間章:エレノアの憂鬱
大切な人を見送った後、彼女は一人で庭を歩いていた。
爽やかな水色のショート髪を持ち、セーラー服を着たその少女は、どこに行っても妙齢の高校生と見なされるだろう。
彼女はユリオンに仕える騎士――エレノアだった。
半日前、彼女はユリオンの側を離れ、彼が友人であり創造者であるリゼリアと二人きりの時間を持てるようにした。
(あの二人、うまくやっているのかしら……?)
自分が離れる時の雰囲気を思い出し、エレノアは心配せずにはいられなかった。
陶器のように繊細な頬が、わずかに陰鬱な色に染まる。
ユリオンの側に立つ友人を見ると、何故か言いようのない苦しさが胸に渦巻いた。
「ユリオン様……リゼ……」
一瞬、自分の姿がユリオンの側にいるリゼリアと重なった。
そして胸の中の苦しさがさらに増し、心が何か見えないものでぎゅっと締め付けられたようだった。
(なぜ……なぜ、私…この身がこんな感情を抱くの?喜ばなければならないはずなのに、あの二人が……いつも一緒にいた二人が、今再会できたのだから。彼女たちの子供であり、騎士であり、友人であるこの身が喜ばなければならないのに……でも、なぜ……)
エレノアは真剣に考える時や何かを対処する時に、第一人称を『私』から『この身』に変える習慣があった。
エレノアは唇を強く噛み締め、この感情から逃れようとした。しかし、口の中に淡い鉄の味が広がるまで、それが無意味であることに気付かなかった。
過去の断片が記憶の奥底から次々と浮かび上がってきた。
その中でも最も印象に残っているのは、自分が生まれた日のことだった――
「エレノア……君の名前はエレノアよ」
自分と同じ容貌の少女……いや、むしろ自分の容貌は目の前のこの少女を模して作られたのだ。
銀髪紅瞳の美しい少女――リゼリア、彼女こそが自分の創造者だった。
意識は非常に朦朧としており、言葉を発することも、体を動かすこともできなかった。しかし、この瞬間からエレノアは深く理解した、このか弱い少女こそが自分の『創造者』だ。
「エレノア……エレ、あの人のそばにいてほしいの――」
「彼はね、私がいないとすぐに無茶をするの。だから、もし私がいなくなったら、誰かがそばにいて、支えてくれる必要があるの。」
「彼の名前はユリオン。とても頼りになって、優しいけど、無理をしてしまう人なの」
「エレ、彼をしっかりと支えてほしい。それが私の願いなんだ……」
思い出の画面はここで途切れる――
しかしエレノアは、自分が困惑している理由に気付いた。
「この身に託された責任、もう終わったの……?」
先ほど思い出した会話、リゼリアの一方的な頼み。それがエレノアが生まれた理由に他ならない。
『いない自分の代わりに、ユリオンを支えること』
この願いを込めて、リゼリアはエレノアを自分そっくりに作り上げた。
リゼは自分がユリオンのそばに長くいられないことを知っていたが、心残りがあって去ることができなかったのだ。
だからこそ、エレノアがいた――
純粋にユリオンのために存在するエレノア。
しかし今、かつて姿を消していたリゼリアが、この<方舟要塞>に戻ってきた。
しかも以前のように、ユリオンと一緒に行動している。
元々自分の場所を、再び現れたリゼリアに取られて……いや、それは元々リゼリアの場所であり、エレノアは一時的にそれを引き受けただけだった。
(あの方……ユリオン様、もうこの身を必要としていないの……?それなら、この身は一体どうすればいいの……)
「エレ、どうしたの!?顔色が悪いわよ」
エレノアを呼び止めたのは、彼女の友人である銀髪の少女だった。
ユリオンとの話が終わったようで、銀髪の少女――リゼリアがここに現れた。
突然現れたリゼリアを見て、エレノアの目には涙が浮かんできた。
「――リ…リゼ?」
(え、どうして、どうして私……)
涙が彼女の目から次々と落ち、急いで拭き取ろうとするが、止まらなかった。
「エ、エレ!?どうして泣いてるの……な、何かあったの?」
「うぅ……リゼ、私、私一体……うぅ――」
「エレ……」
子供のように泣きじゃくるエレを見て、リゼは急いで彼女を抱きしめた。
「大丈夫よ、エレ……私がいるから」
彼女はエレの背中を優しく撫で、柔らかな言葉で泣き止まない少女を慰めた。
顔に伝わる温かく柔らかな感触に、エレノアの混乱した思考は次第に落ち着いていった。
何も言わなくても、リゼリアは鋭く察していた。エレノアに影響を与えている無形の何かを――
(この子が私の前でこんなに悲しく泣くのは初めて……一体何があったの……いや、分かっているわ、エレがこんなに心を痛める原因は――彼しかいない)
リゼリアの脳裏に浮かぶのは、つい最近一緒にティータイムを楽しんだ銀髪の青年だった。
(きっと……またユリオンのことね……何とかしなきゃ)
リゼリアにとって、エレノアは自分の娘であり、友人でもある。大切な人がこんなに悲しんでいる姿を見て、放っておくことはできなかった。
それで、彼女は内心決意を固めた――
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