ゴリラのお医者さん
数ある中からゴリラを選んでいただきありがとうございます。
俺は病院の待合室で名前を呼ばれた。鼻水を啜りながら、重たい足を引きずる。
ぼんやりする頭を抱え、診察室に入った。
目の前にいたのは白衣を着たゴリラだった。
「ゴリラのお医者さん!?」
「皆そう言うんだけど、とりあえずそこに座ってね」
そう自然と言うのは目の前のゴリラ。
「今日はどうされましたか?」
「鼻水がとにかく出て、微熱があるし身体がだるいです」
ゴリラは太い指を器用に動かして聴診器の準備をする。
そして聴診器を俺の胸に当てた。
「いつもの風邪と違ったりしますか?」
「まぁ、いつもの風邪っぽい気もしますけど」
「じゃあ、風邪ですね」
「ちゃんと診断しました?」
「皆そう言うんだけど、おそらく風邪ですよ」
ゴリラは俺に目もくれずにカルテにペンを近づける。
「本当ですか?」
ゴリラはペンを置いた。
「ゴリラだから診察ができないと思っていませんか? 人間だったらちゃんと診察できる? そういう人、よくいるんですよ。ゴリラから見れば人間なんて、かなり違って見えますけどね」
そう言われても、納得できない。
「いや、風邪かもしれないですけど、違う病気かもしれませんよ?」
「そうかもしれません。でも今見るかぎり、風邪以外に怪しいと思われる病気の特徴はありません。大体、『ゴリラのお医者さん?』って聞く人のほとんどが風邪です。頭も正常に働いている証拠です」
俺はたぶん、ただ悔しいだけ。でもこのまま引き下がれない。
「じゃあ重症の人はなんて言うんですか?」
もはやただの興味本位だった。
「『とにかく薬出してください』ってうずくまっているかな」
「⋯⋯じゃあ、薬出してください」
「分かりました」
ゴリラはカルテに書き込むと、部屋の奥へ行ってしまった。
少しすると戻ってきた。
ゴリラの手には、分厚い紙の袋。
「はい、ゴリラ特製の薬。良くなったらやめていいよ。こっちのお茶は飲めたら飲んでくださいね」
ゴリラ特製だって。なんか効きそう。
「すみません、ありがとうございます!」
「五日経っても治らなかったら、また来てくださいね」
「はい!」
俺は大事そうに受け取った。
『こういう人は、また次も来るんだよね』
ゴリラがなにか呟いたが、声が小さくて聞き取れない。
「先生、なにか言いましたか?」
「お大事にしてください」
「はい!」
* * *
俺は軽い足取りで帰路についた。
「もし、薬が効いたら、またあの病院にいこうっと」
お読みいただきありがとうございました!
ゴリラのお医者さんも日頃いろいろと言われているんでしょうね⋯⋯。皮肉っぽすぎますかね?汗




