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光ある概念の終日  作者: 茶三朗
Master The Orderの中芯
116/217

Master The Orderの先頭位置 7

踵部を踏むローファーの片方を爪先で地を突く靴音だけ、他の音が全てシャットアウト

そう錯覚させられるぐらい、ネフウィネに対し集中している。モトキの両手剣の刃は風を切り流し、不思議な音を奏でていた

彼女は、風を捕らえるように右拳を握り締め、振り払ったその跡には青緑のオーラが煙状に残る

その煙を搔き消す、鋭い拳による突きが放たれる。狙いは顔、モトキは頭を少し右に逸らし躱した

その腕を掴もうとするも、瞬時に放たれた拳を引っ込められ掴み損ねた手を同様に握り締め裏拳として放つ。対し彼女は再び拳でモトキの裏拳を迎え撃ち、その反動で両者後退

2人合わせ僅か1メートル程の後退、その至近距離から勢い余り激突することなど御構い無しに両者は同時に地を蹴り、迫る


「きなよ!一般学生に在する者が!」


「お手柔らかにな!Master The Order!」


2人の距離が無くなり、2人の額と額が衝突。波打つ衝撃の余波が1回だけ広がり、空間へと消えた


「一撃に沈め!」


頭突きから衝撃の余波で互いの髪が靡く中、ぶつけ合った額を離し、右拳でモトキの左頬からぶん殴る

殴られた直後、モトキもまた彼女の左頬目掛け殴り返した

ネフウィネは左拳を腹部へ。モトキは両手剣を消し、同様に左拳を頭部右側辺りに

そこから拳は左右交互に、ネフウィネとモトキの交互に1発ずつ胸部、腹部、顎下から、右頬へ放っていく


「けっこう痛いじゃないバカヤローーーっ!!あたしだけに殴らせろ!一方的に!」


このまま殴り合っても埒があかなそうなので、ネフウィネは迫ってきていた右拳の手首を掴み、もう片方の手で彼のベルトを掴むと投げ飛ばす

投げられたモトキは勢い緩むことなく、遥か彼方へ飛んでいってしまう最中、軒並みの飲食や呉服屋、アクセサリーを取り扱う店、学生に憲兵、職員が住む寮といった建築物を貫いていく

その後を猛スピードで追い、上空に到達しそうなモトキ目掛け跳び上がると、身体を畳み高速で回転しながら彼より上の位置へ到達した瞬間、真下への両足によるスタンプを放った

鈍い音は遅れて一瞬、モトキを都市の各区にある庁舎目掛け叩き落とす

屋根から階層を突き破り、1番下の階の床を抜け地面にまで大穴を空ける。悲鳴が聞こえる、パラパラと細かい何かが落ちる音も聞こえる


「もうちょい、頑張ってみなよ。あたしを抑止させようとしたぐらいなら」


モトキが落ち、空いた穴近くに着地。周りから所々、「ネフウィネ様」と名を呼ぶ声と疑問の声


「はいはい。慌てなーい、慌てなーい。あたしがいる限り、皆が痛い目に遭うことはないからさ。朝早くに御勤め御苦労様」


無理を承知に、周りが騒ぎ出すと煩わしいので落ち着かせようとする。人、一人一人に大雑把ながらなるべくのつもりで視線を向け、安心して欲しいと装う最中、彼女の足首はモトキを庁舎の真上から蹴り落とす事で建物を突き抜け、最後にできた落下地点の穴から伸ばされた手により掴まれた


「やはり生きてるよなぁっ!当然だよなぁっ!鳴かないばかりだ、もっと耳にビィンッと来る声で鳴いてみろよ!」


まだ掴まれていない左足を使い数回蹴るも、その靴底はやがて右の掌に受け止められる

ネフウィネの足首を掴んだ状態で穴から飛び出し、お返しとばかりに着地と同時に彼女を振り叩きつけ、もう1つの穴を空けさせようとしたが、足首を掴み振り上げたその腕は突如として硬直してしまった


「よっこいしょ」


掴まれてない方の足でモトキの頭を押し、踏み台にすると、彼の手より足がすり抜けた。そのまま両者、ネフウィネは腕を組み頭から落ち、モトキは異常なく動くようになった自身の腕をしつこく確認しながら着地


(なんだったんだ?動きが止まったような)


一瞬だけ動かなくなったような右肩を揉んでみた時、眼鏡をかけた男性職員の1人が、モトキの後頭部を重量のあるガラス製の灰皿で撲る

ネフウィネのことを知っている人が多いこの中で、モトキが彼女にも自分や他の職員達にも危害を加える存在と判断しての行動。今この近場で、最も武器として機能しそうな物として目に留まったのだろう

ガラスの灰皿は砕けた。モトキを撲り、慣れない真似をしてしまい、気持ちの整理がつかず息を乱しかける男に続き、他の職員達も自分の近くにあるものを手当たり次第投げる。万年筆、インク瓶、捨てようと丸めた紙、ゴミ箱とゴミ、マグカップ、手鏡、等々。殆どが動揺もあり当たりはしなかったが、女性の投げたコンパスの1本が頭に刺さり、落ちた


