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光ある概念の終日  作者: 茶三朗
Master The Orderの中芯
109/217

生徒会

タイガの兄を葬った人はもう作中に出てきています

探してみてね。わかっても内に秘めといてください

生徒会室の場所は知っていた。まだ春先頃にに、タイガからここへは絶対に入るなとキツく言われたのを覚えている

その理由は定かではないが、生徒会室にある人物がいる可能性が僅かにでもあるならば、リスクを冒すのが嫌いでなくとも避けるべきだと

思い出すんじゃなかった。だが、それぐらいの可能性に躊躇っていても進まないままなので咳を1回してからノックを3回

「どうぞ」と、すぐに女性の声が返ってきた


「失礼します」


引き扉じゃなく、押し扉。ガッ!と引っかかる音を立ててしまい少し恥ずかしい

生徒会室の部屋内を初めて見たが、ごちゃごちゃ散らかってはいるが学園長室より広い。真っ先に目に入るミーティングテーブル、モトキから見て手前左側に女性が1人記入作業をしていた


「生徒会に御用?トイレと間違えた?なら回れ右、邪魔になります」


「いや、御用だ。ちょいとばかし、問題を起こしたことになってさ。罰として10日間、生徒会の手伝いを下されたからここに・・・」


「ふーん。生徒会の手伝いを罰と扱うのは癪に触るけど、まぁいいでしょう。あなたが起こした事を訊くつもりもありませんので、一先ずはお好きな席に腰を下ろしてください」


ミーティングテーブルの1番奥にある一席、生徒会の札に椅子は素人目でもわかる程の高級品

他より一回り大きく、テカリのある黒革作り。冗談で訊ねてみる


「あれに座ってもいいのか?」


「お好きにと言ったはずでも、あれだけはダメです。もし座ったら、学園内を歩けなくなるだけでの結果で済めば良いですねえ」


座るのはよそう。元より座るつもりはなかったが

彼女の向かいとなる席に座り、手伝いといっても自分に出来る事は分からないので指示を待つ


「そう見つめないてくれる?照れるから」


「ああ、すまない・・・手伝える事はあるか?」


「今はこれといって特には。そうね・・・この部屋の掃除でもしてくれるかしら?箒もちりとりもモップも、部屋にあるから。会長が持ち込んだ物や所有物は壊さないように」


「学園を歩けなくなるで済んだら良いのにねえの結末だな。椅子以外、会長さんの私物っぽそうなのは避けるさ」


掃除道具はミーティングテーブルを更に奥、壁に埋め込まれる作りとなっている黒板のすぐ右隣の鉄製用具入れの中に。まずは箒で軽く掃き始めた

幼少時に過ごした施設生活での経験が活きる

隅のホコリ、スナック菓子のカス、制服ボタン、ゴミ箱に投げ入れるつもりが入らずそのまま放置していたティシュ、何かの小骨、言及しないでおこう


「そういえば数日前、ケースごとトランプが行方不明と会長が仰られていたので、もし見つけたら私に渡してね。あと万年筆に、サングラスも生徒会室で無くされたようです。誤って箒で叩き割ったりしないように」


「普段どんだけ私物を雑に扱ってんだよ会長さんは」


何故かある食器棚の下隙間より万年筆とトランプを発見。菓子類を貯蔵している棚からはサングラス

渡せと言われていたので、渡そうとしたが今は忙しいから会長の席に置いておくように言われた

文句言わず、反論せず、言う通りにして掃除を続ける


「ふぅ・・・まずは参加者名の記入完了、一区切りにいったん休憩しよ。あなたも掃除の手をやめ、お茶でもどうぞ」


赤いソファーを動かし、その裏を掃除していたモトキが「はい、いただきまーす」と顔を出し、箒とモップを束ね、黒板にもたれ掛けさせてから移動

再び彼女が座っていた向かいの席に座り、お茶を淹れてくれるのを待つ

棚からお茶請けを探すと、栗羊羹を1本発見。暫し見つめてから、モトキの方に視線を刺す。なにやら、しょんぼりと沈む顔に。彼女の表情に、モトキは察した


「いいよ。俺に気遣いせず、1人丸々1本食えよ」


表情が明るくなった。密封された栗羊羹の包装を剥がし、皿に乗せ、フォークを突き刺し、軽い足取りと鼻唄を奏でながらテーブルに置く

自分だけとはいかず、他に茶請けになるものを探していると棚の奥から海老煎餅を見つける。「会長の」と貼り紙をされていたが、彼女はそれを破り捨て、モトキに渡した


「よかったのか?会長のって貼り紙されてたけど?」


「説明はしておきます。たぶん、大丈夫なはず。それより、お茶お茶♪」


彼女が黒板を叩くと、中央から避け、左右に開いた。目ん玉が飛び出しそうになっているモトキを他所に、開いた黒板の先にあるスペースには囲炉裏を囲める部屋となっており、小さく灯る火に金網を被せ、その上にヤカンを置き湯を沸かす


