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光ある概念の終日  作者: 茶三朗
Master The Orderの中芯
115/217

Master The Orderの先頭位置 6

転がり、少し離れた位置に停止したトイレットペーパーに視線を向ける。遮った物の正体に驚き、目を見開く


「トイレットペーパー?」


彼女の足は、転がるトイレットペーパーの方へ歩み始めていた。普段ならば排泄要求時や完了の際にしか気にとめるはずのない物だが

楔は消え、落ちるトイレットペーパーを拾い上げようとした時、人影がチラつき、殺気が刺さった


「モトキアターックッ!!」


上空より、モトキの方足を掴み持つネフウィネが威圧を携えた目つきで彼女の脳天目掛け、モトキを振り落とす


「うっ!」


咄嗟に躱すも、寸前まで自分がいた位置にモトキが叩きつけられ、その場を中心に地を砕く。その衝撃の余波が、バランスを崩させ、立っていられることすら困難となり転倒

数分前に、彼女がアオバへした仕打ちと同じ

飛び散る破片、小規模ながらも円形に陥没した地、叩きつけた位置の中心から広がる細かい亀裂。その中心に、ネフウィネは立つ

凄まじいオーラを全身から発生させながら


「ギャーーースッ!!いてーーーッ!!」


そのネフウィネの足元近くでのたうち回るモトキ。顔面からいったので、顔を両手で覆い、転げ回っていた


「間に合ったか、間に合ってないか、私からすれば間に合ってはない。貴様・・・」


握り締めた右拳をアオバに任せていたはずの我が愛剣を持つ女へ向け突きつける。理由、経緯の説明も必要なく、任せた者以外が自分の剣を手にしている事。しかも、顔の知る者でもない、赤の他人に

その彼女の横で、モトキがムクリと立ち上がった


「クローイ・・・お前、なにをしている。なにしてやがる!!」


のたうち回っている最中、現状が目に入ったモトキ。左手に両手剣が自らの意思に関係なく現れた

怒りに任せ、まだ攻撃を仕掛けるつもりはなかったのだが、ネフウィネが右腕で遮る


「控えろモトキ、あいつはあたしが惨殺する」


小さい体、その一歩と威圧はとても重い

ゆっくり歩み迫る姿に、クローイの本能が擽られる。まずい、あいつはまずいと

剣は手に入れた、次にすべきは逃げるに決まってる。背を向け、逃走しようとしたが、何故か身体が硬直してしまい動かない


「あの世に行くのに、おやつのビスケットはOK?」


右拳で左掌を数回殴り叩き、歩む一歩毎に何処か、何かが壊れる音が響く

「いっせー、のっせっ!」の掛け声の後、地を蹴り距離を詰める。逃げるのは無理だと悟ったクローイが咄嗟に両腕で防御をするも、身体の回転を加え放たれた右手による水平チョップは衝撃を吸収し切れず、自身の腕ですら己の身体にダメージを与え、弾き飛ばされ、勢い弱まらず、何度も地を跳ね転がる

剣がクローイから離れ、ネフウィネはそっと右手を差し出すと、剣は彼女の手へ光となり戻った

剣を背中に装備し、ベルトを留め、アオバの方をチラ見。モトキが彼女の頭を硬い地に置かないよう、右手で後頭部を支え、その手は膝に置く


「けほっ・・・!いってっ!」


50メートル程、ようやく体勢を立て直し、片膝と掌でブレーキをかけ停止。その道一直線には自分が繰り返し跳ね叩きつけられた跡、そして、背に剣を携え、顔に影を覆わせながら全身より自ら持つ力を強大な荒々しいオーラとして発する彼女は再びゆっくり、こちらに迫っていた。明確なる殺意を侍らせ、口元は笑みを緩ませながら


