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とある大学生の再会

あれから1週間ばかり過ぎただろうか。


あの日以来、私は1個上の階に居座ることにした。


理由は明白、あの爽やか系リア充草食男子に会いたくないからだ。


シャーペンと消しゴムは寄付でもしたと思えば何てことない。別に親の形見でも親友からのプレゼントなわけでもないのだから。




しかしある日、また私の隣に誰かが座った。


パーソナルスペースが侵略されている!


私は急いで隣の席に移動しようとした。


「ちょっと、それマジ傷つくんですけど」


聞いたことある声だな、と思い顔を上げるとそこには爽やか系リア充草食男子の少しむくれた顔があった。


きっと多分、1週間前のあのシャーペンと消しゴムを貸した男子だろう。多分。最近若者は皆似たような顔だからry


私は「あーすみません」と言いつつ、もともと座っていた所に座りなおした。


「なんでいつもの階にいないの?俺結構探したんだけど」


爽やか系リア充草食男子はちょっと非難がましい口調で聞いてきた。


「貴方に会いたくないからです」って言えたらいいのだけどそんなこと言えるはずもない。


「ちょっと気分転換に…」


そう言うのが精いっぱいだった。


「ふーん…」


明らかに納得してない声。そりゃそうだ。これで納得したらただのKYだろう。


「それで、今日はどういったご用件で…」


恐る恐るきく私に爽やか系リア充草食男子は「ああ、そうだ」と言ってかばんの中から1週間前に貸したシャーペンと消しゴムをとりだした。


「先週はさんきゅー。本当に助かったよ。これ、お礼」


そう言って渡してきたのはブラッ●サンダービッグサイズ。購買で48円で売っている。見かけと値段によらず、意外とうまいので生徒の間では結構な人気がある。


「そんな、お礼なんていいのに…」


戸惑う私に爽やか系リア充草食男子は「いいのいいの」と言って押しつけてきた。


「それじゃあ」と遠慮がちに受け取る私。こんな時の反応ってどうしたらいいのか超困る。


リア充の私の友達とかならきっと「ありがとうございますっキュルン★」とか言ってバックに花でも飛ばしながら男心を一発で落すのだろうが生憎人間嫌いの私にそんなスキルがあるはずもない。


おどおどしながら礼を言う私を爽やか系リア充草食男子は珍しそうに見つめている。


私を凝視するのはやめてくれ。いたたまれない。この場から立ち去ってしまいたい。立ち去るための言葉すら言うのがめんどくさい。


しばらく無言が続いた。


リア充は確か無言が嫌いなんじゃないのか?どうでもいいけど早くここから去ってくれ。


そんな願いも虚しく爽やか系リア充草食男子は話し始めた。


「俺さ、政宗っていうんだ。君の名前、なんていうの?」


実にナチュラルなナンパです!流石リア充です!リア充の技、ご披露ありがとうございます!


いや、こんなこと考えてる場合じゃない!私は自己紹介が大嫌いなのだ。


自分の名前を恥ずかしげに人に伝えるあの空気が耐えられない。


あの「よろしくぅモジモジ」って感じがどうにもくすぐったいのだ。


しかし相手が名乗ったからにはこちらが言わないのは敵前逃亡になるだろう。時代が時代なら切腹に値する。


しょうがなく私は名乗った。


「…春奈です」


「学部は?何年?」


くっそーそこまできくのか!


「文学部の2年…」


「へー2年か。俺は3年なんだ。学部は経済だけど。ヨロシク」


そういうと爽やか系リア充草食男子…いや政宗先輩は手を差し出してきた。


何なんだ金よこせってことか。


いやいやまさか、流石に握手を求めてきていることくらい分かるが私は握手が自己紹介の次位に苦手なのを知っての狼藉か。


っていうかヨロシクってなんだ。何をヨロシクなんだ。これからもシャーペン貸すのヨロシクってことか。


私は「あ、はい」と言って手を出した。全く自分が嫌になる。


政宗先輩は握った手をブンブンと数回振った後離した。


ようやくこれで解放される。そう思ったのもつかの間、先輩はにこやかに話し始めた。


「俺、次授業ないんだ。もうちょっと話さねえ?」


おいいいいいいい加減にしてくれよおおおお私のライフは0ですサーセン!っていうかこっちの都合は無視かい!


「あの…私次授業あって」


敵前逃亡になるが三十六計逃げるにしかず。


しかしそんな必死の言い訳もあっさりと砕かれた。


「あれ?いつもこの時間図書館で本読んでるよね?授業あったの?」


なんで知っている…っ!そういえばこの前会った時「たまに見かけるんだ~アハハ」って言ってた気がしないでもない。


「あー…授業じゃありませんでした。でもちょっと今日は用事があったような…」


苦し紛れの言い訳をする私に政宗先輩は少し傷ついたような顔になった。


「そっか…それじゃあしょうがないよね。っていうか知らない野郎にいきなりこんな事言われても困るよね。ゴメンネ」


その様子はさながら置いてきぼりを食らったチワワを彷彿とさせた。


うわあああああその目をやめろおおおおおおお!


自分の貧困なコミュニケーションスキルが発動してしまうだろが!


気が付いたら私は「ちょっとだけなら…」と言っていた。


なんたること。技はすでに起動していたのだ。


自分のバカ


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