「あはー!そこは頭からビューって血を噴き出せよ!出させろよ今から!一度はお目にかかりたいシュチュエーションよ!」


無茶言うなよと声にせず。これで戦闘を終了してくれたらと望むが思い通りに進むはずもなく、彼女よりの右ストレートが頬を掠めた

躱す際に見たネフウィネの歯を隠さない笑顔は怖い

放たれた拳を素早く避け、カウンターに彼女の腹部へ右フックを撃ち込むつもりだったが、服に触れた瞬間に拳の動きは止まる


「またか!」


やはり、先程の彼女の足首を掴み、叩きつけようとする動きが止まったのは躊躇いへの怖気付いてでも、突然のぎっくり腰みたいな体調理由でもなかった

自分の意思とは別、彼女の仕業

すぐにまた、動くようにはなったものの、右拳手前にネフウィネはおらず、モトキの真横から親指を額へ突きつけていた


「またか、まただ!その動作は何処に行くべき?貴様に行かせよう」


モトキの視界に閃光が走った。いや、あまりにも瞬間による景色の変わり様にそう映っただけ

自分がいた庁舎の建物内から、場所は何処かの調理場となっていた。包丁等の鋭利物が壁や天井、床に刺さり、錯乱する調理器に各種食材、水の噴き出す音がする

金属製の棚に激突し、そのすぐ後ろの壁に少し亀裂を生ませたる程度に背をもたれ、ようやく止まった状態。頭には大きめにスライスされた肉の一切れ、下半身には米の入った麻袋が乗っかかっていた

右肩には切っ先のない肉切り包丁の刃が刺さり、他にも調理器具がモトキの周りを刺さるギリギリに

身体中が痛い。光は前方、確実に自分が突き破ったであろう所には人影


「お待たせ!」


当然だが、人影はモトキを追ってきたネフウィネである。歓迎はしたくない

立ち上がりはせず、右肩に刃が刺さる包丁を抜き、彼女に向け投げた。弧を描き、迫る包丁は突如空間にて停止

放置はモトキの眉間へ、それを指で挟み捕え、刃を砕く


「避けたり、撃ち落とすなりすればいいだけなのについ。さっきも大して必要ないのについ。条件反射しちゃった。よくあるの、格下相手にやっちゃって痛めつけるつもりが予定より早く終わりを迎えるのが。貴様は丈夫な人で良かった」


最初の腕の動きが止まった異変と、つい先程目の当たりにしたのを踏まえて、彼女の持つ力を大体察した

もしかすると彼女は、物体等の動きを止める、固定化の能力を持つのでは?

右肩の傷が再生する


「お前の能力に、検討がついてきた」


「そ?教えてあげてもいいけどせっかくだから答え合わせしよう。解答どうぞ」


頭に乗っていた一切れのスライス肉を噛み咥え、立ち上がると一飲み

生だろうが、躊躇いなく。野性味を匂わす


「お前は物体や対象を、固定する力があるだろ。だろ?」


彼女からの解答は、右頰を小指で掻きながら


「ブッブーッ!んー、遠からずだけど。ニアピン賞を授与しよう」


確かに引っ掛かる部分はまだあった。自分をこの状態にした、親指の触れはしなかった一撃である

あれも能力による仕業だったとすれば、どう固定させる関連の能力と関係性を持っていく?または、単に親指を突き放った際に生じた衝撃波なだけといった彼女の純粋な力によるもので、能力の答え合わせは普通にハズれただけ?


「正解は、運動エネルギーの操作でした。ニアピン賞に、モトキには生きたまま、蟻の餌になる刑を与えましょう」


「直面したくはない、想像しただけで痒みが現れる刑だな」


少し気楽になり、返している場合じゃなかった。腕が突如として硬直したのも、投げた包丁が停止し、こちらへ返ってきたのも、その運動エネルギーの操作によるものか


「貴様の能力は再生?治癒?なら、タイガと一緒ね」


「あいつみたいに、まだ上手く扱えたりできねえよ。時々、どうして自分の意思に応えてくれずに!なんてこともある」


今は問題なく再生能力は発動してくれている。自分とタイガとの違いは?を考えてみたくなるが、それどころじゃない。後日にしよう


「ほーら、こうしてね・・・」


ネフウィネは瓦礫に紛れるガラス破片をいくつか拾い、それを床へ投げつける

しかしガラス破片達は、床に叩き割れはせずに彼女の腰辺りの高さで落下が停止。破片の最も尖りとなる部分がモトキに向けられた

「シュート♪」とワンテンポだけの鼻唄から、人さし指を小さく回した合図と同時に、幾つものガラスの破片はモトキの腹部辺りを定め、彼女の腰ぐらいの位置より射出。白いシャツの腹部辺りから赤く滲ませようと

モトキは咄嗟に右腕で空気を薙ぎ払う動作後、瞬時に空間より生まれし光から出現した盾がガラスの破片を防ぎ弾く


「分かり易く実践演習してあげたのに盾あったら視界遮られるでしょ?瞬きすら禁止よ」


「刺さりどころ悪かったら、二度と瞬きから開かれることはなさそうだな」


盾はモトキの右手へ、それを手にした直後にネフウィネが小柄な体から繰り出される、全身に勢いをつけたドロップキックを仕掛けてきた

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