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光ある概念の終日  作者: 茶三朗
Master The Orderの中芯
119/217

Master The Orderの先頭位置 10

鈍い音と共に、両手剣が手から弾かれ宙を舞う。左手首の骨が粉砕された

治癒が始まる前に彼女の右手がモトキの首を掴み、左手は舞い上がったモトキの剣を指さす

剣の運動エネルギーを操作し、これ以上の上昇を止め、落下をさせず空間に固定

頭から地へ叩きつけ、地盤を削るよう彼を少し引き摺ると1度頭を浮かし、再度撃ちつける


「モトキ君っ!」


彼の名を呼ぶ声でネフウィネは一時ピタリと止まる。なんてことはなかった。モトキの顔に剣でもぶっ刺そうかと、空く左手に宝剣を出現させ、剣先を顔に向ける

近くまで来てしまった、来られてしまった。戦闘中の2人を前にして「会長!もうやめてください!」とアオバ叫ぶも、言葉は聞こえてはいるが当たり前か受け流すだけ

奥底ではわかっていただろう。自分の訴えは無意味だと、だがそうするしかできない

剣の突きが放たれた。アオバの叫びは「モトキ!」の一言。それが聞こえたか最中ではないが、彼の目がより見開く

突き放たれた剣はモトキの顔を貫かず、剣先は歯で噛み止められた

ネフウィネは笑う。現状良くできたと、だがやはりおかしな阻止の仕方である


「タイガとは違った面白く、笑える様を見せてくれる!」


掌底突きで剣を押し込もうとしたが、仰向けの体勢から蹴り上げを行なってきたので腕を使い防御

首を横へ振ることで、歯で挟む剣を吐き出すように放り捨て、蹴り上げの勢いのまま後転で起き上がる

起き上がった瞬間、親指を軽く添えた拳で薙ぎ払うもネフウィネは飛ぶように大きく後退


(あの蹴りが来る時、あたしの視覚認識より一時だけ急速に速くなった。咄嗟にガードに切り替え正解だったかな?)


ネフウィネの目には一瞬だけ、彼の膝から足首にかけて光を帯びたように見えた。いや、帯びたというよりは一部が光化したとでも言うべきだろう錯覚なはずがない

あのまま掌底を撃ち込むよりも蹴りの到達の方が早かっただろう。ほんの僅かな時間で行った判断は腕を使った防御。蹴りに対し、その足へ掌底の突きを撃ち込むのもありだったかもしれないが、最善だったかはどうでもいい。やられちゃいない、まだ途中経過

やはり、再度最初の生徒会室からの時と比べても人が変わったようだ。独自の捉えだが、属性エネルギーではない深く深くに潜む闇と、邪悪さを感じる

そんな彼の背後から近づき、肩に手を置いたのはつい先程、自分が痛めつけた大きなバックパックを背負う女性。彼女は上空に固定された両手剣を指さした

その後方で、アオバが出遅れたか、どうすればいいのか、どちらかだろう慌てふためく顔


「モトキ。あれ、あんたの剣?」


モトキはチラッとクローイが指さす方に目をやるが、すぐに視線は強大なる威圧を放つネフウィネへ


「さがってろ。お前から標的が俺になり、まだ終わりじゃない」


「みたいだね。すぐにさがる」


アオバの隣ぐらいの位置に戻ると、バックパックより鞘に納まる一振りの剣を取り出した


「これを!ウインドアーチがより、あんたの手で戦うことを望んでいる!」


クローイより投げ渡されたのは、昨夜に自分を所有者にしたいと望んでいるらしい、今世に五聖剣の内の一振りと伝わる破天聖剣・ウインドアーチ

モトキの手に渡り、柔らかな風が鞘にある数個の小さな穴へ吸い込まれていった。喜びの表現だろうか?