「あれが本来の持ち主?剣にしては持ち主が大したヤツじゃねぇなとは勘付いてはいたけど。これは、とんでもないヤツの物を手に入れようとしたみたいだな」


ネフウィネには一言も届かない。剣は手にせず、指のストレッチを開始

指の関節から痛々しい鈍い音。ストレッチが完了した時、銃口が向けられていた

足は止まらず、キョトンとしながらも余裕そうな表情。その顔を撃ち抜いてやろうと、クローイが引き金に指をかけ、魔撃より銀の弾丸が放たれる


「玩具お遊びの弾丸に当たるわけなかろう」


銀の弾丸の軌道は風の抵抗もなくネフウィネへ一直線。彼女は避ける素振りもなく、歩みを止めず

「死んだっ!」と、クローイは胸内で勝利を確信したが、弾丸は顔面との距離数十センチで左へ逸れ、彼女の右耳に隣り合うよう停止


「銀素材の弾丸か。吸血鬼退治に使うべきだろうに」


耳横で静止している弾丸を指で弾き、数秒後に破裂音に似た音が木霊した。何処かの建物を撃ち抜いたようだ


「っ!!」


やぶれかぶれに似た連続発砲と、もう片方の手でバックパックから槌を引き出し投げるも、全てが目に見えて彼女に到達する前に、意思があるかのように自ら避ける

ご丁寧に、ネフウィネは黒い槌を手にするとクローイのバックパックへ投げ入れ、ドスっと伝わる重みを与えると銀の弾丸を全て地に落とした

銀の弾丸を2つ程手にし、指で弾くとクローイの足下手前に撃ち込み威嚇射撃

笑顔になりかけの口元の緩みがなくなり、小さな身体から放たれる強大な威圧と冷たい眼差しを刺し向け、口を開く


「機嫌がよろしくない、あたしが怒る理由は幾つかある。1つ、共に生徒会の一員として、少なくとも信頼はしている者を傷つけたこと。1つ、あたしの武器を奪ったこと。1つ、彼女に預けた私も悪くなり、先見がない風になったことが許さない」


スピードを上げ、歩みから走りへ。速度は数歩で一気に上がり、地を踏む毎にその場を砕き、言葉ではない怒涛の畝る叫びを挙げる姿に、クローイは思わず「ひっ!」と怯える声を漏らし、足底から微かにだが震える

距離を詰め、目と鼻の先で止まった。その間に逃げれず、それを試しもせずに後悔の念が湧くクローイに対し、ネフウィネは両手を背で繋がらせ、踵部を踏んだローファーの爪先で地を交互に突いてから、相手に対して前触れもなく、頭突きを撃つ


「ぐはぁっ!」


顔面への頭突き、骨と歯を砕かない威力で。まだまだこれから。背から倒れる前に首を掴み、右拳と右膝を連続して打ち込むと地へ押さえ込んだ

ネフウィネは彼女に跨がり、拳で、また拳で各箇所を手当たり次第殴る。一撃で昏睡させず、最初は痛みだけを与えるつもりで


「まだ息の根を止めるつもりはないけど、死ねと口遊み殴ろう」


口遊みの言葉は決して口先ではない本気。どの道、最後はトドメを刺されるだろう

光景を見るモトキは止めれずにいた。自身もアオバへ降りかかった仕打ちを目の当たりにした際、怒りに呑まれかけ、クローイに対し明確な殺意が芽生てしまっていた。ネフウィネを止め、彼女を救う形になるのは本心とは違えども、どうも体が動かない


「そろそろ殴るだけは飽きてきた。骨を粉々にして絶命や気絶をさせないでの抑えてだから当たり前か。あと数発この体勢の状態で殴ったら徐々に威力を高めていき、最後は肉片、骨かけら、知る限り人間の体液色にある透明、白、黄色、赤の液体をぶちまけさせよう。プレゼントを渡され、悦びのあまり包装紙を破く少年少女のように、顔や腹部に胸部の皮を爪と指の力を使い剥いでいくのもいいかな?」


聞こえていた。次殴られる瞬間のクローイの顔は恐怖のあまり瞳孔が縮小、緩く噛み締められた歯はこれからガタガタ震えるか、より強く噛み締められるかの前に次の拳が額右辺りを撃つ

来る終わりは決まられた。あるのは死。嫌だ、嫌に決まっている。このまま決定された結末を迎えたくない、だが抵抗する力もなく、どうしようもない。現状に絶望すら終わりのリミットが近づく中、彼女の口から自然と微かに声が溢れた


「助け・・・たす・・・け・・・」


弱り始めた右手は、モトキがいるはずの方向へ向けられた。当然、彼の目に届く

自業自得、因果応報である。すぐに行動できずにいる自分がおり、精神の奥底で自分とは別の何かがやめておけと邪魔をする。アオバにした事への怒りでクローイから目を背けようとする言い訳なのかもしれない

だが、胸が締め付けられたような感覚がする

殴られ、痛めつけられ、着々と死の到達へ進む彼女を見捨てるつもりでいる己がいる。嫌なことにフラッシュバックする一度見せた助けを求める姿

頭を掻きむしってしまいそうだ


「死ね・・・死ねぇ、死ねぇっ!死ねっ!」


まだ殺すつもりもないが、口は決事を先走る。ワザと拳の1発1発を間を空け殴り、抵抗も最後に見せた助けを求める真似すらしなくなった彼女の顔は何故かよりネフウィネの殺意を助長させてしまう

