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光ある概念の終日  作者: 茶三朗
参加ではない親交会
143/217

ミナールからの依頼 7

二皿に盛りつけた料理を平らげたので、おかわりをしようと再度テーブルへ向かおうとしたが、ミナールに襟袖を引っ張られ、制止される

どうした?と小声で尋ねると、彼女は親指で会場出入口となる扉の方を指した

兵士4名が入ってきていた。会場は静まり返る

1人が叫んだ


「王がご到着なされました!!」


王の到着の報を聞き、ざわつきはあったも僅かな時間にして静寂へ。扉前に待機する2名の使用人により扉が開かれた

金粉が散らされた羊毛を編み込み作られたマントで身を包む男性。オールバックに後ろで束ねた栗色の髪とカイゼル髭、額には緑の宝石を飾りつけ、気品はあるも目尻は険しく人相は悪め。歳は40代後半ぐらいだろう

先に入った4名の兵士の内、2名がゆっくり歩み入ってきた王なる存在の先導を歩き、残り2名は通過した王の後ろに付く


「あれが、この街や地区土地一帯の一国を治める王か?」


「そう、ホーンタン・ベス。彼で18代目となるわ。近年のベス家の王は、貴族とかが各自力をつけ、ファーベッツ家みたいな一代で富を築いた者が増えたおかげで、ただのお飾りとなっている評判ばかり」


「飾りの王か・・・」


不憫に思えてきた途中、オバーのシャンパンを無視した銀髪に茶ラインのメイドが飲み物はいかが?かと尋ねてきた

断りを入れ、王が過ぎるのを見送る


「今回の親交会、他は中止の声多数だったのに、無理矢理開催を実行したのも我々一族には全然発言力があると示したかったんじゃないかしら?」


「迷惑なのは、その焦りだけで終わればいいんだけどな・・・」


ミナールは、モトキのその言葉に引っかかった。会場最奥付近に到着した王の発した「各々楽しむがよい」など聞こえていない

モトキの方は今度こそ、料理のおかわりに向かおうとするも、ここで突然尿意が襲撃

初期段階、全然我慢できるレベルではなく、最初の尿意がきた時にまだ大丈夫だろうと余裕こいて時間を要したレベル


「悪い、ちょいとトイレ」


「え?護衛なのに私から離れるつもり?その間に襲撃でもされたらあんたの職務怠慢になってしまうかもね。ま、漏らされても哀れむ目を向けるだけだし、さっさと済ませてきなさい」


「すまん・・・!」


急いで会場を出た。トイレの場所など知らないが、探し回ればすぐに見つかるだろう


「1秒も無駄にはしたくない!この溜まりに我慢され、尿意という生理現象を解き放たれる感覚は天にも昇る性的といっても過言とならない気持ち良さになるはずだ!」


「おや、モトキ君じゃない」


階段に差しかかろうとしたところで、遅れて到着したレフォールと出会した。モトキは立ち止まるも、足は落ち着かない


「あ、どうも」


完全には立ち止まらず、足の忙しい動きとは違い徐々に両腕を振って進んでいく

ゼルテンタが鬼の形相でモトキに突っ掛かってきた


「貴様!ミナール様から離れて何をしている!?」


「あの娘と喧嘩でもした?」


「いえレフォールさん、生理現象の排出の許可はミナールより得てます」


老人の鬱陶しい喧しさは無視し、レフォールへ事情を説明。彼女はトイレは階段降ってすぐにあると教えてくれた

最初ここに着き、会場へ行くまでの間にトイレの場所ぐらい頭に入れおけばよかったと振り返る


「じゃ、もう王も到着したみたいだし私も急ぐわ。ちゃんと手を洗いなさいよ」


「ミナールの手前、エチケットには配慮しないとな」


手洗いはちゃんとしよう、逸物を触るのだから

レフォールと別れ、階段を降りて見渡せばすぐにトイレは見つかった

もちろん男子トイレに入る。中は広い、並ぶ小便器の個数は15。それと個室も同数ある

1番奥だけが閉まっていた


「はー・・・公園とかにある公衆トイレの掃除したって無駄な汚さ残るタイルとは違うな。変に飛び散らしたら申し訳なくなりそうだ」


入ってすぐの手前ではなく、11番目の小便器の前に立ちチャックを下ろし、パンツなり股間辺りを(まさぐ)って逸物を出すと用を足し始める

全身から体温が抜けていくような感覚がした


「おほ!ほぉっ!足から頭頂部にかけて気持ちの良い悪寒が走るな!」


1分近く出していた。しっかり振ってから納め、チャックを上げる。レフォールに言われたとおり、手を洗いに向かおうとするも、途中で足が止まった


「いつまで籠っているんだ?下痢か?便秘か?」


1番奥の個室、誰か使っているはずなのだが、人の気配は無いに等しい。なんだか最近、落ち着き意識すれば何かの気配を敏感に感じ取れやすくなってきた気がする

失礼承知で床に這い蹲り下から覗く、ハイヒールと足が見えたが下半身に履いているパンツなりスカートなり、ズボンを下ろしてはいない

女性の足だが、そもそもここは男子トイレのはずだ。突然、滲み湧き出るように、胸に刺さる幼少に死体の疑いから、やはり死体だったのを目の当たりにした時と似た感情の震えと動悸に襲われた

