「今宵、お前の大切なものを奪う」
この前、指輪展に行った時に思いついてしまった馬鹿な話。
世界一の格闘家と名高い男の元に、ある日一通の手紙が届いた。
「今宵、お前の大切なものを奪う」
男は悩んだ。彼にとって大切なものは、山ほどあったからだ。
妻、子ども、ペット、家、思い出の場所――……手紙の「大切なもの」とは何なのか特定出来ず、困った彼は全てをひとところに集められるだけ集めた。
全て、守りきってやろうと思ったのだ。
そして夜――
男の元に、その人物は堂々と現れた。
「お前が手紙の差出人か」
「いかにも」
問いに答えたその時の声色に、男は目を軽く見開いた。
「……驚いた、お前、女か」
「そうだが?」
平然と答える女に、男は厳しい眼差しを向けた。
「……何を奪うつもりだ」
女はしれっと言い放った。
「いやなに、お前の(ぴー)をだな」
「!?」
男は股間を抑えた。
「な、なな、なぜっ」
動揺を隠せない男に、女は説明を始めた。
「……かつて、ソレを型どったものを、子供にお守りとして持たせたんだ。私には子どもが居てだな……どうせなら世界一強い男のモノを型どった方が、効果があると思わないか?」
「は……!?」
「そんなわけで、今宵はお前の大切なモノを頂く」
「アッ――――」
古代の方は、ソレを彫った指輪を子供のお守りとして授けたらしい……