表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光ある概念の終日  作者: 茶三朗
参加ではない親交会
136/217

革命の息吹

夢はなかった。続いていたのは永遠の闇。痛くも、暑くも、寒くもなく。出口を探すにも意志では歩めず、長く長く、その闇を眺めていただけ

退屈も、狂いもしなかった

それが当たり前と思えていたから

しかし、その闇は終わりを迎える。ただ眺めることしかできなかった景色は、手術衣に身を包んだ者達の顔となる

目を、覚ました。最期に目を閉じる前に見た光景は覚えている。それが脳内を走った

鼻を刺激する血の匂いがする。状況を呑み込めず、まずは周囲確認が為に体を起こす

手術衣を着た者達が、退がった


「寒いな・・・」


最初の一言が寒さの訴え。それもそのはず、自分は衣服を着ていない丸裸

しかし、久しぶりに体感を感じた気がする

辺りを見回そうとし、真っ先に目が入ったのは自分と同じ台が3つ並べられ、それぞれに胸を開かれた死体が乗っている

こやつらが着ている衣服、台から手術室なり医療関係の場所と把握

ならば、自分は治療されたのか?何故?誰が?最期の記憶からして、頭が痛い


「俺は、助けられたのか?国と国に危険視され、裏切られ、友に討たれた俺の助かる意味は果たして・・・」


足音が聞こえる。もう、警戒などをする気もないのか上の空となっていた

独りによる拍手が聞こえる。手術衣を着た者達がより退がっていく

興味もないが、その音がする方へ顔を向けた


「よくぞ、お目覚めになられてくれました!」


こいつは胡散臭そうなやつだと、露骨に関わって欲しくない顔をする。現れた男は、「おっと、お気に召さない挨拶と歓迎だったようで」と、その場で立ち止まった


「ここは何処だ?貴様は、貴様らは何者だ?俺なんかを助けてどうする?」


これまでの経緯と、最期が頭に巡り、ふつふつと怒りがこみ上げてきた。その怒りは、衝撃となり、周りの機材や人、手術台の死体等を吹き飛ばす

メスなどの道具が、吹き飛ばされた人に刺さる

唯一吹き飛ばされなかった胡散臭そうな男は、黙って様子を見守るだけ

男は、黒髪を掻き毟る


「落ち着かなくても結構です。いつまでも待ち、周りの被害もお気になさらず。ですが、会ってもらいたい緒方がいます。その緒方には、なんとしても対面していただきます・・・」


「・・・その、俺と会うべきやつが俺を助けたのか?」


意外にも早く、落ち着きを取り戻す。今は状況整理を先決すべきだろうと、我に戻った


「いいえ、助けてはおりません。あなたは一度死んだ身・・・最期に覚えのある景色、あれは確かな終わりですよ、ハルカゼ殿」


自分の両手を、何回か握り、開く。夢ではない、死んだはずの自分は生きている


「生きている。生き返った。そうか、俺の命の息吹が戻ったか!」


「あっさりと、自分を受け入れなさるのですね。もう少し、動揺と混乱で、手がつけられないを覚悟していましたが」


「生き返ったなら、生き返ったでしょうがない。自殺するつもりはないからな」


左手首を回し、何かを企む顔。紅の瞳は怪しく輝いた

独り、不気味に笑い始めたハルカゼに、男はワザとらしく咳を一回してから声をかける


「目覚めて早々、このまますぐお会いするよりかは間を置きましょう。何か、お口になさいますか?」


「そうだな、腹は空いている。カステイラとブレンデッドのウイスキーを所望したい」


「承知しました。衣服類もこちらで御用意いたしますので、まずはそれを着用されてからですね。少々、こういった場所で申し訳ありませんがお待ちください。急ぎ参り、戻りますので」


「あぁ、お構いなくだ。死体転がってるぐらいの場所で休憩とか何度も経験している。まずは逃げるかもを疑うべきだがな」


男は苦笑いを残し、急ぎ部屋から退室。残されたハルカゼは手術着を着る気を失った者、手術道具の刺さりどころが悪く絶命した者、胸が開かれた死体を一度見渡し、腕を組み考えてみる

本当に生き返ったのか?身体に支障はないか?手術台に立ち、手のストレッチから屈伸運動を数回、そして自分の股間を握ってみた。反応はあった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