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09 ふあんになる。

ルカ視点です

 ふと視線を上げると、カウンターの向こうで溜息を吐く少女がいた。小さい小さい、誰にも聞かれないような溜息だ。

 閉めた後の店内は静かだ。洗った皿を丁寧に拭いているけれど、彼女の青い瞳は手元を見ているようで見ていない。

「リリアンさん?」

 つい呼びかけると、ハッと彼女が顔を上げた。それから俺を見て、にっこりと笑む。

「はい、ルカさん。なんですか?」

 何か食べますか、と笑う彼女はすっかりいつも通りだ。

「……なんでもない」

「本当? ふふ、変なルカさん」

 首を振った俺に彼女はくすぐったそうに笑い、皿を食器棚に直した。

 変なのはそっちだ。そう言ってやりたいけれど、言葉をぐっと飲み込む。

 二日に渡るお祭りが終わってからというもの、彼女は誰にも気づかれないような瞬間にふと憂うような表情を見せる。四六時中一緒にいる俺も気づかないと思っているのだろうか。

 心中で溜息を吐きながら、教科書とノートに視線を戻す。ノートというより紙の束であるそれには、稚拙なこの国の文字、そして今はもう懐かしい日本語が書き散らしてあった。



 俺はその時まで、東京に暮らすただの男子高校生だった。

 三年になり、夏休みを間近に控え、そろそろ真面目に勉強しないとまずいなとぼんやり思う。そんな、劣等生ではないが優等生でもない普通の高校生。

 名前は、草薙琉伽くさなぎルカ

 ルカなんて名前、女みたいで小中学生の頃は嫌だった。同級生の男子には「ルカちゃーん」なんて言われてからかわれるし。絶対その内タケシとかに改名してやる、と意気込んでいた。

 けれど高校生にもなると思考は随分と変わるもので、不思議とこの名前も悪くないと思い始めた。愛着でも沸いたのかもしれない。

 そのあたりは定かではないが、一度名乗れば忘れられないのはなかなか楽だ。珍しい名前でもないのに、みんなやはりルカは女っぽく感じるようで、すぐに覚えてくれる。新学期はとても楽だった。ただ、隣の席の女子がルカちゃんだった時は少々気まずかった。

 友達はそこそこ多い方だと思う。名前であれこれからかわれたのは中一までだった。同級生も思考が変わったのかもしれない。クラスメイトともだいたい楽しく過ごせたし、特別何かがあるような学校ではなかったけれど、毎日授業めんどいと思いながらも苦なんて感じたことはなかった。

 それでも、やっぱり授業は面倒臭かったし好きではなかった。だからといって堂々と屋上で昼寝をする度胸も先生にガミガミ言われる元気もなかったので、なんとなく授業を受けてなんとなく勉強をして、通知表はだいたい三、たまに四がついた。平凡だ。

 教師はもう少し頑張れるんじゃないかと何度か言ってきたけれど、そうかもしれないと思いつつやる気は出なかった。成績について、両親にとやかく言われることがなかったのもあるかもしれない。

 家族は両親だけだ。兄弟姉妹きょうだいはいないし、祖父母の顔も遺影でしか見たことがない。同級生に比べて、俺は遅れてできた子供のようだった。

 父はサラリーマン。母はパート。二人は放任主義で、放置されているとは思わないけれど、犯罪や人に迷惑をかけるようなことでなければある程度自由にさせてくれた。

 両親に怒られた記憶はあまりない。幼い頃に喧嘩した友達に引っかき傷を作ってしまった時と、あとは「口を開けっ放しにするな」だろうか。馬鹿に見えるから絶対に口は閉じろと言われた。他にもいろいろ言われたことはあったが、どれも怒るというより注意だったと思う。

 あまり口出ししない親が珍しいというのは、「また親父に怒られる」「小遣い減らされる」と言った友達の話から理解していた。だから不思議に思ったりもして、一度問いかけたことがある。

