弾丸を撃ってきた。その弾を、両手剣で叩き砕く


「で、乗っとってきたかのような感覚は?」


「どう言えばいいだろうか?目の裏から暗闇が支配してきてるような、胸奥から無数の手が捕らえてくるような。俺の意識も視界もはっきりしているはずなのに、それが分かる」


「あっそ・・・」と、聞いてきたくせに期待していた返答ではなく少しばかりがっかりした態度

憶測も着かず、これ以上、やはり言葉だけでの考察では収穫はなさそうだ


「もし、乗っとってきたならその俺に言う。甘かったな、俺はまだやられてない」


「俺からすればニハらが言っていた凶変を見たくもあった。余計に堪えるなと。だがやはりそうはならなくとも、戦闘の続行をさせてもらうことにした。最終目的は、あんたの始末だからだ」


右腕の変形だけではない。小型化された機関銃が左腕、両肩、顔の両側面、両腰にも出現


「装備を付けたいだけ付けたせいでハチャメチな見てくれになりやがって。けど何故か、心が擽られる」


そんなかっこよさについての冗談を言ってる場合ではない。あの機関銃に魂があるのかと疑ってしまうぐらいに威圧と気配を感じる

警戒を始めるモトキに対し、攻撃前に男は左の手に現れた弾丸を1つ摘み、説明しだした


「さて、使用される弾は巨大熊を急所でなくとも一撃で仕留めたり、人間など容易く木っ端微塵にできる弾丸経が.458 inのライフル弾がちゃっちなものとなるんだ。そこまでくれば余程の対象ではない限り、関係なさそうな気もするが威力に越したことはない。建築物や装甲を破壊するにも役立つからだ!」


その説明だけ、これより発射する弾丸の説明だけをした。したかっただけか、単に恐怖心をワザと駆り立てるつもりだったのか

そして説明後の間もなく、全ての機関銃から弾丸の発射された。けたたましく、怒涛に、止まることのない射撃音。威力の表れか、男の視界は全て揺れてぐしゃぐしゃになったかのように映ってしまう

モトキは説明の最中、大気中の風を両手剣の剣身に集めており、それを高圧にして突き刺さすように風の剣刃を伸ばし放った

そこから薙ぎ払い、少し抵抗でしなる風の刃による一閃とその余波による風圧により、弾丸は風に斬り刻まれていく


「名付けて、風装剣(ふうそうけん)。名付け親は秘密だ」


名付け親はメイソンなのだが、それを言おうとするも、言葉の途中でやっぱりやめて秘密にしておいた。ほんの興味で、捜されでもしたら迷惑をかけそうな可能性がある


「あれでやられれば、ボスと同じ力があるくせに、やはり本体の差かと死体に蹴り入れて侮辱するとこだった。そうこなくちゃ面白くない」


銃口から煙の上がる機関銃は全てアーマー内に収納され、右腕はアイスピックにみたいなスピアに変形。スピアには電撃が帯電している

あれに刺されたくはないものだ


「これを頭か心臓にでもぶっ刺してやる前に警告だ。あんたが刻み切った弾丸はまだ終わりを迎えちゃいないってことを、どういうことか、それが今にわかる」


男の言葉に「何を?」と問う前に、地面に無数に転がる弾丸の破片の一部に振動の力が発生。その振動により跳ね上がった弾丸の破片がモトキの胴体に着弾する


「ごふぁっっ!?」


着弾した小さな弾丸の破片は、深くめり込み、振動の力とそれにより跳ね上がった勢いにより威力を増加させられる。口から血を吐いた


「駄目押しにこの一発だ!」


間髪入れずに説明に使った弾丸を左親指で弾き、それにも振動の力を発生させ、モトキに命中させる

胴体のどの部に当たったかはどうでもよい、振動の力が爆発的に威力を増し、彼を吹っ飛ばそうとするも、両足を踏み込み、地面を少し抉り後退はしながらも耐え凌いだ。しかし、口からの血と弾丸が直撃した腹部からの出血はどうしようもない


