Ep 36:魔境入口への進軍⑤
キャンプの別の側では、風に揺れるピンクがかった短髪の女騎士イヴィリアが戦場を駆け巡っていた。
彼女は先頭に立ち、分隊員たちを率いて迫り来る魔物を抑え込んでいた。
「第六位氷魔法<寒氷裂桩>」
彼女は魔法で七本の氷の槍を生成し、それを遠くの魔物に向かって放った。夜の闇に視界が妨げられているにもかかわらず、イヴィリアの攻撃は敵の急所を正確に貫いた。
「咲け!」
貫かれた魔物たちの体内で氷の槍が瞬時に炸裂し、枝のような氷の刺が滑らかな表面から突き出し、魔物たちはサボテンのような奇怪な姿になった。遺骸は氷の刺によって地面に固定され、他の魔物の進行を妨げる障害物となった。
「あ、あれは無詠唱魔法か!?すごい……」
「しかも第六位の魔法だ、まったく見事だ」
「我々も負けてはいられない。アルファス王国の力を見せつけてやれ!」
「「「おおおおお!!!」」
この世界の人々が一般的に習得する魔法は一から五位であり、若くして第六位の魔法を使いこなすイヴィリアに、アルファス王国の兵士たちは心から感嘆した。
魔法の習得は容易ではなく、第六位の魔法を扱うためにはレベル300に達する必要がある。しかし、誰にも教わらず、資料もない状態では習得は非常に困難だ。
「順調ですね。私もこちらを頑張らなければ」
「セイドロン隊長、私に任せてください!」
「あっ、ずるい!先に行くなんて!」
「私の力を見せるわ!こんな程度の敵、セイドロン隊長の出番はないわ!」
セイドロンが出るまでもなく、同じ聖国<枢玉騎士団>に属する女騎士たちは競って視界内の魔物を殲滅していた。
「あなたたち……意気込みは素晴らしいですが、無茶は禁物です。自分の身を大切にしないと、私が心配しますからね」
「は、はい……」
「やあ〜」
「了解しました、セイドロン隊長〜」
セイドロンに叱られた彼女たちは、火光に照らされて頬を赤らめた。
仲間たちが近くでラブコメを繰り広げる中、最後の小隊長である聖国騎士――エフィス・ランドールは羨望の眼差しを向けていた。
「セイドロンのやつ、やっぱりモテモテだ……くそ、羨ましい!」
彼は再び自分の小隊に目を向け、明らかな優位を確保しているため、隊員たちの士気は非常に高まっていた。
「敵の数が減ってきたぞ!もう少しだ!」
「エフィス隊長について行け、この魔物どもを一掃しろ!」
「なんて見事な剣技だ、さすがエフィス隊長!」
セイドロンの隊と比べて、エフィスの指揮下の騎士たちは全員男性であった。
自分に熱い視線を送る壮漢たちを見て、エフィスはなぜか無力感を覚えた。
(なぜ……同じ精鋭なのに、セイドロンだけがあんなに人気なんだ……?こっちには男ばかりで、褒められても嬉しくないぞ……くそ!世界は不公平だ)
(はあ……考えれば考えるほど悲しくなる。イヴィリアの方はどうなんだろう、順調かな?)
おそらく気持ちを振り払おうと、エフィスは視界の外にいるイヴィリアのことを気にかけ始めた。
確かに魔物の数は多かったが、調査部隊は圧倒的な優位を保っていた。正確に言えば、聖国部隊の奮闘により、平均レベル200の魔物群は全く脅威にならなかった。
約10分後、魔物の攻勢はようやく弱まり、さらに5分後には各キャンプの戦闘が終了した。
戦況を正確に把握するために、ノーデン団長は偵察能力に特化した斥候を数名派遣した。彼らは夜の闇の中でもスキルを駆使して魔物の位置と数を把握することができた。
今回の襲撃に現れた魔物の総数は約500体、団員たちの推測によれば、魔物のレベルはおよそLV200からLV250の間だという。
混成部隊の死亡者は0、負傷者は24名であった。
負傷者はすべてアルファス王国に所属する騎士たちであり、幸いにも全員が軽傷で、魔法治療後に戦線へ復帰できる見込みだ。
「お疲れ様、みんなよくやってくれた!」
「周囲に他の敵がいないか確認し、負傷者の治療を急げ」
「次の襲撃に備え、警戒を強化する人員を配置しろ。他の者は体調を確認したら、速やかに休んで体力を温存しろ」
ノーデンは慣れた手つきで指示を出し、後処理を進めていた。
その間に、彼は部下たちの報告を聞き、この夜襲の違和感について考え始めた。
(Lv300未満の魔物が二重結界を突破し、しかも指揮する上位魔物も見当たらない……これはどう考えてもおかしい。早急に本国へ報告しなければ)
戦闘が終わったばかりであるにもかかわらず、心の中に不安を抱えるノーデンは、陣営の整備が終わり次第、再度数名の小隊長を招集し、意見を交換して手がかりを探ることに決めた。
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