第2章<馬鹿と鋏と下手は使いよう>
相変わらず連戦連敗を続ける1年4組であったが、その試合内容は今までの圧倒的なものから僅差なものへと変わりつつあった。
その中で宮島は1つの疑問を背負う。
友田康平
1年生屈指の速球を誇るエース・長曽我部と違い、平凡な球速、平凡なコントロール、平凡な変化球と、とにかく平凡な投手であったが、相手打線を器用に抑え込み、他の投手よりも好成績を残していた。
彼よりもいい投手はいる。にも関わらず他の投手抑えられるのはなぜか?
そうした宮島の問いにマネージメント科が動く。
秋原明菜に加え、情報処理・解析の技術は学内トップクラスの高川秀仁。2人を中心に多くの人間を巻き込み、友田解析プロジェクトが始動。
彼を解析のためのデータを集めに迎えた1年2組とのリーグ戦。
本日も友田は快調。2組が誇る大谷、村上、西園寺の主力打者も抑え込み、5回をわずか1失点。さらに打っては、1年生最速となる第1号本塁打を記録。
その試合、6回から新本がリリーフ。球速わずか2桁の投球を駆使し、のらりくらりと相手打者の攻撃をかわす。7回は左サイドの大森が抑え込み、勝利が見えてきたが、8回にアンダー・塩原が大炎上し逆転負け。
初勝利の匂いがしてきた中で、あっという間に勝利を手放してしまった。
しかしその一方で、重要なデータを手に入れたのは友田解析プロジェクト・高川。
彼が導き出した友田の抑えられる理由。
それは回転数の少ない『おじぎストレート』の存在であった。
回転がいい選手が投手をする中で、回転の悪い友田が投手をする。沈むボールの軌道は、普通のストレートに慣れた選手には簡単に打てない。ただそれだけの理由であった。
回転が悪いのに抑えられる。それに納得がいかない宮島に、元プロの担任・広川博は、弱点も時に武器になる、短所も圧倒的長所で補うことができるなどと、新本の遅い球や、非力ながら俊足巧打の神城を例に教えを授ける。
これで『長所』『短所』の生かし方に気付いた宮島。ためになる話を聞き、一件落着、と行きそうだったがまたひと騒動。
宮島健一、1年4組野球科キャプテンに任命される
第2章 あらすじ
テーマ:馬鹿と鋏は使いよう