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光ある概念の終日  作者: 茶三朗
Master The Orderの中芯
118/217

Master The Orderの先頭位置 9

クローイが目を覚ました。口の中は血の味がするで、唾液と混じり、それを吐き出す

ジンとした仄かな痛みが身体にあり、どこで意識を失ったかを覚えちゃいない。とりあえず手の甲で口周りを擦り拭く

少し、口からの乾いた血が付いた


「起きた?」


声が聞こえ、反射的にまだ痛む身体を無理矢理動かし、立ち上がる

声の主はアオバであった。自分がこの手で気を失わさせ、剣を奪った時の身形のまま


「趣味が悪いな!起きるまで待ち、起きたところをグサリかい?あたいも大きなダメージは残るけど、あんたぐらいなら反撃できる!」


呆れた顔で、アオバはついさっきまでクローイが引っ付くように横たわっていた店の窓ガラスに背を預け、ゆっくりと腰を下ろし、座り込んだ


「なにもするつもりはないわ。自怨はあるも、それどころじゃないみたいなの」


重い何かが高所から落ちたような音が響いた。一度数秒の間を置き、続き破壊音に地鳴りが続く

音がした方角には、視線先の上空には降下し始めた青緑の光、それへ下から猛スピードで接近する白い光

金属のぶつかり合うに似た音が大きく1回の直後、両者弾かれ合い、地に落下

再度接近し、激突と同時にそれぞれ纏っていた光が勢いよく拡散しながら散る。モトキとネフウィネの右膝と右膝が正面より衝突

2人して頭や口から血を垂らしながらも、狂気に取り憑かれたにしか見えない、口だけは笑っていた


「何故にあの2人が闘ってんの!?」


「私が聞きたい。私が起きた時、気を失っているあなたを目にして予想だけど、会長・・・ネフウィネさんのことだからあなたを必要以上に痛めつけ息の根を止めようとしたのを彼が止めたのでしょ。そして、標的を一時的に変更された」


2人の戦闘を止めれるのならばそれが最善。しかし、自分が割り込める余地がなさそうだ

モトキがネフウィネを相手に、あそこまで抵抗できている事態の驚きはもう済ませた

凄まじい音が轟く。膝と膝の激突からネフウィネがモトキの首を掴み、胴体に両膝を乗せると硬い人工地に後頭部から押し付け、両膝を使い後頭部に続き叩きつけられる胴体へ力を入れ、圧を加える

鈍い音が大きく1回、砕かれた地盤の破片はやはり舞わずに少し地から浮いた位置で停止


「水のない波乗りでもしよーっかなぁ!?」


腹部と胸部の間辺りを押し込む両膝を反作用の力で一瞬だけ跳ね、曲げていた両足の靴底へ変更し、踏みつける

勢いもつけず、モトキを板代わりに地盤を削り進むが僅か5メートル程進んだところで突如として引っかかったように止まり、彼女は「あれ?」の言葉を残し飛んでいってしまった

咄嗟にネフウィネは現在進行形で飛ばされる運動エネルギーを取り除き、空間を蹴るようにして起き上がったモトキに頭から突撃

彼の右腕が、それを受け止める


「貴様を叩きつけた際に砕け舞うはずだった地の破片の運動エネルギーを移し替えたけど足りなかったみたいね!」


モトキは受け止めからのカウンターとして、右足による上段回し蹴りを放つ

彼女は体勢を変え、身軽な動きで回し蹴りを容易に躱す


「タイガと同じことするね」


躱しすぐ、回し蹴りを放った足の運動エネルギーを消し、恰も全身を固定したかのよう動きを止めた

剣で彼の額をペチペチ叩き、可愛らしいことをしている見た目に反してモトキには悪寒が走る

ほぼ未来が見えたに等しい確定の予感、一刀両断ではなく、鯵のひらきにされてしまう


「抵抗は終わりかよ貴様。むー、なかなかの肉食動物同士の喰らい合いだった。カスなMaster The Order共よりよっぽど・・・あたしの学園生活を豊かにする火種になりそうだから命を狩るには惜しい存在。けど、首に深く噛みついた獣はあとは食事の為に牙を離す真似はしない。というわけで、これで死ね!」