ただ静観しているモトキに映るのは、過去の己と照らし合わせた姿。いじめられっ子数人に羽交い締めにされ、殴り蹴られたり、あの様に跨られ一方的に暴力を振るわれた事など何度もあった。その度に、タイガの兄がタックルで突き飛ばしたり、慣れもしない跳び蹴りで助けに現れるが、勢いは最初だけでいつも返り討ち

隙を突いて全力逃走か、2人揃ってボコボコにされるか、後から駆けつけたタイガがそいつらをボコボコにするかのどれかだった

今、視線先で繰り広げられる光景にかつての自分を映し思うところが出てきたが、アオバへした事は許せない。だが、このまま目を瞑っておいていいものなのか?

モトキの手はアオバの頬に触れていた

瞑る、違う、瞑る、違う、瞑る、違う・・・


「途中繋ぎに首を絞めよう。キュッと鳴けよ」


ネフウィネの左手がクローイの首を掴む。「がっ!」を最後に声が詰まり、苦悶の鳴き声すら出ない

メキッと軋む音、より瞳孔が縮小されていく。その顔にネフウィネは一瞬だけ不気味な顔をみせたが、瞬時に真顔へ


「苦しませるのも飽きた。無駄に飾り気のない苦しませ方しかできないから」


首を絞めた状態のまま、右拳を握った。より力を込めた拳、顔面を粉砕させ、頭部を消失させる為に放つ

轟音と肉の潰れる音は、しなかった

ネフウィネの右手首は、掴まれている

彼女は、ギロリと自身の手首を掴む主を睨みつけた


「貴様・・・モトキぃ!あたしの弊害となりたいか!?」


「もう、いいだろ・・・」


がっくし、彼女は肩と頭を落とす。のっそりと立ち上がり、肩と頭を落とした状態からの振り返りからモトキの顔に触れるギリギリに顔を近づける。良い匂いがした

目は力強く見開き、充血した眼、目周りの皮膚にも伝達し広がったかのように血管が浮き出る


「もう、いいだろ・・・もう、いいだろ・・・どこがいいの?」


今から顔に喰らい付き、皮膚に鼻を噛み千切られてしまいそうだ。彼女ならやりかねない

ネフウィネは一度モトキから一歩退がると、徐にクローイの腹部を踏み蹴る。「がはっ!」とクローイは苦しみと痛さに目尻から一筋の滴を伝せ、身体はくの字になり、口よりほんの少量の血反吐の粒が吐かれた

片方の足で胸部辺りを押さえ、次の一撃を落とす前に、モトキが咄嗟にネフウィネを背後から羽交い締め抑止


「おい!やめろ!いい加減に・・・」


「あたしの邪魔者となるつもり?じゃ、貴様もついでに死んでもらおう」


踏みつけていたクローイを蹴り退かす。蹴られた彼女は地を滑り、まだ開店数時間前の一軒の衣服屋に弱まった勢いで激突し、止まった

店扉前を塞ぐ形に横たわる彼女にモトキの視線がいくが、よそにネフウィネは両脚を屈ませると、前へ倒れるように体を動かし、羽交い締めるモトキを自分の背から頭上を越えさせ、背中から地へ叩きつける

その直後、間髪入れずに叩きつけられた反動で跳ねたモトキへ拳を撃ち込んだ

右拳は胸部へ、心臓の鼓動が直に伝わり、めり込ませ、再度地へ。また跳ねたところを砕けた地の破片を掴み、口に入れてから顔へ蹴りを喰らわせようとしたが、叩きつけられる前に彼は両手を着き、体勢を整えると後方へ跳び距離を取る


「寂しい、寂しいねぇ。蹴りをするはずだったあたしの足が寂し気」


その右足は、硬い地を踏み砕く。その次の瞬間、広範囲に渡り各建物のガラスが一斉に割れた

瞳を閉じ、開く。険しい眼に対し、口は笑う。凄まじい威圧が何重にもなってモトキを襲う


「よーし、邪魔するなの払い除けでうっかり死なせたことにしよう」


「あー!もー!どうしてこうなるんだよ!」


首を突っ込むべきではなかっという考えは微塵もなく。あれで、これでよかったのだろう

制服のブレザージャケットを畳み、それを枕にして置いてきたアオバを気にしながらも、手には盾と盾鞘に納まる両手剣が出現

抵抗、対抗するつもりで

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