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光ある概念の終日  作者: 茶三朗
Master The Orderの中芯
117/217

Master The Orderの先頭位置 8

モトキの盾へ一直線のドロップキック、到達する僅かな間に蹴りを放つ際に発生した衝撃で彼女の通過する周りに嵐が去った如く被害が及ぶ

左右の靴底が盾に真正面から接触。鈍さ混じりの凄まじい一回の轟音、モトキの髪に全身の影が逆立ち、少しの後退。両足を踏み込み堪えた

その余波がモトキを突き抜け、遥か後方まで突き破り、建物の壁等を広範囲に崩壊させる

これで終わりのはずがない、更に両足を軸に回転を加えると、髪色と同じ橙の螺旋が彼女の全身より生まれ、足底を先端として彼女自身がドリルのような様になり、盾と靴底より火花を散らす

徐々に、モトキは押されていく


「させるかよ!」


盾の面が白く発光、光の属性エネルギーを放射状に放つ。ネフウィネは光に呑まれた

光より彼女は、高速な後方宙返りで飛び出し、ドロップキックの際に壊れた木製テーブルに着地

片足だけでバランスをとりながら壊れ、裏返ったテーブルの脚に立つ


「いいねぇ。抵抗され、殺し甲斐が出てきた。昆虫の狩りのように、捕まった虫は食われ始められたとしても、暫くは暴れ、逃れようとするもの」


短い静かな「くくっく・・・」の一笑い後、背に携える剣の柄を握った。斬り払う動きで鞘から抜き、剣先は空間に青緑色をした3つの斬跡を残す

獣に鋭い爪で引っ掻かれたかのような空間に刻まれた斬後は、斬撃としてモトキを襲う

同時にネフウィネとの距離を詰める為、走り始めた彼のところに迫る3つの斬撃。1つ目は姿勢を下げ、頭上を通過させ躱す。瞬時に2つ目は盾で防ぎ、受け流し、最後のは左手に出現させた両手剣で斬り伏せた

ネフウィネは「素早き流れ作業ね」と、一歩間合いの距離にまで迫るモトキに投げかける

その彼が左手に持つ剣を横目に、あれからは殺意がないと感じ取ると自らの剣で薙ぎ払いを行う。モトキの両手剣が、咄嗟にそれを防いだ


「殴り蹴るばかりは終わり。これより、剣を手にさせてもらう」


「長引けば長引くほど、終わりの来る様子がないな」


もしかすれば、いずれ飽きたりしてやめてくれると信じながら大きな反撃はしてこなかった

しかし、彼女に収まる気配はなさそうだ。少しずつ、戦闘意欲を上げていく。相手も、自らも

両者、剣の持つ手に力を入れる。刃と刃が掠れる音、少量の火花が散り、頬や手に飛んでくる中、ネフウィネから剣を引き、大きく後ろへ後退

モトキからの気配が変わり、胸に高揚が生まれる


「狩られて終わる弱き草食動物から、抵抗する草食動物となり、これより肉食と肉食の食い合いが始まる」


右足の靴底は堅い地盤を踏み抜き、砕かれ、舞った破片は空間に停止。落下ではなく、宙へ舞い上がる為に個々の物体に生じる運動エネルギーを止めた

両手で握った剣の刀身を頸辺りにまで持っていき、少し上半身を捻った構えから、大振りに剣を一振るい

激しい風圧が発生し、空間に停滞していた地盤の破片が無差別に周囲を破壊していく

無数の破片が、目で捉えるすら困難な程のスピードと、鉛玉以上の威力で主にモトキへ暴風に巻き込まれ迫る中、彼もまた、剣に竜巻を帯びさせ、剣を振った

白く、鮮明に映る風が、モトキを守るように荒くなり、破片をより細かく砕き、軌道を変え、ネフウィネが発生させた暴風を相殺


「涼しい風が吹くのに、心臓奥から熱さが脈打つ」


彼女は学園制服のブレザーを脱ぎ捨てた。カッターシャツが靡く。そして勢いをつけ、1テンポ踏んでから剣をモトキ目掛け、投げつける

単に投げるだけの攻撃か?その腕と手の動作、投げた剣に起こる運動エネルギーによる何かか?モトキも、彼女が投げた剣に向け、盾を投げた


(パンチやあたしのタコ殴りを抑止した時から、彼の利き手は右だろうけど、利き手に盾を、その逆に剣を持つスタイルは今時珍しい)


