震える瞳
初めての投稿です。リアルに描けたでしょうか?
梢には秘密がある。誰にも言えず、たぶんお墓の中まで持っていくに違いない暗い過去がある。
梢は商売人の家に生まれた。兄がひとり。母は内職をしながら、生活を助けていた。
あれは、小学校の二年生の時だった。
魔がさしたのだ。休み時間、誰もがいない教室の中で…梢は隣の席の女の子の机の中の筆箱を手にした。中にあったのはフェルトペン。思わず知らず、自分のカバンの中に…そして、また隣、そして、また隣…なんとクラス中の机の中から、いろんなものを盗んでしまったのである。どういう心理状態だったのか?バレるに決まっているのに、自分で自分が制御できぬまま、梢は突き動かされるように犯行に及んだ。後先を考えない幼女の行いは、クラス全員の知るところとなった。騒ぎ出す子供たち、教師はやむなく、身体検査を行い、結果、彼女は驚きをもって、侮蔑される人間となったのである。
それにしても、何故また?心理の奥に満たされない思いや、欲しいものが買えない家庭の事情も影響したのだろう。
しかし、本人の消えてしまいたくなる罪悪感…原罪…周囲の警戒心…一度地に堕ちた評価はそれから、彼女についてまわり、彼女の暗い暗い過去となった。中学、高校と進み、梢は倫理観を高くもつ人間に成長した。しかし、小学校の同級生には会いたくない。小学校の6年間は、できれば消去したい、恥ずべき日々だったのだから。梢の心の中には幼女がいる。幼女は息を潜めて震える瞳をしている。今日も明日も。
まずは、短編から…拙い描写力ですが、がんばります。