「ぐっ!うっ!」


「モトキ、治癒するならさっさとするんだ。治癒されていくにつれ、それに追いつけなくなるようどんどん攻撃の激しさを増すだけだ。体力は持つか?ここを守らず捨てるのも手だ。どうしようもなかった。それも許す。この俺だけが!」


電源の走るスピアを地面に突き刺し、放電を行うと電撃がモトキ目掛け、広範囲広がり地面を砕きながら疾走する

回避する考えを持たず、右手に盾を再度出現させ、迫る電撃よりも相手に集中


「強がってみるさ、これから!」


盾を構え、高速に突撃。電撃を跳ね除けていき、モトキの後を光が尾を引き、その速さにスピアを地面から引き抜くに間に合わず、真正面から盾による強烈な一撃をくらう


(はやっ!!)


力と速さによって生み出された重い衝撃に、全身を覆うアーマーの数カ所、主に顔部分にヒビが入り、体は吹き飛ばされるも10メートルぐらい飛ばされたところで背から2本のノズルを展開すると、そこから青き光を噴射して停止

殴り飛ばされすぐにでもできたが、ヒビの修復時間がちょっぴり欲しかった

体勢を整えてからノズルから噴射される青き光をより増幅させ、シンプルに頭からモトキへ突撃する


「舐めるな!流れは俺に来始めたぞ!逆鱗パンチ!」


光の力を握った拳は、突撃してきた頭頂部を迎え撃つ。一閃の光が走った直後、両者は強い衝撃に弾かれ後退

弾かれたところで男は再度攻撃を仕掛け直そうとするも、モトキの方が一手速かった。手前まで近づいており、先程の握ったままの拳で男の左手を殴る

左手を殴られ、指全てがあらぬ方へ曲がり、手首の骨も砕かれてしまう


「うぎぇぎぇ・・・っ!」


スピアとなっていた右腕は元の手となり、へし折り曲がった左手の指を力技で元に戻した

その間にも次の一撃が頭部へ放たれる。男は咄嗟に胴体の胸部と腹部の中間辺りに2本のノズルを出現させ、拳がアーマー頭部に触れかけた瞬間に膨大な青い光を噴射しモトキを吹き飛ばす。それにより自身は大きく後退


「骨が折れただけだ!形さえ戻せれれば、痛みを堪えるだけでいつもどおりだ!」


青い光を噴射させ後退する最中、右腕を筒状へと変形させるとそこから先端が4枚の花びらの開きに似た削り特化の刃となっているドリルを地面に向け発射

発射された3つのドリルは地面を掘り、地中へ消えた

そして吹きつけられた青い光より出てきたモトキへ、地中から飛び出したドリルが彼の首と胸、腹部へ着弾する


「喉と心臓と腑へだ!削り抉られ痛み悶えながら死ね!」


しかしモトキは、不気味なぐらい落ち着いていた。鮮血が飛び散る中、その場に立ち尽くし、悶絶も悲鳴もなく、膝をついたり、倒れもしない

眼力は鋭く、堪えによりきたものか、向ける殺意によるものか


「雇われ身だからとか、報酬があるからなど、もはやどうだっていい。もう、俺の信念でお前を倒すになってんだよっ!!」


喰らい付く生き物のように回転し肉を削る3つのドリルを全て握り潰し、武器も持たず無防備に走ってきた。男はその威圧に屈しそうになるも、右腕をサーベルに変形させ、刃に振動と電撃を帯びさせる