「どんな点数でもお前の責任だ。将来後悔すると思うなら必死でやれ。後悔しないなら欠点でもなんでも取れ。医者になろうがプー太郎になろうが何も言わないし、何もしない。大学まではどんなお高い学校だろうとできる限り面倒みてやるが、その後は自分でどうにかしろよ」

 というような回答を父にもらった。投げやりな言葉でありながら、声音は真剣だった。皿洗いをしていた母は何も言わなかったけれど、だからこそ父に同意しているようだった。俺はただ「わかった」と頷いた。

 友達にこの話をすると、たいそう羨ましがられた。成績や進路、生活のあれこれにいちいち口出しされるのが堪らないらしい。俺もそんな親がよかったと言われた。

 これが恵まれているのかどうかの基準になるとは思わないが、俺はこの家庭がなかなか気に入っていた。そりゃあ思春期だから、反抗期が過ぎようとも親に対してきつく当たってしまったり、自分に非があるのにうざいと思ってしまったりはするけれど、両親を嫌いだと思ったことは一度もなかったのである。

 さて、そんな真面目とは言えない俺ではあるが、進路はわりと真面目に考えていた。就職難と言われるこのご時勢である。高卒の身分で就職の道は端から考えていなかった。

 自分の学力でなんとか届きそうなレベルの、それでいて就職率の高い大学を二つ見つけて、その中で四年間続けても飽きたり嫌になったりしなさそうな学部をピックアップした。結果、志望校と志望学部をあわせて六つになった。

 それを担任に言うと順番が少し変じゃないかと言われたが、やりたいことが見つからないのだからこれでいい。将来の夢なんて小学生の時に作文で「おくまんちょうじゃ」と書いて以来、あやふやなまま模索中だ。

 多分、サラリーマンになるのだろう。父は念願の会社に就職してやりたかったことを仕事にしている勝ち組サラリーマンだが、このままだと俺はとりあえず就職した負け組サラリーマンになりそうだ。稼げるだけ全然いいのだけど、やはりそんな将来を考えてもちっとも面白くはない。

 それでも、仕方ないかとは思った。やりたいことが見つからなかった、自分の責任だ。

 そんなことを考えるあたり、なかなかどうして両親の教育方針が染み付いている。

 受験生にとって、夏は勝負時なのだと言う。受験生に夏休みなど存在しない。

 確か中三の時も聞いたその決まり文句は、期末テストが終わると毎日のように聞くことになった。俺は真面目ではないが教師に不信感を持っているわけでもなかったので、そうなのだろうと納得して両親に塾の夏期講習に行かせてくれるよう頼んだ。

 うちは裕福ではなかったし、通えと言う親でもないので(やらされるだけでは自主性が身につかなくて嫌らしい)、高校受験の時すら塾に通ったことはない。俺は三年に進級する前にちらっと考えはしたが、その頃はまだ志望校を決めかねていた為先送りにした。

 何故か少しばかり緊張しながら頼んでみると、両親は顔を見合わせてから、「いくらいるの? お弁当は?」と母が尋ね、すぐに「頑張れよ」と父から短い激励の言葉をもらった。少し、嬉しかった。

 うだるような暑さの中、蝉ばかりが元気に鳴く。

 休みと呼べない夏休みを目前に控えた、終業式の朝。俺は車に撥ねられた。

 道路に出た子供を助けようとしたとか、俺を疎ましく思う誰かに背中を押されただとか、そんなことは少しもなかった。暑さに打ちのめされそうになりながら、通学路を歩いていただけ。

 急にブレーキ音が響いて、気づいた時には宙を舞っていた。人間はあまりに強い衝撃は感知しないのか、その瞬間はちっとも痛みは感じず、地面に転がってからじわじわと体中が痛み始めた。