動け動けと心奥底では叫ぶも、何かで拘束された場合に体の皮膚が裂け、筋肉を千切れさせ力づくで無理矢理抜け出すといったことができない

もしできるなら躊躇いなくやる

腕に足に力を入れるが、まるであるはずなのにないような、微塵も動かず

ネフウィネが剣を振り下ろす直前の「というわけで」の場面、向ける眼はまずい、やめてを訴えるのではなく、殺意に満ちた睨みであった


「くどくなった」


小さく呟き、その言葉は彼女の耳にも確かに届く

そして突然の事である。躱され、蹴りの最中のまま、止まっていた足が動き出す

その足を勢いのまま引き、右手が振り下ろされた剣刃を掴んだ


「な!に!?」


何故動ける?能力を解除をしたつもりはない。それとあの呟きの時、彼が一瞬だけ同じ人のはずが、別の者に見える程の錯覚

刃を握る手からは血が滴り、伝って彼女の手にまで

握られた左拳には光の力を、認識より先にモトキの目前からネフウィネは消えており、拳に残るは殴った手応えの感触


「なにするんじゃーーっ!!」


しかし彼女は殴り飛ばされてから猛スピードで戻り、モトキへ仕返しとばかりに拳を撃ち込む

「あれ?」と、左頬から殴られたモトキは上空へ


「星になれよ!!」


瞳は上空へ殴り飛ばしたモトキを補足。運動エネルギーを操作し、急停止した彼はネフウィネ目掛け、逆戻りするかのように急降下

大きく踏み込み、高く跳び上がると迫るモトキへ右足の靴底を向ける


「蹴り抜け!」


突き出した足の靴底が熱を発し、帯び、赤と橙に染まったかと思えば青緑色へ塗り変わった

風圧により、靴底に帯びた青緑は放射状に拡がり彼女の周りを通過していく

こちらへ迫るモトキに蹴りが炸裂した。青緑の光が空間に亀裂を刻むかのように広範囲に拡がる

しかしネフウィネ自身、何やら不満気な顔。靴底はモトキの胴体にではなく、右腕に阻まれていた

彼の左手は相手の足首を掴む


「2回目の失敗。すんなりトドメを受け入れなよ!」


「すんなり命を諦める必要もなかっただろ」


彼女の足を掴んだまま、1回のスイングを行い力任せに上空から地面へ投げつける。頭から地へ落下する間、ネフウィネは腕を組み険しい顔

彼女は考える。モトキの運動エネルギーを取り除いたはずなのに、突然動かせたのかを。また、気のせいかもしれないし、彼のことをあまり知りはしないが人が変わったかのような、モトキ自身ですら知らない本性の現れだろうか?


「って、このまま地盤に激突なんてしてられるか!諦めないなら、諦めずに死を迎えなよ!虚しく終われ!」


運動エネルギーの操作は行わず、速度も落とさず右膝と左の足裏が同時に着地した。地盤を砕く轟音に、地中奥底の土が盛り上がる

隕石の如く、たった今舞い降りたかのよう


「さぁ、ラストタイムといこうじゃない!モトキよぉっ!」


モトキが50メートル先に降り立つ。右手に盾、左手に両手剣を握り、剣の刃で根元から盾の面を一度擦り、火花を散らしてから走り出す

ネフウィネは背の鞘を手にし、片方の手に持つ宝剣と共に宙に投げ、光となり消すと再度背に出現させ、剣を抜いた。彼女は走らず、剣の柄を両手で握り、迎え撃つ構え


「災抑・光一閃!」


跳び、剣刃に膨大な光が纏う。光の剣先は地に刺さり、裂きながら猛スピードで進行

ネフウィネとの一定距離まで迫ると、剣を振り上げる。彼女はそれを自身の剣を振り下ろし、受け止めた


「ふん!甘いね!モトキ君よ!」


「斬れずとも良い、甘いのはお前だ!」


剣刃に纏う光の力が増幅され、押す力も急激に増す。押し負け、剣とネフウィネは吹き飛ばされてしまい、猛スピードで何度も地に叩きつけられながら転がっていく

モトキが剣先で地を斬り進み、斬り上げた場所には更に大きく、抉れた斬撃痕。そこには白き光が残る


(エモンの技じゃない)