「ウインドアーチ・・・デバミベレの愛剣か。彼女を題材にした演劇は2回観たことあるけど、あたしにはつまらなく、公演中ずっと寝てたっけ」


劇には興味なかったが、ウインドアーチの実物には興味がある。奪うのは癪だが、モトキとあの女を始末してから手にしてみるのもいいだろう

彼女は剣がモトキの手で戦いと言っていた。彼の使う両手剣は上空に固定されている今、武器として使用するには好都合だろう

その剣で戦うのか?と思われたが、モトキから鞘から刃を1ミリも覗かせることもなく、ウインドアーチをクローイへ投げ返してしまった


「え!?」


戸惑い、それ以上のリアクションが出なくなったクローイに、「不要だ」とだけ告げた

モトキの右手には盾を、左手にあるのは自分の肉体。拳を握り、ネフウィネへ突き向けた

アオバは、今の2人の心情がなんとなくだが解ってきた。やめてくれるのが1番良い、モトキが死んだら後で後悔するだろう。けど、止めれるか止めれないか、どうしようもないも関係なく、割って入り止めたくない


「あの剣の名が出る劇のファンから袋叩きにあいそう。意地でも、使う剣は一度折れたであろう剣。そういう良い馬鹿の精神、嫌いじゃない。だけど、だからって返したりしない。あたしの手段でやったことだから。戦闘は別。安心して、貴様を始末したら、次はその女の息の根を止めてやる」


「一体全体、何を安心してお前にやられりゃあいいんだよ・・・」


仕掛けたのは、モトキからだった。盾の面はこちらに向け、左拳を引く。握られた拳の内より光が漏れていた

ネフウィネの足底から青緑のオーラが全身へ。拳には拳か、剣で迎えるか、属性エネルギーを駆使するか、避けるか、カウンターか、能力を使うか

先程の運動エネルギーを操作した際、効かなかった場面がある。あれは自分のミス、彼の力によるもの、ただの偶然。その確認の為、試しをしておこう

拳が放たれる直前の運動エネルギーを除き、動きを止めるはずだった。しかし、それよりも前に拳が炸裂。遅れてパンッッ!!と破裂音に似た音が空を響いた。彼女に細い光の線が抜け、目に見えて胸部前に殴られた衝撃が白の光として生まれた。身体中の空気と数滴の血を吐き、目で追いつけないスピードで飛んでいく


(さっきの蹴りよりもずっと・・・!!)


彼女は体勢を整え、板石を敷き詰め作られた石畳の道に着地するが、ダメージが思いの外大きい。「がふっ!」と口から漏らし、少量の血が垂れる。一度両膝をついて落ち着きたい

あの、1回だけ効かなかった場面とはまた違う。はっきりとそれだけは分かる

モトキとの距離はかなり離されており、彼は手に余る光の力を振り払った


「やってくれる」


頬に付着した彼の血を親指で口へ持っていったあの時から、今彼女の親指は己の血を拭う


「あの速さ、戦闘内で見せていたものとは違う。属性エネルギーの光とは違う別物。魔法や術とも言い難く、あるのは能力がこのタイミングで開花したと考えるべき?だとしたら、再生と合わせ2つ持ち・・・」


彼女は親指に付いた血をスカートで拭き、制服のブレザーを破り捨て、カッターシャツの襟を捲った


「同じ施設出のタイガと同じ治癒する力を持つだけでも偶然にしろ、不思議がっていたのに。それと、途中から別の者と戦っている錯覚に襲われる感じはなに?モトキに変わりないはずなのに・・・あいつは、自覚あるの?」


モトキは、ゆっくり空気に触れるように左手を添える。ネフウィネは「くる!」と身体にグッと力を込めた


「きなよ!臆せずに!貴様のしたいように!胆嚢部位から貫き抜いてやるよ!」


ぐっと、出された左手を握り締めた。力強く拳を握り締めるタイミングを見計らい、投げた宝剣に送った白から青緑に変色する光の属性エネルギーを暴走させ、剣刃より縦長に放出