 どんな車に撥ねられたのか。轢き逃げされたのか否か。自分以外にも被害者がいるのか。そういったことを確認する余裕はなかったので知らない。

 誰かの悲鳴と叫び声は絶えず聞こえていた。その声も一つ壁を挟んだようにとても遠くて、現実味がなかった。

 痛みと、息苦しさと、纏わりつく熱の中に混じる寒気。それらを感じながら、焼けるようなアスファルトに転がったままゆっくり目を閉じた。

 眠い。昨日夜更かしをしたからだ。もっと早く寝ればよかった。毎日のようにするそんな後悔が滲んだ。


 両親や友達の顔が浮かぶなんてことも、一切なかった。


 目が覚めた時、俺は森の中にいた。そして、目の前には俺を見下ろす金髪碧眼の女の子。

 突然場所が変わって目の前に外国人がいれば驚きもする。しかも俺は車に撥ねられたはずで、それなのに怪我一つないなんて正直パニックだった。

 彼女は素性の知れない俺を迷子だと思ったのだろう、手を引いて彼女の家まで案内してくれた。街並みはヨーロッパのどこかにありそうな、旅行番組に出てきてもおかしくない綺麗なものだ。しかも周りは外国人しかいない。まさか意識がないうちに外国に拉致でもされたのだろうか。

 そんなことを考えているうちに彼女の家に着き、そこで彼女が引っ張り出してきた地図を見て、俺はようやく状況を理解した。東京も、日本も、俺が知る世界は地図のどこにもなかったのだ。

 この現実は受け入れがたかった。夢じゃないかと思った。それでも、頭のどこかでは帰れないと理解していたのだと思う。勝手に涙が零れた。

 彼女は俺がある程度落ち着くと、部屋を与えて一人にしてくれた。知らない匂いのするベッドに転がると、また涙が出た。こんなに泣き虫だったのかと辟易するほど泣いた。死にそうな時に思い浮かばなかった両親の顔が、この時になってようやく、嫌になるくらい瞼の裏で優しく微笑んでいた。

 これが俺の行動によってもたらされた結果なら、俺はすんなり受け入れることができただろう。だって、それは俺の責任だ。未成年でも、高校生にもなれば自分の尻くらい拭えなくてはならない。

 だけどどうだ。これは俺の責任だろうか。俺は学校に行こうとしただけだ。責任があるとしたら、俺を撥ねた運転手の方だろう。俺はただの被害者で、それなのにこんな仕打ちは理不尽だ。

 帰りたかった。耳慣れた言葉が行き交う国に。甘やかさずただ見守ってくれる両親がいる家に。

 ここで迎える二度目の夜、彼女に黙って家を抜け出した。あの森へ行けば、あの場所へ行けば、帰れるんじゃないか。そんな馬鹿なことを考えて。

 なんとなく感に従って夜道を進むと、森に辿り着くことができた。けれど、あのカーペットのように花が敷き詰められた場所には辿り着けなかった。

 川のほとりにへたり込んで、絶望した。あの場所に辿り着くことさえできないのが悔しくて、ひどく惨めだった。

 それから何時間経ったのだろう。日は既に高く昇っていた。虚無感を伴う疲労感はあっても、空腹などは一切感じないまま、ただぼんやりと川のせせらぎを見つめていた。

 すると突然、ガササッと葉や木の枝が音を立てて、何かが転がってきた。微かに呻き声を上げたのは、俺を拾った金髪の少女だった。

 彼女は怒鳴った。泣きながら、わけのわからない言葉を喚いた。何を言っているのか少しも理解できなかったけれど、彼女が怒っていること、そしてひどく心配してくれたことは理解できた。

 だけど俺はどうやって「ごめんなさい」と言うかも知らなくて、どうすれば伝わるかもわからなかった。ただ、初めての夜に与えられたぬくもりが少なからず気持ちを楽に――縋りつくものがあることにほんの少し安堵したことを思い出して、彼女の体を抱きしめた。