転がり体勢を立て直した彼女は、口から垂れた血を拭い、宝剣の刃を軽く叩いた


「タイガはエモンとの師弟関係を否定してたけど、一部の技を真似するあたり、戦いには離れた環境で、戦う知識や技術を得る為に我武者羅に必死だったのね」


3本の刃が並ぶ剣身、その中央刃のフェラー部に剣先から黒紫、薄い青、緑、紅、白の5色の小さな輝きが間隔を置き連なる

右手に握った剣を大きく振り、灰色の砂塵を巻き上げ、彼女の横で剣を水平に保つ

目を細めたモトキは、剣先をネフウィネへ向けた


「事情も理由も知らないくせにこの女は、わかってるよう口を利くな、か。ただの警戒か。ただの警戒だろうね。怒りはなく、戦意がある」


剣先を向けた状態のまま、モトキは右手の盾を投げた。高速回転しながら進む盾より、凄まじい暴風が発生

風で髪や制服が靡くネフウィネの表情は取り乱しがなく、こちらへ倒れそうな、斜めに大きく歪む竜巻を叩き斬るように剣を振り落とす

巨大な黒紫が、振られた剣と共に飛ぶ斬撃としてはなく、バケツに入った大量の水をぶちまけたかのように拡がる。感じるは闇の属性


「風には風と風流な真似をしてほしかった?」


聞こえちゃいない。竜巻に黒紫が混じり、互いに押し勝とうと力が膨れ合い、爆ぜ散る

大きな衝撃も余波も生まれず、少し強めの生暖かい風が2人に触れた


「戦闘手段を変える。体術に、剣を振り、運動エネルギーの操作に、これより扱える属性エネルギーの種を使っていく」


風に触れ散り、空間へ僅かに残る闇の力をネフウィネは自身の目前に集め、一点に凝縮。紫の煙を漂わせる小さな黒い球体となり、それへ中指を使い、デコピンの要領で弾き放つ

ゆっくりとしたスピードから、途中より急激に速度が上がる。モトキは剣で斬り落とそうとするも、直前にして巨大化。少年は一瞬にして闇の中へ沈む


「闇に沈まないでよ!」


剣の腹に並び輝く5色の内、黒紫が消えていた。黒紫があった位置の下にある薄い青の輝きを人さし指で刺し、ほじくると指先に

青の輝きが増す。狙いは強大なる闇へ

放たれたのは水。細く、レーザー状に、闇を貫く。闇の内部より亀裂が入り、そこから水飛沫が溢れる

闇が砕け散る。その中よりモトキが姿を現わすが、水は彼の左胸下辺りを貫いていた


「ぐほぁっ!!」


「んー?心臓ギリギリかな!?」


ドサリと音を立て落ち、一度は両手両膝を着きはしたものの、奥歯を噛み締め、立ち上がる

左の胸からは少しでも力むと鮮血が水の入った袋を鉛筆か何かで刺し、ゆっくり抜いたあとのように飛び出てしまう。痛みは、それどころじゃない

モトキの右手は貫かれた箇所へ触れ、指を立てると抉りそうな力量で掴み、「ぐっ!うっ!」と口から漏らす。手を離せば、傷は治癒されていた


「やっぱり水の属性エネルギーは圧縮させ、水圧で斬ったり、槍や弾丸みたいに貫かせるのが1番ね。あたし好みにやると。ミナールと闘ったことあるな、どう?お味は全然違うでしょ」


返答はしない。まだちゃんとしたミナールと手合わせはしておらず、ここでうんと首を縦に振るには材料が少ないからだ。一般の学生だという理由と、あの頃はタイガをあまり良い目では見てなかったらしく、嫌がらせのつもりの戦闘。こちらも最初は捌いて躱し、逃げるばかり。運が良かったとも言うべきか、まだ治癒する力がなかった時であり、あの程度で済んだのは

握った右拳に、光の力を灯す


「貴様の扱える属性は、確認できた限り風と光の2種みたいね」


「できた限りが全てだ。その2つだけなんだ、俺」


「僻むのはよしなよ。1種だけや、使えない輩もかなりいるというのに。ちなみに、あたしは6属性使える」


「多けりゃいいってものじゃない。と、言いたいが、ネフウィネさんは胸張って自慢をして結構」


彼女の剣にある緑色をした輝きは、親指で押し潰すと刃や柄に触れれば弱々しく、抵抗なく消える小さな弱風から、吹き荒れる旋風へと急速に変化


「これはわかりやすく、風の属性」


彼女からこちらへ向かい風となり、吹き抜け始めた強風の中、剣を縦に振り、地を裂く。振られた剣により、迫る裂け目からは強大なる凄まじい暴風が吹き出した

モトキはぐっと引いた白を纏う右拳を突き出し、光の力を放出。光は地盤ごと抉り、地の裂けと風の進行を阻む

これでどちらかが押し負けるのだろうかと考えようとしたが、ネフウィネはあっさりと風の力を解除。真正面から炎を宿す拳による薙ぎ払いで光を裂き、突破するとモトキの目前へ飛び出してきた