投げた己の剣の速度を増加、相手の投げた盾を停止。盾を掠め、彼女の剣はモトキの左肩上を触れる寸前で通過。剣はすぐ後方の地に刺さった

スキップ混じりの駆け足で、動きを停止させた盾に近づき蹴り返す。それには仕掛けをしなかった、勢いの余波を残し、モトキは戻ってきた盾を掴み捕らえる

彼女の足は止まっていなかった。スキップ混じりは捨て、気楽さなどない走りで一瞬にして間合いを詰めると一旦止まる様子もなく、全身より激しく流動する膨大な青緑色の光を帯び、突撃

盾を手にした直後のモトキは視界から消えた。遠くの方で爆発に似た轟音が響き、細かな破壊片と煙が上がる


「また追いかけっこかな?」


地に刺さった剣を拾ってからモトキを追いかけようとしたが、轟音の直後に再度轟音が響き、彼が吹っ飛んでいった経路を戻るように、こちら猛スピードでこちらに向かって走り迫るモトキの姿があった。身体の後ろ半分が光になったかのように映る

「おや」と呆気に取られることもなく、彼女はモトキに指先を向けた


「戻ってきたぞーーーっ!」


息を呑む間も無く、彼は自分との距離を詰めるだろう。彼女はその少なすぎる時間を余裕な姿勢を崩さず、やると決めたことをやる

先程モトキを吹き飛ばす際に親指で行なったものと同様に、運動エネルギーを凄まじい物理エネルギーに変換し、放出する攻撃手段として、彼へ向けたこの指先から放ち眉間を撃ち抜こう

目には見えない、色もない。だが空間にはハッキリと力の存在が刻まれる

眉間を撃ち抜けば即死か、はたまた暫く苦しみ悶えるか、再生するか。ネフウィネ的には最初よりも後者の2つのどちらかが望ましい

モトキの本能が察した。親指を突きつけられた直後に、突如として襲った強大なる力によって起こった惨状がフラッシュバックした

だが速度は落とさず、盾を消し、右の掌に光の属性エネルギーが現れそれを握る

見える、彼女の指先より放たれた凄まじい威力を生むものに変換された運動エネルギーが。余波で空間に残る刃物で容赦なく刻まれたかのような跡

迫るそれに目掛け、真正面から拳を放ち迎え撃つ


(逆鱗パンチ!)


一線の白閃光が走り、白き光は液状に飛び散る。一面に貼られたガラスの一点に速度ある小石がぶつけられ、全体が一瞬にして粉砕されたかのように似た音が木霊し、運動エネルギーによる力は光を握った拳により、打ち砕かれた

放った拳は、そのまま光を衝撃に乗せ彼女を襲う


「当たってみて力量を体感してみる、おかしなお試しはしたくない」


その場から跳ね、手を使わない側宙で躱すと片膝をつく着地。その後すぐ、地を拳で軽く叩き、ほんのちょっぴりの振動で跳ねた小さな1つの破片の運動エネルギーを操作し、モトキの右胸部へ撃ち込んだ


「そういった細かな攻撃は厄介かつ、煩わしい!」


撃ち込まれた箇所から激痛が走る。破片は肋に到達し、背を突き抜け、貫通していた

口から血がぼとりと垂れ、貫通した箇所から滲む赤は中の入ったワイン樽に穴を空けたようだ


「用途の広さに感服しそうだな」


違和感はまだ残るものの、痛みはほとんど治まった。一呼吸後に治癒は完了。いつもより治癒力が早く、優れていると実感。闘志が高まるにつれ、それに共鳴しているのだろうか?再生力が促進されている気がする