 日本人の俺には、恋人でもない異性を抱きしめるなんて初めての経験である。戸惑いがちに抱きしめ、名前を呼ぶと、彼女はようやく泣きやんで笑ってくれた。

 あの笑顔を、俺は一生忘れないだろう。



 あれから、二ヶ月が経とうとしている。

 俺はひたすらにこの国の言葉を学んでいた。英語が一番の苦手科目だった俺にはこちらの言語もなかなか難しかった。ゆっくりと話してくれるし聞き取りならある程度できるようにはなったが、まだ自分が話すのは自信がない。文法自体は、述語が最後にくる回りくどさがどちらかと言えば日本語よりのようだ。あくまでどちらかと言えばなので、やっぱり日本語とは似ても似つかない。

 元の世界と同じ十進法だし、一日は二十四時間で一年は三百六十五日だ(ただし閏年はない)。けれど一は『一』じゃないし、五月は『五月』じゃない。膨大な単語を覚えなくては、文字通り話にならないのだ。

 俺を拾ってくれたリリアンさんを始めとするこの国の人たちは、俺をあたたかく迎え入れてくれた。服や教材など必要なものを与えてくれるし、誰もが笑顔で話しかけてくれる。東京という都会で育った俺には少し新鮮だった。

 サムさんが知人に譲ってもらったというカードはなんとか全部覚えた。何枚あるのかは恐ろしくて数えていないが、先日何故か誇らしげにリリアンさんがそのことを報告すると、さすがにサムさんも驚いたのか俺の髪をぐしゃぐしゃに撫でながら褒めてくれた。教師の言うとおり、もう少し頑張ったらもっといい成績が取れたようだ。惜しいことをした気もする。

 最初にもらった教科書を今開くとなんとなく読めるのだから、手伝ってくれた人たちに感謝しなければならない。今は文法をメインに教科書で学びながら、新しい単語が出てきたらそれも覚える。リリアンさんは辞書を買ってくれようとしたけれど、辞書の言葉は難しすぎてまだ理解できなかった。その代わり、ノートを作って自分なりにまとめている。自分しか使わないので日本語を書き散らしても全く問題ない。

「さて、と。それじゃあ帰りましょうか、ルカさん」

 リリアンさんが満足げに笑う。明日の分の下ごしらえも終わったらしい。俺は頷いて、テーブルの上に散らかしたものをさっさと片づけた。

 ここの人たちはみんな優しくしてくれるけれど、それはリリアンさんのお陰だと思っている。彼女が拾った『外国人』だから難なく受け入れてくれるのだ。それは言葉がほとんど通じない頃から、なんとなく察することができた。それが彼女の人徳がなせる業なのか、それとも別に理由があるのかはわからないけれど。

 祭りの日。リリアンさんがヘンリーさんとハーヴィーさんに捕まっている時、マルヴさんにそっと耳打ちされた。

『やっと通じるみたいだから言うけどね。あんた、もう何も言わずにいなくなったりするんじゃないよ。出て行く時はちゃんとリリィに言いなさい。じゃないと、あの子はあんたを見つけるまで探し続けるよ。……いつまででも、ね』

 その声はいつになく真剣で、俺はただ頷くことしかできなかった。

 実際、そうなのだろう。あの日、もし俺があの場で見つからなければ彼女は探し続けた。そう、どこか確信に似た思いが胸にあった。

 夜空の下を二人連れ立って家へと歩く。繋いだ手をぷらぷらと子供のように軽く振るのは、多分彼女の癖。

 リリアンさんは俺の髪と瞳を気に入っているらしい。夜空のように綺麗だと言う。俺にとってはありふれた色なのだが、確かにこの国では珍しいようだった。

「ねえルカさん。ニホンにも、星はあるんですか?」

 星が瞬く空を見上げながら彼女が思いついたように問う。ここのところ、この手の質問が多い。常連客に「料理にしか興味がない」と言わしめる彼女だが、どうやら「ニホン」には興味があるらしい。