懐へ潜り、握ったままの拳に再び炎を宿す。炎は巨大な海老か蟹か甲殻類の鋏へ形成

それをモトキへ叩き込む


「ドウワッ!!」


巨大な炎の鋏による一撃に叩き潰された。だが、ネフウィネに仕留めた手応えはない

大きくヘコ地盤に沈むモトキは炎の鋏を片腕で防ぎ、左掌には風を凝縮


「風を呑み込め!」


頭部より少量の流血で顔に赤い線を描かれたモトキは、炎の鋏を防いでいる状態から、力任せに片方の腕を伸ばす。左手の風をネフウィネの口辺り目掛け放つなり、押し付けるつもりだったが、彼女の背の鞘に収まる宝剣より雷が発生し、幾つもの稲妻が槍で同時に突き刺すように前方から襲い、彼を吹き飛ばした

鋏を形創っていた炎が消え、彼女はその右手を一度握り、開く


「かなりエグい現場となりそうな殺し方をしようとしたね、貴様」


身体に絡みつくように帯電し、走る稲妻を全身に力を入れ、弾き消すと両足で地を砕き蹴りながら着地


「あたしの内臓に肉片を飛び散らかすつもりだったでしょ。ま、されたとて貴様が先程、雷の属性エネルギーにしたのを真似て逃れたろうけど」


炎の鋏を防いだことにより、服の腕から袖にかけ焦げており、火傷もしている


「蟹の鋏を叩きつけられた時は咄嗟で腕を使ったが、盾にすればよかったなぁと改め・・・」


「は?蟹?貴様・・・蟹だと?あんな素晴らしい海老の鋏が蟹に映ったのか貴様!そのまま焼かれればよかったのに」


「やべぇ、よくわからんが地雷踏んだ。あれが海老の鋏だとするなら、ザリガニ下目のやつだな。ガニって生物名に付いてるけど」


彼女は怒る。地団駄踏みながら

そしてすぐに冷静さを取り戻し、「蟹は嫌いなの」と呟く


「朝食前だったからお腹が空いてきた。終わったら海老を使った料理が食べたい、ロブスターかセミエビの気分。食べるのも好き、適当な棒切れを拾い糸とスルメかニボシを結んでザリガニやテナガエビ釣りをするのも好き。海老は良い、人生を豊かにしてくれる」


好物1つで人生に豊かな彩りを加えれるなら幸せなことはなかろう。そう考えながら「そっか・・・」と、素っ気ない態度

なんだかそれが気に入らない。納めていた宝剣を鞘から抜き、その剣の腹にはまだ白の輝きだけ残っていた


「光が出迎えるぞぉ、モトキ」


剣を右手に駆け出す。跳び上がり、モトキに斬りかかると同時に、彼女の周りには先端が細く尖り、燃えるような青緑を纏っている白く発光する棒状の光が幾つも出現。斬りかかるネフウィネの剣に対抗しようと、剣を斜めに斬り上げるように振り始めたモトキへ一斉に槍の如く一撃を放った


「やってみろ」


いつのまにか第一印象の彼に戻っていたが、また人が変わったような瞳。威勢は良い。モトキは計10本の光の剣を展開、彼の剣とネフウィネの剣の刃と刃が火花を散らし、光の剣に加え右手に出現した盾による強力な一撃と衝撃の余波により光の槍を砕き消していく

全ては破壊できず、数本は外れたが4本がモトキの身体を貫き刺さった

右胸、腹部に2本、左膝へ突き刺さる光の槍を抜くより先に、彼女の胴体へ右拳を撃ち込む


「がほっ!」


瞳孔が縮小、険しい顔、背中から抜ける撃ち放たれた拳の一撃は空気を歪ませる。それでもネフウィネは、攻撃時に外した光の槍の2本を両手に戻し、モトキを蹴り飛ばすと一気に詰め寄る。一瞬にして両手に握った2本の光の槍でモトキを刺し、斬り抜けた