「死ぬのはあんただ!」


モトキは右手に光を、その拳を握り放とうとするも距離が一歩届かない。刃は深々と突き刺さり、背を突き抜ける

口から血が垂れ、その拳を力なく解いてしまう。かに思われたが、モトキは解かれた右拳を再度握った


「ま!!待て!!」


光と風の力を、光は右腕に絡むように巨大な矛となり、その光の周りを風が荒く走る


「逆鱗!芯突(しんとつ)!」


左手は自身に刺さる刃を掴み、至近距離で男の胴体へ一撃を放つ。炸裂し、激しい音と衝撃が生まれる中で、風が走る光の矛は男を貫いた

アーマー全身にヒビが入り、その隙間からは青い光が漏れ始め発光し、漏電もしている


「うおらああああああああああっっ!!」


後は力任せに、押し切る勢いで、上空へ向けてではなく、下方へ行くように。男は殴り飛ばされるも、数メートル時点で地面に叩きつけられ、大きく跳ねると再度叩きつけられた

すぐにモトキは右手に盾を出現させ、それを相手は狙わずに別の方向へ投げる


「うが、あぐ・・・最小限にダメージと、全体破損は防いだものの、外殻だけで俺自身へのダメージが!」


少し体を震わせ、なんとか立ち上がった男に装着されるアーマーのヒビからは青い光だけでなく、血が垂れ落ちていく。光の矛が胴体から背中を突き抜けたのかその部分が破損し、下の本体、自身が露わとなっていた

ヒビの部分は順調に修復されていくものの、損傷の酷い胴の前面と背の部分は遅れている


「あ、危なかった。久方ぶりに死に近づいた!こ、このヤローちくしょうめ!まずは内部に付着する吐いた血の除去をしてから・・・モトキは!?」


はっと意識を移し、前方視線先にモトキの姿はない、どこに行ったのか見回すと彼は時計塔を持ち上げていた

先程投げた盾は、時計塔の根元を壊す為に投げたのだ。あれをどうする?あの距離から動く気配はなく、どう見たって投げつけてきそうである


「この時計塔を!」


先に男は空中へ飛ぶも飛び立った直後、時計塔は投げられ猛スピードで迫ってきた


「案の、定だ!」


右腕を元の拳に戻し、両拳による連続パンチで時計塔の先端から殴り砕いていく。しかし途中で、時計塔内を突き破り、モトキが出現


「出てくんな馬鹿たれェェーーー!!」


背より8本の鎖を放出し、モトキの肉を貫かせ、そこから鎖が巻かれ拘束しようとするも、時計塔の残り部分は突然木っ端微塵となった。突き破り現れたことで時計塔に隠れていたモトキの下半身も現れ、その右足には風が集まり、勢いのある回転蹴りを撃ち込む

蹴りの初動と風の風圧は時計塔を砕き、その瓦礫を飛ばすと共に、8本の鎖を跳ね返す

男がとった咄嗟の行動は、右拳は発射させ、左腕はガードを行うも手遅れであった

回し蹴りは、頭部に炸裂する


「これでくたばれっ!!」


蹴られ、吹き飛ばされ、視界から離れるまでは一瞬だった。アーマー頭部左半分は砕かれ、素顔が露見する。モトキはあの一発でも討ちとるどころか、頭部を完全に破壊することができず、険しい顔で睨んだ

それでも、ダメージはある。男は体勢を立て直す様子はなくも装置は勝手に作動し、吹き飛ぶ方向とは反対に背に現れた4つのノズルから青い光が噴射され、建物に激突する前に勢いを殺す

頭部の砕かれた部分を遅くも修復していき、ゆっくりと、地へ降り立つ


「なにか手があるや、不思議な力で助かったわけでもなく、単純なフィジカルに任せた攻撃で押された・・・」


グッと何故だ!?と叫んでしまいそうな感情を抑え、モトキへ視線を向けるも、彼の後方にいる何か得体の知れないものが気迫と共に映った

こんなやつに、ボスと対面した時と同じ感情に陥りそうになる自分に腹が立つ

モトキは歩み始めた、両手剣に光を纏わせて


「来るなら来るんだ!その歩み一歩一歩は、あんたの命運はここまでのリミットだ!」


両手から放出された電撃を間で凝縮させ、発射と同時に電撃の規模が巨大化する。そしてすぐに右腕をスピア状に変形させた次の瞬間、放たれた電撃を光となって突破したモトキが目前へ迫っていた


「な!!に!?」


「ギガルガクロス・・・!」


両手剣でバツを描くように斬り、最後にその中央に突き行うと同時に光の力を放出する

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