「ふーん。貴様、タイガよりも治癒力が遅いみたいね。それに、周りにも影響を及ぼすのもなさそう」


周りにも影響?そういったのはタイガから聞いた覚えがない。あいつ自らの治癒能力を目の当たりにしたのは、自分で手に傷をつけた時だけ

それまで、あいつにもあるとは知らなかった


(治癒なり再生なりの能力と言うが、タイガの能力って確か・・・)


あまり疑問を持ちはしなかったが、よくよく思い出してみるとおかしな部分がある

あいつの能力は知っている。しかしそれを教えてくれたのは彼にもまた、自分と同じ再生する力があると発覚するよりも数年前

タイガと同じと言われた際、内心首を傾げそうになっていた。そもそも自らに傷をつけ、治癒能力を見せてくれたその時は驚きはしたが、違和感をあまり感じずにいた

タイガには能力が2つあるのだろうか?

正直、自分のこの治癒される力はニハとの戦いで発現した際は記憶も意識もなく、ハッキリと自我が戻っても当たり前にある、まるで生まれた時からずっといたかのような、自分的には特別感もないものだった。それにより、あまり疑問とならず今日まで経過したのでは?どうして、あの時の自分は?と、思い返してみての疑問


「貴様、タイガと同施設育ちの幼馴染なのでしょ?2回目だけど、カスばかりな他のMaster The Orderの中でタイガだけは例外に少なくとも認めてるの、あたし。あいつ、家や地位を盾に威張らず、単純に強いから。だから、タイガと貴様、個人にしてポテンシャルや戦闘力における差があろうとも、戦いに身を投じたなら落胆させるのは避けてね。あいつと同じ場所で育ったなら、あいつと同じ力を持つなら!」


彼女の手に光として、剣が出現。両手で柄を握り、地盤を蹴ると猛スピードでモトキ目掛け低空を跳ぶ

剣を振りかぶった。刃の片側に青緑色をした小さな渦巻く球体状のものが幾つも連なる

モトキの両手剣には光の力が帯びた


「真っ二つにされようが!這いずり殺されるへの抵抗は続けろ!」


振りかぶった剣を動かす寸前、一度回転を加え、上半身をより捻ると一気に、剣を水平に振り薙ぎ払う

光を刃に帯びた剣を手に、モトキは少し勢いつけた前進から縦垂直に振り落とす

どちらも、振り切ろうとする最中の途中で刃と刃が接触


「この!ただ己の手で痛めつけ好きの戦闘狂紛いが!」


剣と剣の接触時に音を響かせ、即座に弾き合い、そこから5回の光を帯びた両手剣と、片刃に球体が幾つも連なる宝剣の打ち合い。その際に発したモトキの怒号に反し、彼の顔は笑っていた

ネフウィネもまた、不気味な引き攣る笑顔を贈る

両者持つ剣の刃の根元付近が火花を散らしながら激突し、迫り、額と額が正面から衝突する

額同士はすぐに離れ、睨み合い、ギリギリと、歯を噛み締めながら手に力を入れ、剣で押し合う。それでも、2人は意識せずに笑みを溢していた


「ここで解放!」


剣刃の片側に連なる小さな青緑の球体全てが砕け、光が炸裂し、運動エネルギーを放出させることで剣を振る、押す力の威力、スピード、破壊力を増幅させ、モトキの剣に纏われていた光を粉砕

モトキの手から剣が弾き飛び、余波で身体が少し後退。そこへ彼女の剣は彼の胸元に横一閃の斬撃を刻んだ


「手応えあり!だけどー、のんびりただ死を迎えるだけのはずがなかろうでしょ!」


傷が深い、胸元に刻まれた横一戦の切創より止まりそうになく、思わず自分の目で見て不安になりそうな異常なほどの出血

口の中に昇ってきた鉄臭い味、彼の右手は本能で無意味ながらも斬られた胸元を押さえる

ネフウィネの剣に血等の汚れは一切見当たらないが、念の為に空を切るよう振り払いながらモトキの姿を瞳映し、高笑いと追撃に彼の両肩を掴み、斬った胸元の傷へ膝打ち、更にそこから全身を使い、捻りを加えたドロップキックを放った