右手に持っていた方の光の槍は先の攻撃で刺した右胸のものへ上下並ぶように刺さっており、体に刺さる4本の光の槍にもう1本追加

彼の返り血が彼女の右頬にベトリと付着、それを親指で自らの口へ持っていく


「ぐっ!シンプルにつえぇっ!」


斬られた左胸から背にかけて青緑の炎線が残り、すぐさまモトキは刺さる5本の光を抜きにかかる。痛みを最小限にしようとゆっくり抜いている暇はない

思い切りをつけ、まずは右胸の2本、次に腹部の2本、最後に左膝のを声を挙げずに抜き、握り潰す

着地の際、両手には剣と盾を。ネフウィネへ視線を向けようと振り返るが、彼女は距離を取っており、周りには火、水、風、雷、光、闇の属性エネルギーがそれぞれ1つの塊として浮遊していた


「どれで死ぬかな?」


6つの属性が異常なスピードでそれぞれ大きな曲線を描き、モトキという1点へ

光の槍で貫かれた箇所からの体に力を入れようとする毎に漏れる出血が激痛と伴う中、盾を投げ、再度光の剣を展開、剣を上段に構える

投げられた盾は風を纏い、竜巻を起こすと同じ風と炎を巻き込み、展開された10本の光の剣が雷と闇を集中的にめった刺し、残る水と光へ、光を帯びた両手剣でバツ印を描くように振り、斬り裂いた

光の斬撃が、空間にバツ印を刻む


「やはり生存の保証は自らで作り、手にすべき。やるぅとあたしはタイガ以来の学園内で手応えある相手に巡り逢え、恐怖とも取れる嬉しさがある。SecondやThirdをボコボコにした時は、途中から無抵抗で相手は何も悪くないのにあたしに謝り、命乞いをしてきたのに貴様はまだしてくれない。最後までするなよ」


投げた盾が、彼女の背後より迫っていた。そんなものはとっくに気づいており、体を反らし、躱すも反らし過ぎて頭をぶつける

ぶつけたところを撫で、背にある鞘の底を踵で蹴り、飛び出した剣を手に


「人は夢や目的があれば強さへの磨きが違うとよく言う。あたしは学園生活におき目的も目標もない、それも楽しい。そんなやつの一発一発は、はたして夢や目標、信念を持つ者より緩いかどうか」


彼女の気配として漂う強大な力が、モトキの警戒と戦闘本能を刺激する。手に盾が戻るも、それを光の粒子と化し消し、両手でしっかり、両手剣の柄を握った


「経歴も、境遇も、信念も、夢も関係なく、強いやつは強いさ」


「そうだね・・・」


数秒の間を置いてから、2人は小さな笑みを覗かせた次の瞬間、両者は叫び、距離を詰める

白と青緑の尾を引く光は激突し、剣と剣の一撃が空間に衝撃の波を走らせ、刃と刃の接触部より真下と真上へ切れ目を入れたかのように光の線が刻み、地と天を裂く

力と力が爆発し、激突直後すぐ、2人は弾かれ吹き飛ばされてしまった。吹き飛ばされる最中、ネフウィネの視線はモトキへ

彼の運動エネルギーの操作を行い、急停止させると瞬時に近づき、真上から右足で踏みつけ落とす

足底から彼の感触はなくなり、轟音と共に叩きつけられたところへ剣先を真下へ。口からは「くたばれ!」と叫んでいた


「・・・!」


すぐに起き上がった時には、剣先が寸前にまで。咄嗟に右腕によるガードを行うも、刃が貫き腹部上部へ深く刺さる。苦痛の悲鳴もなく、モトキの左拳が彼女の右頬から撃ち込まれ、殴り飛ばす

殴った手で刺された剣を抜こうとするも、光となり消え、片膝からの着地で体勢を立て直す彼女の手へ

モトキも近くに落ちる剣を手に

睨み合う間も、会話もなく、同時に攻撃に掛かる

ネフウィネの重く、速く、身軽さを活かした猛攻にモトキは捌きながら間に攻撃を入れるが流し、躱されてしまう

彼女は次の一振を見計らい、3本並ぶ刃と刃の間でモトキの剣を捕えると、彼の左手首に下からの蹴り上げを放った



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