第12章<全員野球で突破せよ>
土佐野球専門学校はその目新しさもあって1期生、特に2期生に関しては、
かなりの逸材が集まっていた。
一方で次第に目新しさもなくなってきたことで3期生は質にやや疑問が残りだし、
土佐野専も経営的な問題に直面していた。
そして高校野球も、多くの若き逸材が土佐野専に流れたことで、
注目度低下やさらなる逸材の流出が問題となっていたのだ。
そこでその問題を解決すべく、
お互いの生存を賭けた『土佐野球専門学校選抜 VS 高校野球日本代表』
の試合が行われることとなったのである。
戦いの舞台は兵庫県・甲子園
1週間前から現場に乗り込んだ土佐野球専門学校選抜は、
合宿にて新チームの連携や、試合に備えた守備位置調整などを行い準備は万全とする。
そして始まる運眼の試合。
打っては大谷、神城、村上、三村、バーナードら、各クラスの上位打線級が並ぶ打線が爆発。
守っては先発大原の好投。流れが変わりかねないピンチに対しては、守護神・鶴見&宮島バッテリーの活躍、守備巧者・前園の度重なる好守などでわずか1失点。
木製バットへの慣れなど土佐野専に有利な点があったとはいえ、
日本代表を相手とした試合は圧勝に終わった。
だがしかし、この勝利は選抜チームの選手、首脳陣だけで得たものではない。
「甲子園をアウェイにしてたまるか」と、下手な吹奏楽部を引き連れて高知からやってきた、土佐野専選抜外のメンバー。
そして限られた予算の中でいいホテルや練習環境を確保することに成功した経営科。
選手の体調管理・日常生活の補佐や、データの収集分析のため、朝早くから夜遅くまで動いていたマネージメント科など。
土佐野専が勝利した理由は、選手の力だけではなく、その力を100%発揮できるように影で走り回っていた裏方の存在にあったのだ。
そのことを監督・広川はマスコミ陣の前で説明。彼らに賞賛と感謝を送るとともに、選手は彼らの存在を忘れてはいけないことも伝える。
今まで野球科生を支えてきた、地味であるが強力な仲間。
縁の下の力持ちの存在をより認識した野球科生は、
その力を得て運命のドラフト会議へ、ラストスパートをかける。
第12章 あらすじ
テーマ:裏方の存在理由
マネージメント科による援護は11章以前でも数多く出てきます。
その点では『裏方』について書いたのは今回だけではないのですが、
特にそれをテーマにしたのが今回でした。
自分としては最も書きたかったテーマの話です。
今作中では『(裏方を含めた)全員の勝利』と言いましたが、
実際は『裏方で勝利する』ことは滅多にないと思います。
でも、『裏方で負けること』は珍しくない。
直接的に勝ちへつながらずとも、軽視しては負けてしまう存在。
それが裏方なんでしょうね。




