表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/169

Ep 20:リゼリアの過去④

「ユリオン、私の本名を覚えてる?」


「えっ…ああ、確か『リンオン』だったよね?」


「うん、やっぱり覚えてたんだ」


「ふふ、君に印象的な自己紹介は忘れられないよ…。ネットゲームで本名を名乗る人なんて初めてだったから」


リゼリアとの初めての出会いを思い出し、ユリオンは笑みを浮かべた。


当時、副会長になったばかりのユリオンは、ある日突然、前会長の『隠士教授』に呼び出された。


そこで彼はリゼリアという少女に初めて会い、新任の初仕事として、その新人の世話を任された。なぜユリオンに世話を頼んだのか、前会長は詳しく説明しなかった。


ネットゲーム初心者で、人見知りもするリゼリアは、緊張しすぎて自己紹介で失敗してしまったのだ。


「わ、私は…『リンオン』です!よ、よろしくお願いします!」


緊張で顔を真っ赤にした少女は、前会長に指摘されて初めて、自分の本名を口にしてしまったことに気づいた。その後もパニックになり、しばらくの間、ユリオンと会長は彼女を落ち着かせるのに時間を費やした。


「ははは、あの時は本当に驚いたよ。22世紀にもなって、ゲームに全く疎い新人を見るとは思わなかった」


「むむ——あの時のことを思い出さないでください。意地悪…」


「でも、それは貴重な思い出だよ。あの時の新人が、今では最も信頼できるパートナーになったんだ。先生の紹介のおかげで、本当に感謝している」


「ええ、私も…<Primordial Continent>を通じていろいろな人に出会い、今までにない生活を経験できたのは、教授のおかげです」


現実でも大学教授を務めていた前会長は、自分の名前を「隠士教授」としていた。ちょっと変な感じがするかもしれないが、確かに彼のイメージにはぴったりだった。過去にはユリオンとリゼリアをよく世話してくれて、ユリオンは彼を「先生」と呼んでいた。


「リンオン…私の名前はリンオン。でも今の私はリゼ…」


「……」


まるで何かを確かめるように、リゼリアの目はぼんやりしていた。何を言えばいいか分からないユリオンは、彼女の話を続けて聞くことにした。


「ねえ、ユリオン。君の目に映る私は、どんなふうに見える?」


なぜそんなことを聞くのか…元々そのまま言おうとしたユリオンだったが、リゼリアの真剣な眼差しを見て、その問いの意図を考え始めた。


「ふふ~難しく考えなくていいよ。見たままを言ってくれればいい。あ、でもセクハラはダメよ。」


「シーラーじゃないんだから、そんな馬鹿なことするわけないだろ…」


ユリオンの真剣な表情に気づいたリゼリアは、少しお茶目な口調で警告し、ユリオンは半目で反論した。


(見たままを言う…つまり外見のことか?うーん…難しいな。女の子の容姿を評価するなんて本当にいいのか?)


リゼリアの決意を見て、これ以上避けられないと悟ったユリオンは、腹を括った。


「銀色の髪…ルビーのような瞳、白く見える肌…とても綺麗だよ…」


まるでボス戦を超える難題に直面するように、ユリオンは頭を絞って言葉を考えた。


「そう…」


予想通りの答えをもらったのか、リゼリアは少し視線を逸らし、寂しげに微笑んだ。


「現実の私…リンオンとしての私は、そうじゃないの」


再びユリオンと視線を合わせ、リゼリアは言葉を整えた。


「私ね…物心ついた時から、体があまり丈夫じゃなかった。しょっちゅう病気して、いろんなことを人に頼らなきゃならなくて、家族にも迷惑をかけたの。それで学校も…小学校を卒業したら退学したの。あの時は大泣きしたけど、仕方なかったんだ。自分で自分を面倒見れないんだから」


「うん…」


まるで全ての希望を捨てたように苦笑するリゼリアの姿に、ユリオンは胸が締め付けられる思いだった。最も信頼する仲間なのに、彼女のことを何も知らなかった自分。どんな言葉で彼女を慰めたらいいのか分からず、無力感に苛まれる彼は、拳を握りしめ、その手が白くなるほどだったが、もちろんその手はテーブルの下に隠されていたため、リゼリアに気づかれることはなかった。


リゼリアの告白を聞いて彼女の過去に心を痛める一方、ユリオンの心の中にあったいくつかの疑問も解けた。


彼女が時々、公会の仲間たちを羨ましげに見ていたことや、自分が作った三人のNPCを自分に似せてデザインし、私服をセーラー服——女子高生の制服に設定していたこと。リゼリアは間違いなく、自分の願望をエレノアたちに投影していたのだ。


「だからあの時…君は去ったの?なぜ…なぜ、君は——」


ゲームの時期、リゼリアの突然の失踪は驚きだった。彼女は去る前日にエレノアをユリオンに託し、そして何も言わずに去り、再び連絡が取れなくなった。この事実の背後には、こんなにも重大な理由が隠されていたとは。彼女と日々を共にしていたパートナーとして、ユリオンは心に不満を抱いていたが、リゼリアの涙を見た瞬間、冷静さを取り戻した。


(違う、これが俺の言いたいことじゃない!苦しんでいるのはリゼなのに、何を文句を言っているんだ…情けない!彼女はその時、い俺を心配させないために、これを言わなかったんだ)


「…ごめん、君を責めるつもりはなかったんだ。ごめん、リゼ。俺…その時、何も力になれなくて、ごめん…」


(俺には何もできなかった…だから彼女は俺を頼らなかったんだ。もっと頼りになるように、先生のように…)


ユリオンの推測では、リゼリアを紹介した前会長は全てを知っていたに違いない。しかし彼は彼女の考えを尊重するため、最低限の内容だけをユリオンに伝え、口を閉ざしていたのだ。


「そんなことないわ!ユリオンは私にたくさん助けてくれたのよ……不器用な私に対して、ユリオンは一度も文句を言ったことがないし、アシェリや他の子たちとも仲良くしてくれたわ。それに、エレ、紅音(アカネ)、シェスティのような可愛い子たちも残してくれて、ユリオンのおかげでギルドにいた時は、本当に夢のように楽しかったの」


「そうか……君の役に立ててよかったよ」


(はあ……むしろ彼女に慰められてしまった、まったく……俺は一体何をしてるんだ?)


リゼリアの言葉は彼に少しの救いをもたらしたが、それでもユリオンは自分の未熟さをさらに悔やんでいた。

本作をお読みいただき、誠にありがとうございます。


これからも引き続き頑張って執筆してまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。


最後に――お願いがございます。


もし『面白い!』、『楽しかった!』と感じていただけましたら、ぜひ『評価』(下にスクロールしていただくと評価ボタン(☆☆☆☆☆)があります)をよろしくお願い致します。


また、感想もお待ちしております。


今後も本作を続けていくための大きな励みになりますので、評価や感想をいただいた方には、心から感謝申し上げます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