右掌より、黒紫色をした闇の属性エネルギーを細くから太く変化するビーム状に放った

しかしこの攻撃の際、もうモトキの姿がないことを瞳に映る景色は教えてくれる

彼のいた場所に、僅かな光の横線だけが空間に残っていた。モトキは一瞬で距離を詰め、拳を撃ち込む

能力を使うも、モトキの腕が白き光となり、それすらも目で捕らえれておらず、認識が追いつけない

彼女に重い一撃が撃ち込まれる

殴り飛ばされる寸前、背後に回り込まれ彼は背を向けた状態のまま盾で彼女を受け止め、押し弾く

そして繰り返すように再度回り込み、頭上より盾で叩き潰す


「なめるな・・・!」


両足を踏み込み、剣で盾の一撃を受け止めた。上からの力で、踏み砕けた石畳の破片を、その中でとりわけ大きい物を操作し、モトキの腹部に突き刺した

剣刃から青緑の光を放出し、盾が押し負けたところを一度体に回転を加えてから右手に再度、炎により形成された甲殻類の鋏で裏拳を叩き込む

火の粉と連続して炎を撒き散らし、曲線を描くように宙を舞ってから石畳に落ちた


「う・・・っ!」


立ち上がったモトキ、腹部に刺さる破片を抜いた。その傷口から煙が昇り、治癒が開始された次の瞬間、口から血反吐を吐き出す

彼自身、かなり驚いた顔


「ゲホォッッ!?」


「おやおや?」


体が重く、息苦しい。治癒はされていくが、みるみると自身の体力が削られ、いつもの戦闘時以上に疲労が現れ、実感できてしまう

その様子にネフウィネは察した


「貴様、どうやらその治癒の力を得て以降、あまり長びく戦いに恵まれなかったみたいね。初めての体験といった顔。強制的な回復を自ら行い、肉体に疲労という本末転倒が起き始めている。治癒の影響力から、タイガのように完全に扱えてるわけじゃなさそう」


彼女の手に僅かながら残り、撒き散らされた炎が鎮火した


「自分自身の体なのに、自分自身を知らなすぎる」


宝剣の柄を両手で握り、正面からモトキの身体を突き刺した。狙いは胸だったが、寸前にして彼の右腕が剣の腹を左から押し、貫いたのは右肩付近

このトドメで終わらせるつもりだった。「この程度じゃ終わりはしないか、さすがに」と呆れ笑いを覗かせ、剣を抜こうとするが、その刃を抜かせまいとモトキの左手が掴む


「抵抗するな!」


剣刃を握られた時、顔面に光の属性エネルギーを喰らわせ、首から上を吹き飛ばしてやろうとした。しかし、その言葉を言い切り、次の間の始まりすら待たずに次の瞬間、彼女の胴体に蹴りを撃ち込まれる

足首辺りから膝まで手で掻かれた霞の如く光化しており、次に右肩辺り、顎下、左腕、腹部。再度の順にその箇所を再度とまではいかないが、近く辺りの4点を繰り返し蹴り、ひし形を描くように怒涛なる連続蹴りを撃ち込んでいく。防御、躱す、反撃、運動エネルギーの操作すらさせず、目と痛みすら追いつかない

見切りをつけ、最後になるべく身体の中央となる部分へ蹴りを放った


「ごほぉっっ!!」


最後の一撃が炸裂した。だが、その勢いに離さなかった剣が抜け、自身の今から吹き飛ばされるに生じる運動エネルギーを操作し、無理矢理モトキの目前から消えるのを防ぐと、闇の力を纏った剣で彼を斬った

浅い、右肩から入り刻まれた斜線は目に映る。更にネフウィネは次の攻撃へ


「うらあぁっっ!!」


主に頭、鼻、口より垂れる血が力むことで、より出血量が増えるも、握りしめ、シンプルに青緑の光を纏っただけの拳はモトキの顔面へ叩き込まれ、そのまま押し切り、地へ沈める

轟音と共に、亀裂から青緑の光が噴き出し、戦塵と暴風が舞う


「会長!モトキ君!」


アオバとクローイは戦塵と暴風で目も開けられず、腕で顔を防ぐのが精一杯。ようやく収まるまで、そこまで時間は必要としなかった

戦塵が晴れ、ようやく姿が現れる。そこに立っていたのはネフウィネだった。彼女の近くで、モトキが地に伏せており、生きているのか死んでいるのか、それすら判らない


「はぁ・・・!はぁ・・・!ゼェ・・・!」


荒く、肩で息をする。彼女はボロボロであり、血に染められた顔や服が痛々しい

それでも、威圧のある睨みに弱りはなかった。その殺意は、明確にクローイへ


「こいつは終わった。次は貴様・・・」


クローイは腰が抜け、逃げるべきなはずなのに逃げれない。蛇に睨まれた蛙の状態

その隣で複雑な心境のアオバは、どうするべきか悩んでいた


「と、いきたいところだけど・・・それは・・・寝てから・・・かな・・・」


手から宝剣が落ち、力なくネフウィネも倒れた。何が起こったか、現実を理解するまで数秒の時間を要し、アオバは慌て、石畳に伏せる2人の元へ急ぎ走り寄る

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