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光ある概念の終日  作者: 茶三朗
参加ではない親交会
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ミナールからの依頼

腹の虫が鳴った。授業中だったこともあり、一気に注目の的になるモトキ

ただ一言「すまん」と謝り、クスクスと主に女性の笑い声が残るも、皆授業に戻った

一回だったら一定の注目と笑いで済むも、その後も数分おきに腹の虫がなり、いよいよ舌打ちが聞こえ出し、教員から睨まれ、笑われなくもなる

生理現象だ、どうしようもない

だが、恥ずかしさと申し訳なさはある

刻が早く過ぎるのを待つだけ

オーベールは心配やシャレの言葉一つもなく、他人のふりを貫き通す


「はぁ・・・」


授業終わりに、逃げるように出て行ってしまった。人気のない階段に腰を下ろし、何も言わない、溜息もつかない

だが、腹は減る。静かな場所では腹の虫の鳴き声がよく響く


「あ、昼休みか・・・生徒会室へ行かなければ」


事情で10日、生徒会の者達の補佐をしなくてはならない。入院期間中のは加算されずまだ3日目、あと7日もある

居心地は悪くない。ネフウィネは闘い後、特に恨みを持たずいてくれ、アオバも優しく接してくれる

最初は他の生徒会の面々も突然な事に驚いてはいたが、ネフウィネが気にしてる様子もないので受け入れるしかなかった


「正式に生徒会になるのも・・・いや、俺には無理な立場だな。反感を買いそうだ」


生徒会室に訪れるも、誰もいなかった。することもなく、席に着き、人が来るのを待つ

空腹で気だるそうに、机に伏せて紛らわせる。支払いの為、なるべく節約生活をしているので昼は抜いているのだ

生徒会室の菓子などを勝手に食べたら危険なのでやめている

山で動物なりを狩ろうかとも考えるが、よっぽどになるまでは控えよう。支払いが終わるまで我慢

支給される生活費ではギリギリなので、働くことも考える


「寝よう。寝て忘れよう。時間は過ぎてくれる」


机に伏せた状態で、仮眠をとろうとした瞬間、生徒会室の扉が勢いよく開いた

足で蹴り開いたようだ、態度が悪い

ダルそうに顔を起こすと、そこにベルガヨルがいた


「よう、モトキ!俺様だぁ!」


ネフウィネとの一戦から、Master The Orderの誰かと会うのは久方ぶりな気がする。タイガも含め

いや、本来なら一般生徒が軽々しく関われる者ではないのだが


「聞いたぞ、ネフウィネをぶん殴ったそうだな。良くやってくれた。いやー、胸がスカッとするぜ。ざまぁみろ、バーカ!」


一人勝手に盛り上がる。モトキは聞き流すつもりでいたが、おかしい部分に気づき、ベルガヨルに訊ねた


「誰から聞いた?郊外へは秘密にされてるはずだぞ」


「タイガから。ネフウィネのやつ、タイガには話したようだぜ。ワザと校内に言いふらしはしたいが、さすがに俺もタイガも弁えはあるからMaster The Order内だけだ。モトキにも迷惑かけそうだしな」


「他を蹴落とすなりは個人の自由だ。それに、俺も加わるか、やめろとそいつを止めるかだな」


「モトキは関わったことあるやつにはお人好しだから止めるばかりに動くだろ」


生徒会長の席に座り、「誰か烏龍茶」と頼むも、メイソンとライリーがいないことを忘れており、「あっ」と思い出したかのような顔


「烏龍茶はないが煎茶はある。淹れようか?」


「悪いな。手間掛けさせる」


「よっこいせ」と発しながら立ち上がった次の瞬間、ミナールが静かに生徒会室の扉を開き、現れた

露骨に嫌な顔になったベルガヨルに、彼女は睨む


「ネフウィネさんはいないようね・・・!」


「用があるなら来るのを願い待っておけ、今日は学園に来てるすら怪しいからな」


「いないなら、いないで構わないわ。あんたよりも、ネフウィネさんのことは知っている」


ベルガヨルを無視し、彼同様に他の役員が普段座る椅子に勝手に腰を下ろす

何をしにきたのか、彼女に訊くつもりはない

用意する茶が1つ増えた


「茶菓子を出してやりたいが、生徒会室のは勝手に食べたらネフウィネさんにぶちのめされるからな」


盆には熱い茶を注がれた3つの湯呑みを乗せ、ミナールとベルガヨルへ運んでから最後に自分のを掴み、盆は適当な場所へ置き、席に着く

一口つけてから、彼女が口を開く


「あんたが生徒会にこき使われることとなったと耳にした時は、あいつ、また厄介に巻き込まれたのかしら?と思ったけど、先に来たのはネフウィネさんと戦闘になった情報だったから驚きは薄れたわ」


「モトキも災難だな。ネフウィネと闘ったあげく、被害費用の一部支払い。大半は向こうが持ってはくれるが、財力が違う」


「まぁ、しばらく切り詰めた生活をしていれば払えない額じゃない。今は途方もなく感じるが」


腹を茶で満たせたらいいなと浅い期待。なるべく満腹中枢を刺激する目的なのか、単に熱いだけなのか、ゆっくり茶を飲む


「なぁモトキ、その請求書を持っているなら見せてくれ」


「あぁ、いいぞ」


請求書はいつも懐に入れている。現実逃避をしない為、どれぐらい返済できたかを実感する為

金額の書かれた紙をベルガヨルに渡し、彼はそれと数秒睨めっこ


「これぐらいならモトキ、しばらく俺の元で働いてくれれば、肩代わりして・・・」


何故か突然、ベルガヨルをミナールが蹴り飛ばす。着地時に足でブレーキをかけ、勢いを殺すと腕を組み、モトキへ身体正面を向ける

ベルガヨルは、窓隣の壁に刺さっていた


「その請求、私が全額払ってあげるわ」


「・・・いや、俺の問題だ。提案はありがたくも、そこまで世話になれる親しい関係じゃない」


彼女はむっとした顔で、腑に落ちない様子。確かに親しい関係か?と問われれば、違うとも言えなくも、相手から全面的に否定されると、腹が立つ

少し、重く、息を吐いた。それはさておき、本題へ


「勿論、あんたに良い都合ばかりくれてやれるほど、優しい私じゃないわよ。今度行われる親交会の参加するにあたって、あんたは私の護衛役として任を受けてくれないかしら?」


その申し出に、深呼吸ぐらいできる時間、間を置いてからモトキは悩む

エトワリングの護衛を共にした者を護衛かと、余計なことも考えながら、話に乗るべきか、やめておくか


「どう?それとも、断る理由でも模索中?」


「いや・・・ミナールなら、俺が護衛に付く必要なさそうだけどな。それで護衛名目に突っ立っているだけで、支払いを肩代わりしてもらうのは申し訳というか、何というか」


「それがそうもいかないのよ。詳しいことは受けてくれれば当日に話すとして、形だけでも護衛役は居て欲しいの」


断る理由はない。モトキにとっても悪くないどころか、舞い降りた幸運の話である

悩む必要はなく、断るのも悪い気がしてきた


「わかった。できる範囲で、それらしく、頑張ってみるさ」


「ほんと!?じゃあ、成立ということで」


差し出されたモトキの右手に、ミナールは音が鳴るよう強めにその手を(はた)いた

その手を振りながら、「じゃあ、また後日」と言葉を残し、彼女は生徒会室を退室

モトキは、壁に刺さるベルガヨルを抜きに向かった


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