「お前ら生徒会は学園に秘密の部屋を造ってるのかよ!」


モトキの言葉を聞き流しながらヤカンのお湯を急須へ、3回まわすように動かし、急須から湯呑みに注がれる音、昇る湯気、玉露の香り

両手に湯呑みだが右手は器用に急須と湯呑みの2つを指で挟み運び、1つは自分の席のテーブルへ、もう1つはモトキに。黒板は開いたまま

暑い季節にホットで飲むのはコーヒーだけにしたい。が、そんなことを口から滑らせたら張り手をされそうだ


「さて、休憩・・・の前に、お互い名前も知らずに掃除さちゃったね。学園長から10日間の生徒会手伝いを罰として言い渡される真似をしたお間抜けなあなたは?」


「お間抜けか、そうかもな。俺はモトキ、今年入学した高等部1年だ」


「モトキ?モトキ・・・記憶の中にうっすら・・・あ、会長が言ってたミナールちゃんにタイガ君、ベルガヨルが最近よくつるんでいるらしい人の名前ね」


「確かにつるんでいるというか、向こうから関わってくるというか、各自事情は様々だな」


同施設育ち、スライムとの戦い後に現場を見ていた取り巻きの告げ口により興味本位に、ジョーカー戦での共闘。キハネは入院以降からっきし顔を合わせてないが、1年1学期の間にMaster The Orderの知り合いがこうもできていたとは、モトキは思い出しながら茶を飲む


「前2人はともかく、あのベルガヨルがねって信じられずにいたわ。私含め、会長。きっと他のMaster The Orderも」


「あいつ、そこまで評判良くなかったのかよ」


今度、突然訪問してきたり、一緒にいる時はなるべく話しかけにくい空気を出さず、積極的に関わっていこう

なんだかんだで、オーベールや彼の付き人であるメイソンみたいに自分に接してくれる数少ない同じ歳の同姓だし


「私の名前を教えておくね。この10日間、呼ぶ時に女!だけだと鬱憤溜まって終わり側に最上階から投げ落としちゃいそう」


「そ、そうですか」


口に運ぼうとしていた海老煎餅を一度置く


「生徒会の書記を担当しています、名はアオバ、姓はコヨミ。学年はモトキと同じの1年、けど中等部からの上がりだからこの学園の学生歴は上になるわ」


名前を聞いた途中から海老煎餅を食していた音で後半はあまり耳に入っておらず、彼女はムッとした顔を向けてきた。モトキの手と咀嚼が止まる


「すまないコヨミ、ほどよいうま辛さが病みつきになりそうだ」


「海老煎餅の感想は別にいいとして、姓で呼んで欲しくないわ。名前で呼んで、ちゃんと」


「えー・・・すまないアオバ、ほどよい辛さがやみつきになりそうだ」


「だから海老煎餅の感想はもういいって!」


彼女は始めと比べ、自分への態度と口調が違う。モトキが同級生であり、接しやすさから素になったのか、合わせたのかのどちらかだろう

「まったく・・・」を静かに呟き、栗羊羹を突き刺さすフォークを持ち上げると切り分けもせず、幸せそうに食べ始めた


「一息ついたら掃除はせずに、以前行われた野営活動の記録記入を手伝ってね。誤字脱字に参加者、欠席者はそれぞれ間違いはないか、名前は正しいかの確認をお願い。こっちに生徒名簿があるから」


「了解した。できる限り力になるさ」


人数分の確認となると相当な量と時間となるはず。しかし、彼女はそれを記入していたのでモトキは「多すぎる!」や「やってられるか!」の不満を決して言うことはない。熱い茶を飲み干す

今は生徒会の奴隷となろう


「隣の席に座っても構わないか?何かあったり、分からないところがあればすぐに聞けたりして何かと利がありそうだし」


「いいよ、ただし執着に私の匂いを嗅いだりベタベタと身体を触ってきたらはっ倒して学園長に報告するから」


「なるべく機嫌を損ねる真似になりそうな行動をしないよう心掛けておく」


名簿とアオバが記した出席者、欠席者の欄を照らし合わせながら1文字1文字生徒の名前を確認していく

長時間続けると目が痛くなりそうな作業だ。途中、自分の名前やチームだった人の名前を見つけたりすると思わず鼻で笑ってしまい、彼女がこちらを向いたので咳で誤魔化したりする時もあれば、3、4回険しい顔で作業が数秒止まっている時もあった

彼女はふと横を見ると、そのような顔になっていたモトキに驚き、訊こうにも訊いたらダメな予感がしたので作業を続ける

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