帰郷324
核露にとってのアキレス腱、最も弱い部分と言っても過言では無く、現に初老の男性は火内のアキレス腱を切ろうとした。
「所で火内君、出来ればもう一人、紹介して貰いたい子がいるんだがね」
「なに……」
「怒らないでくれ給え、君の友達の火内君を調査し直した所、不思議な子がいたのだよ。この鳥かごに身元不明の子供が歩き回っていると」
「……そうですか」
「ふむ……少しは動揺してくれたみたいだが、対策はしているようだね」
手を握る事で、表面上では隠しきれている内面に触れたが、火内の手が内面の動揺で力が入ったが、手を握り潰す事は無かった。
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「さっきは済まなかったね。脅すつもりでは無かったのだよ、我々は、君達の仲間になりたくて少々下品な事をしてしまった」
「家族、友達、仲間……それは自分にとっての逆鱗だというのは忘れないで下さい」
「もちろんだとも、私の過ぎたる行為を許して欲しい」
円卓のテーブル、その上座に座らされている火内に、ドラゴンの瞳を持つ者達も座っている。
交渉の座のテーブルに付いているというよりは、談話をする為に席に着かされているような雰囲気ではあった。
「少々下品なマネをしてまで、我々がドラゴンに固執する理由はだね。我々はドラゴンになれないのだよ」
「ドラゴンになれない?」
「ドラゴンの魂の欠片が人間の魂と融合したが、肉体をドラゴンに完全に変異をさせる程では無かった。我々に出来るのは本来の瞳を取り戻す事だけ」
「ドラゴンに固執する理由は、ドラゴンという力を手にしたいのでは無いのだよ。正しくあるべき姿に戻したいだけなのだよ」
「正しくあるべき姿に戻したいだけ……この鳥かごに居る人は、ドラゴンの系譜なのですか?」
初老の男性の口ぶりを推測するに、正しくあるべき姿というのはドラゴンの姿と捉える事が出来る。
「そうであれば嬉しい話なのだが、ドラゴンの系譜は極僅か。ドラゴンの魂の欠片を手にした者がある日突然、ドラゴンの兆候を見せる時もある……所で火内君、この本を知っているかね」
「これは……読んだ事があります……読んだ事はあるんですが……」
自分の目の前に置かれたのは、一冊のライトノベルであった。