 彼女に倣うように空を仰ぐ。満天の星空はこういう時に使う言葉なのだろう。都会育ちの俺は微かな光がぽつぽつと灯る夜空しか知らず、初めてここの星空をちゃんと見上げた時は感動したのを覚えている。

「ある。星も、セイザも」

「……セイザ? なんですか、それ」

 リリアンさんが俺を見つめてきょとんと首を傾げる。星空があれば星座もあるものだと思っていたので、少しだけたじろいだ。

 説明に少々困りながら「星と星を線で繋いでいろんなものの形を作る」のだとたどたどしく答えると、彼女の青い瞳がきらきらと星のように輝いた。女子にこういう類が好まれるのは異世界でも変わらないらしい。だけど「じゃあ作ってみて」とお願いするのは間違っている。無茶振り駄目、絶対。

 昔の人が勝手に作ったものだしちっとも理解できないとしどろもどろに答える俺に、リリアンさんはそうと呟きながら少しだけ項垂れる。それから気を取り直すようにまた空を仰いだ。

「素敵な国ですね、ニホンって」

 多分星座が日本にしかないと勘違いをしている。だけど訂正はしないでおこう。面倒臭い。

 リリアンさんはいつか俺が故郷に帰れると思っている。帰れないという選択肢をまず考えていない。はっきりとそう言われたことはないけれど、なんとなくそうだと察することができた。帰る方法を模索するにあたってはまたサムさんにお願いをしているようだ。多分、彼が読んだトリップものの小説を紹介してもらっている。ベタだ。

 拾われた当初から思っていたことではあるが、リリアンさんは甘やかされていると思う。バイトすらせず親のすねを齧ったことしかない俺が言うのもあれだけど、妹気質と言うか、彼女は甘やかされるのに慣れていて、おまけに多分無意識でそれをやっている。

 この街において、「隣の子供は自分の子、向かいのお婆ちゃんは自分の祖母」だと彼女は言った。それが彼女の場合、顕著なのだ。確証はないけれど、そんな気がする。

 それを悪いとも、ましてや不快だとも思っていない。ただ、なんとなく不思議に思っているだけ。……思うだけで聞けずにいる俺は、きっと弱虫なのだろう。

「……この国も、いい国だよ」

 ぽつりと呟いた俺の声に、リリアンさんは嬉しそうに笑ってお礼をくれた。

 彼女は俺が故郷に帰れると思っている。だが、俺は思っていない。帰ったところで俺に居場所はない。きっと、草薙琉伽は死んでいるから。

 悲しいとは思う。恋しいとは思う。けれど、絶望は感じなかった。それは彼女のお陰だと痛いくらいに理解している。

 拾ってくれた彼女には恩情を感じている。感謝してもしきれない。多分、俺は彼女に依存しかけている。

 だけど、時々不安になる。もしリリアンさんが、「俺が故郷に帰れるまで」の期限付きだから面倒を見ているのだとしたら。俺が帰れないと知ったらどうなるのだろう。

 きっと悲しんでくれる。優しい彼女は同情を寄せてくれる。だけど、その先は?

 難なく会話も読み書きもできるようになったら、俺は出て行くべきなのだろう。いつまでも『可哀想な迷子』ではいられない。そう思うのに、離れがたい。

 一度失って、もう一度手に入れた新しい居場所。この街は、あの家は、彼女の傍は、泣きたくなるくらい心地好い。

「ねえ、ルカさん。いつか、二人で勝手にセイザを作りましょうね」

 振り向いたリリアンさんが、悪戯を持ちかける子供のような笑みを見せる。つい目を丸くして、それからつられるように笑って頷いた。

 俺を救ってくれた彼女に何かしてあげたい。憂う彼女の為に、話くらい聞いてあげたい。

 言葉を満足に話せない俺には、そう思うことすらおこがましいのだろうか。

ルカ視点の場合はサブタイトルが平仮名なので、それを目印(?)にしていただければ

次回からはルカ視点の時も前書きには何も書きません

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