Ep 33:初めての依頼⑥
既に我慢できないガベートが真っ先に突進した。
人数で劣る側が攻撃を仕掛けるとは予想外で、ターゲットにされた男は呆然と立ち尽くしていた。
「お前からだ、くらえ!」
相手に反応する隙を与えず、ガベートの鉄拳が敵の顔面に炸裂した。まるで叩き潰されたスイカのように、赤い肉片が四方に飛び散り、他の犯罪者たちに降りかかった。
「……あ?ぎ、ぎゃあ——!?」
恐怖は波紋のように広がり、何が起きたのか理解した悪党たちは、恐怖に駆られてガベートのそばから逃げ出した。
「おいおい、ずいぶん冷たいじゃないか。俺たちをしっかり懲らしめるんじゃなかったのか?そんなに遠くへ逃げて何をするつもりだ?」
「ば、化け物だ!近寄るな!!!」
恐怖に支配されそうになりながらも、冒険者としての本能は戦うことを決意させた。
彼らは素早く二つの隊に分かれた。一方は近接戦闘に長けたガベートと対抗するために、魔法に長けたメンバーを前衛の盾役五名が守りながら、3~4位の遠距離魔法で牽制した。
もう一方はシーエラとティナの方に向かい、彼女たちを人質にしようとした。しかし、彼らが近づく前に、二体の巨人が地面から立ち上がった——
それは全身が岩で構築された、身長3メートルを超えるゴーレムだった。
ゴーレムは城壁のように厚い体でシーエラとティナを守った。
「魔物!?いや、召喚獣か…あの小娘は召喚師なのか!?」
「くそ、これじゃ近づけない!まずこいつらを片付けろ」
「強度は高くないはずだが、油断するな!」
ゴーレムを相手にする最も効果的な戦法は、ハンマーや戦斧などの打撃武器を使って関節部を破壊することだ。
四名の前衛は全力でそれぞれのゴーレムの脚に打撃を加えた。
ガン——ガン——ガン——!
岩を叩いているはずなのに、なぜか金属音が響き、まるで鉛の塊を叩いているような錯覚を覚えた。強烈な衝撃が彼らの武器から腕に返り、しびれを伴って一時的に動けなくなった。
「……」
「……」
その隙を逃さず、二体のゴーレムは腕を持ち上げ、目の前の四人を簡単に潰した。彼らは悲鳴を上げる暇もなかった。
「な、なんてことだ!傷一つない、これが本当にゴーレムなのか!?」
「もういい、あいつらを無視して、あの二人の女を攻撃しろ!」
「<風縛>」
「<雷槍>」
チンピラたちが目標を変えた途端、ゴーレムの後ろにいた二人の少女が対応に出た。ティナは第5位の風魔法<風縛>を発動し、風を無形の鎖に変え、遠くの数人をしっかりと縛り上げた。彼女はさらに魔力を操り、風を彼らの腕に巻き付けてから締め付けた——
ギシギシ——ギシギシ——ギシギシ——
骨が砕ける音と耳障りな悲鳴が同時に響き渡り、激痛が全身に走り、白目を剥いて気絶した。しかし、彼らはまだ幸運な方だった——
一方、シーエラの指先から放たれた数本の閃光が、縛られていない残党たちに向けて飛び出した。雷光は意図的に急所や臓器を避けて、獲物の全身に数多くの穴を開けた。焦げた臭いと血の臭いが鼻をつき、雷に打たれた者たちは次々と倒れ、苦悶の表情で体を蠕動させた。彼らの傷口からは絶えず鮮血が流れ出し、まるで地獄絵図が二人の少女の前に広がっていた。
怒りを発散するため、シーエラはあえて一撃で彼らを仕留めなかった。これほどの重傷を負えば放っておいても死ぬだろうが、死ぬまでの間、彼らは焼けるような痛みと激痛に苦しむことになるのは間違いない。
「この程度で済むなんて、君たちは運が良いわね。これが、彼を侮辱した結果よ」
シーエラの目は、氷のように冷たい視線を放った。
「7、8、9…うん!数は十分ね、シーエラお姉ちゃん~残りは処理していいよ」
「ええ、わかったわ。ありがとう、ティナ」
シーエラは微笑んでティナに感謝し、再び魔法で掃討を続けた。その一方で、ガベートの方の戦いも終わり、命令された生け捕り以外は皆、冷たい死体となった。
「なんで…こんなことが!?あ、あり得ない!あり得ない!あり得ない!」