時間が鈍くなったかのような感覚、両足裏が触れるまでの時間、押し込まれるまでの時間、かなり遅く感じ、そこから自らの体が吹き飛ぶ瞬間は一瞬にして

姿を捉えにくいスピード、影が通過したような。一度大きく地盤に叩きつけられてから、跳ね、速度が緩まることはなく。しかし、最初の叩きつけられ、跳ねてから数メートルでモトキはピタリと止まった

空間に拘束され、固定されたかのように


「あまり遠くにいかないでよ。追いかけるの怠い」


蹴られ、吹き飛ばされる最中の運動エネルギーを取り除かれ、その場に落下することすら止められ、空間に拘束されたかのように映る

解除され、着地は両手から着く。地を押し、その反動を利用して立ち上がった時には彼女はもう僅か1メートルもない距離まで迫っていた

胸元の傷口からの出血は弱まる


「あれれ?貴様、再生力が遅くなった?傷が深すぎるせい?それとも別?心身的な問題?ま、ま、普通の人なら致命傷なはずだろうけど、こうして両足でしっかり立ち、出血も治ってきてるし、呼吸もできてる。大丈夫でしょ」


「再生や治癒されるからといって、痛いものは痛い。あれでまだ死なれて欲しくないと願いやがって、お前、楽しんでるだろ。闘争を」


「自覚はないみたいだけど、貴様自身も闘争を楽しみ始めている。奥底で未だに抑制ばかりの冬が終わらず、静かに冬眠する凶暴性。やがて、溜め込み抑えた感情の制御がきかなくなりそうになり、爆発しそう」


それを爆発させたい。最も手っ取り早いのは彼の大切な人、それか親しい身近な人物を葬り怒りと憎しみを自分へぶつけるよう仕向け、闘争心を限界近くまで駆り立ててみること

しかし、思い当たる親しい人物ならタイガは後々自分が暇潰しやMaster The Order同士の顔合わせ、集まりでうんざりした時の憂さ晴らしにちゃんと生きて抵抗してくれる清涼剤になるからネフウィネ自身にも必要。エモンは国立場で考えたら面倒になりそう。ベルガヨルは向こうから一方的。ミナールは難しいライン

後者2名を試しに消しておくのもありだが、今からだとモトキが終わってくれたと勘違いし、また振り出しに駆り立てさせるのが嫌。現状からプラスさせたい

やはり今を使い、無理矢理叩き出させるのが1番だろう

とりあえず、後ろ回し蹴りを仕掛けてみた


「ゲボッッ!!」


モトキの顔面に後ろ回し蹴りが綺麗に決まり、バコンッ!と彼女自身には気持ちの良い音が響いた


(細工なしの普通のキックだった)


鼻血が彼女の脹脛辺りに滲み付着する最中、モトキの手より現れた盾が落とされ、激しく回転するとネフウィネの背後へ回り、背へ直撃。彼女に鈍痛が走った

若干、右の目尻は引き攣り、歯を噛み締めた。「ふんっ!」と煩わしそうに全身に力を入れ、青緑のオーラを放出させる。背中にめり込みを続ける盾を弾き、放ち撃ち込んだ直後である蹴りの威力を増幅させ、モトキをそのまま蹴り押し飛ばす

叩きつけられることなく、体勢を整え鼻血を拭う。やはり、彼の顔は少し笑みを覗かせていた


「痛いじゃない生意気な後輩君がよ!そこそこ身長あるせいで、見た感じあたしが先輩には見えないけど!」


「先輩と呼んで欲しいのか?」


モトキも白き光を、色に違いがあるだけで属性エネルギーは同じ。彼女が特殊な色をしているだけ

両手剣と盾を、宝剣を、それぞれ手に握り2色の光が激突する。それはぶつかり合いながら上昇し、何度も離れ、屈折するかのように移動し、ぶつかり、離れ、追い終われを繰り返す

接触する毎に鋼に鋼を打ちつける音が響き、建物や地が切断され、砕かれる

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