Ep 3:昇進した新人冒険者たち③
「これで君たちの疑問は解けたと思いますが、他に補足は必要ですか?」
セノスは落ち着いた目でガベートを含む四人を見回した。
対話の始まりから一言も発していなかったユリオンたちも軽く頷いて応えた。
皆の反応を確認したセノスは、次の議題を切り出した。
内容はユリオンたちの昇進に関するものであった。冒険者になってわずか三日目でそんな話が出るとは、ユリオンにとって予想外だった。
「昇進…?本気か?俺たちは一昨日登録したばかりだぞ、これはあまりに突然だ」
ガベートは呆れたように言ったが、セノスはただ微笑んだ。
「君たちがブラックスチールの<レッドライオン>を倒したことを考えすれば、実力面での問題はありません。功績についても、君たちのおかげで昨日の討伐が順調に進めました。彼らが敵対する巨大な組織の一部であっても、君たちがいなければ大変な戦いになり、多くの犠牲者が出たであろう」
「今回の昇進は<冒険者ギルド>全体の意思も含まれています。どうか受け入れてほしい」
「うーん…そこまで言われると断りづらいな。わかった、受け入れよう。そうなると、次のレベル…ホワイトアイアンに昇進するってことか?」
冒険者のランクは低い順に、グレイストーン、ホワイトアイアン、ブラックスチール、スチールジェム、シンブリルと分かれている。ガベートたちは現在グレイストーン、つまり新人冒険者だ。
しかし、ガベートの推測に対してセノスは微かに首を振った。
「違いますよ。ガベートさん、あなたが昇進するのはスチールジェムです。残りの3人はブラックスチールになります」
「……はあ?」
異常なほどの破格の待遇に、ガベートは目を見張った。彼の驚きを理解したセノスは続けて説明した。
「確かに破格の昇進ですが、これは慎重に考えた結果です」
「おいおい、突然新人にこんな待遇を与えたら、俺たちが恨まれるんじゃないか?」
「そうですね……だからこそ、皆さんに昇進試験を受けてもらいたいのです。皆さんの能力なら問題ありませんし、不満を持つ冒険者たちにも実力を証明できます。」
この決定は、名目上の隊長であるガベート一人では簡単に下せないため、<伝訊魔法>でユリオンの意見を求めた。
【首領、どうしますか?】
【……もう低調に行動するのは無理だ。受けよう】
【了解しました】
ユリオンの最初の計画では、徐々に名声を積み重ね、疑われないペースで進むつもりだった。しかし、今の決断ミスでチームが急速に注目されることになり、今後の活動に不必要な厄介事を招くのは明らかだった。ユリオンにとって、これは完全に自分の失態だった。
(指揮者として、やはりまだ未熟だ……)
計画は変化に追いつけず、すべての原因が自分にあることにユリオンは自責の念に駆られた。
(でも……全てが俺のせいとは言えないだろう?あの<レッドライオン>がそんなに有名だなんて誰が知ってたんだ!?しかも、俺はできるだけ手加減させた。結局、敵が弱すぎたんだろう?あんなレベルで『強者』とされるなんて、詐欺みたいなもんだ!!!このセノスって奴、本当に俺たちを騙してないか?)
ユリオンの苦悩を見抜いたのか、別のソファに座っていたシーエラが彼に心配そうな視線を送った。
「問題ない。そうしよう。ところで、なぜ俺だけがスチールジェムなんだ?」
「ああ、もちろんです。それはガベートさんが同時に倒した二人のうち、一人がブラックスチール、もう一人がスチールジェムだったからです。そのため、ガベートさんの評価が高くなったのです」
「なるほど」
ガベートにとっては、敵の実力は似たり寄ったりだったが、話を複雑にしないために心に留めておくことにした。
最後に報酬の話題に移り、今回のMVPとされたガベートのチームには、ガベート以外のメンバー一人一人に70枚の金貨が渡され、ガベートには90枚の金貨が与えられた。
ユリオンたちが収集した情報によると、この国の平均年収は150~200枚の金貨であり、貨幣は3つの階級に分かれている。銅貨、銀貨、金貨で、価値は十進法に従っている。
10枚の銅貨が1枚の銀貨、10枚の銀貨が1枚の金貨に相当し、その逆も然り。
つまり、チームの4人で合計300枚の金貨を得たことになり、これは一家四口の半年間の収入に相当する。
「気前がいいな」
「ギルドの評価と報酬は、任務の難易度、冒険者のパフォーマンス、達成度に基づいて決定されるので、これは皆さんの努力に見合ったものです」
「こんなに重用されるのは恐ろしいな。その後、いろんなことに使われそうだ」
「有能な者には多くの仕事がありますが、適切な報酬も用意しますので、ご安心ください」
このペースでいけば、短期的には活動資金に困ることはなく、もちろんユリオンには<ヒュドラ>支部から回収した大量の資産もあるので、元々問題はなかった。
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