戦いが始まってからまだ3分も経っていない。四十人以上のグループが大半削られ、残りの者も全て行動不能になっていた。
この光景を目の当たりにしたタイランドは、信じられない様子で口を開けた。仲間たちの悲鳴を聞いて、彼は自然と動きを止め、対峙していたユリオンのことすら忘れてしまった。
「喉が裂けても誰も助けてくれないよ」
「あ、い——!?」
「お前が言ってた通り、まずは手足を切り落とすか。それから賞金をもらいに行くとしよう。運が良ければ生き残れる…かもな?」
「く、くそ……」
タイランドのかつての狂言を真似て、ユリオンは冗談めかして話しかけた。言い知れぬ悪寒が全身を駆け巡り、体格の良いタイランドは震えながらユリオンを見つめた。この前まで軽視していた銀髪の青年が、今や彼の目には人間の皮をかぶった怪物に見えていた。
「ああああ!なめるな——!」
最後の勇気を振り絞って、タイランドは大剣を高く掲げ、力を込めてユリオンに斬りかかった。
しかし、その一撃はあまりにも弱々しく、無力だった。
「…この程度か?」
「ああ…ああ…!」
ユリオンは剣を抜かず、片手で落ちてくる刃を握り、少し力を加えるだけで滑らかな刃に亀裂が走った。
「さて、終わりにしよう——」
「ま、待て——やああああ!!?」
ユリオンは相手の言い訳を全く聞かず、空いた手で剣を抜いた。瞬く間に四つの斬撃が放たれ、タイランドの四肢が地面に転がった。彼が過度に苦しんで失血死しないように、ユリオンは首筋に手刀を振るった。もちろん力加減をして、彼の意識だけを奪った。
「お、そっちも終わったみたいだな」
同じく戦いを終えた仲間たちがユリオンに歩み寄ってきた。彼らは晴れやかな表情をしており、どうやら十分にストレスを解消できたようだ。
「次はどうするの?ユリオンお兄ちゃん」
「うん…とりあえず治癒魔法で、生き残った奴らの応急処置をしよう。死なない程度に回復すればいい」
「はいはい~」
ティナは木杖を振り、彼女を中心に柔らかい白光が空間全体に満ちた。
総勢40人の襲撃者のうち、戦いが終わって生き残ったのはわずか11人だった。生き残った者は全員両腕を粉砕されており、刑期を終えても労働力を失った彼らは、生存手段を失う運命にあった。
ユリオンはタイランドの頭に手を置き、<思考加速>と<記憶読み取り>を発動した。彼の記憶から、数多くの犯罪行為を掘り出し、さらに思わぬ収穫もあった。
(この街に潜伏している人身売買組織……そして、こいつはそこのボディーガードか?よし、うまく利用すれば、かなりの名声を得られるに違いない)
小隊の名声を上げるには、十分な功績を積む必要がある。巨大な犯罪組織を壊滅させることで、冒険者としてのランクを上げ、名声を高めて多方面から注目される。ユリオンにとって、この騒ぎはむしろ利益を生み出すものだった。
「じゃあ、俺はこいつを連れて地上に戻って、ギルドの連中に連絡を取る。シーエラ、チビ、護衛は任せたぞ」
「はいはい、わかってるよ……あんたに言われなくても」
「うーん……だから、チビって呼ばないでよ」
ガベートは片手で気絶したタイランドを担ぎ、冷たい目を返すシーエラとティナに見送られながら、遠ざかっていった。
その後まもなく、冒険者ギルドが大隊を率いて現場に到着した。死体があちこちに散らばる光景に、経験豊富な冒険者たちも思わず震え上がった。
本作をお読みいただき、誠にありがとうございます。
これからも引き続き頑張って執筆してまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
最後に――お願いがございます。
もし『面白い!』、『楽しかった!』と感じていただけましたら、ぜひ『評価』(下にスクロールしていただくと評価ボタン(☆☆☆☆☆)があります)をよろしくお願い致します。
また、感想もお待ちしております。
今後も本作を続けていくための大きな励みになりますので、評価や感想をいただいた方には、心から感謝申し上げます!