何かがおかしい、内から鍵をかけられた個室の扉を拳で一度殴ってから、引き千切り潰す

中には、便器に座り息絶えた女性の死体があった


「ちょっと勘弁してくれ」


女性はハイヒールと下着だけの姿、もう生命のない女性の右頰に手を当て体温を確認。冷たく、殺されて時間が経過している


「下着だけということは、趣味で衣服を奪ったか、その服を使用する為に奪ったか・・・後者の可能性が高い。会場に紛れいるとすれば、貴族の誰かに扮するには無理があるだろうから、一番に違和感なくいれるのはメイドだな」


こんな場所に死体を放置せず、運び出してやりたいがそれは後回し。スーツのジャケットをせめてもの気持ちでかけてあげてからトイレを出た

その一方で、会場にレフォールが到着して娘と再会。先程、モトキとすれ違ったことを話す


「漏れる一歩手前だったのかしら?落ち着きない様子で、イタズラにもう少し話止めしておいたら面白い観察できそうだったわ」


「お母様、鬼ですか」


レフォールが到着したのを見計らい、王に動きがあったので人の声は一旦無くなった

ホーンタンは、深く息を吸ってから挨拶を始める


「皆の者、改めこの時勢の中、よくぞ来てくれた。革命軍の賑わいがあったおかげで、各自今回の開催を反対する者もいたろう。しかしこうして、足を運んでくれたことはとても嬉しく思う」


反対すれば断固拒否をし、強制に近い開催へ持ってきたくせによく言うよと、レフォールもオバーも、内心愚痴る

王は皆へ向け、乾杯しようとシャンパンの入ったグラスを掲げるも、手を滑らしたのかグラスは落ち、絨毯の上に音を立て割れた

茶色のラインが入る銀髪のメイドはその光景に目を細め、支えるトレーの底に貼り付け隠していた刃渡が少し長めのナイフを王であるホーンタン目掛け、音もなく、手早く投げ、何事もないフリを行う

ミナールは気づいた。だがその頃にはもう遅い。彼女以外、誰もまだ知らぬ中、王の頭部左側面にナイフが刺さる寸前まで迫っていた


「避けっ!!」


彼女の声を遮るように、出入口の扉を蹴り破る音。外から入ってきたどこから来たのかわからぬ風と共に、飛んできた回転する盾がナイフを弾いた

ナイフは王の足元前の床に深々と刺さり、盾はそのまま直進し、壁に小さな亀裂すら生じない綺麗に刺さり止まる


「逃すかぁっ!」


モトキは高く跳び、天井ギリギリから急降下し、飛び蹴りを仕掛ける。まだハッキリとしていない事体だが、騒ぎとなり会場にいる人々の中には逃げ始める者がいる。攻撃に巻き込ませてしまう考慮をしてる暇などないので好都合、それでいい

逃げる者達に紛れようとしていた茶色のラインが入る銀髪のメイドへ襲いかかった。彼女は銀製のトレーを盾にするも、本能が無理だと判断して寸前で躱す


「きゃああ!」


モトキの蹴りは轟音を立て、床を砕く。その衝撃の余波により、躱しはしたものの、女性は吹き飛ばされてしまう

銀髪を揺らし、体勢を立て直して着地しようとするも、唐突に視界外の右方向からミナールが勢いよく跳び蹴りを放ち突撃を行ってきた。蹴りは腕でガードをしたが直撃に等しく、一度その腕へ踏み込む間を置かれてから足底で押され、壁に激突


「ぐはっ!! 」


壁に深く広いヘコみ、その周りから亀裂が走り崩壊していく。ずるりと力が抜けたように彼女は壁から床に落ち、うつ伏せたまま動かなくなった


「あーあ、マズイわね。私達が会場壊しちゃってるわ」


「革命軍のせいにしよう」


「そうね・・・」と、どうでもよさそうな態度で同意を表すも、ミナールは女性に歩み寄る

トドメを刺すよりは連行する方がいいだろう。彼女1人だけとは考えにくい、目的や他に仲間はいるかと聞き出さなければならない

まだ警戒をしておくべきだ

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