Ep 16:群魔の軍勢⑦
「敵が突撃を始めた、止めろ!白兵戦の準備だ!」
前衛の虎人族の重戦士たちは並んでタワーシールドを掲げ、盾の壁を形成して巨大なカブトムシの突撃を防ごうとした。
「ぐっ!?」
「うわぁ!?」
逞しい虎人族の戦士たちは、葉のように簡単に吹き飛ばされた。カブトムシの突撃は全く勢いを失わず、まるで阻まれていることに気づかないかのようだった。
この魔物を選んだのは、カブトムシが自重の850倍もの重量を背負えるからだ。この力を攻撃に転用すれば、破城槌としての役割を果たせる。
「これは…現実なのか?」
「どうして虫がこんな力を持っているんだ!?」
「防げない、早く避けろ!」
虎人たちは悲鳴を上げながらカブトムシの巨大な角を避けたが、目標を失ったそれらは木製の城壁を突き破った。
「まずい、侵入されたぞ!」
虎人たちが防御体勢を整える間もなく、続いて魔物たちが次々と攻撃を仕掛けてきた。
身長2メートルのカマキリの魔物が、その巨大な鎌を振りかざし、武装した虎人戦士を盾ごと両断した。
同じく大きなドクガは、尾から毒液を噴射し、それを浴びた者は即座に倒れ、肉体が溶解した。
虎人戦士たちは命を懸けて反撃し、倒された魔物も徐々に増えていった。しかし、同時に倒れる虎人たちも増え続け、魔物たちは恐怖を感じることなく、ただただ虎人戦士に突進し続けた。
その時、遠方から火球と雷が飛来し、虎人戦士と魔物を一緒に吹き飛ばした。焼け焦げた犠牲者が次々と増えていった。それは魔物軍の中央に位置する術士軍団、骷髏法師たちが無差別に連撃を仕掛けてきたのだった。
「タイゴルさん、このままでは全滅します!早く族人たちを連れて撤退してください!」
「お前…ワシに逃げろと言うのか?」
部下の進言にタイゴルは不快そうに眉をひそめた。戦士として戦死することこそ本望であり、族人の前で逃げるなど死ぬよりも屈辱的だった。
「族長!今はそんなことを言っている場合ではありません、族長しか族人をまとめられないんです!もしここで倒れたら、誰が生き残った者たちを導くのですか!?」
「う……」
「俺の家族もお願いします、ここは我々に任せてください!必ず時間を稼ぎますから!」
周囲を見回すと、その進言をした青年だけでなく、他の戦士たちも全員がタイゴルに決意の眼差しを向け、その後、死を覚悟した背中を見せて魔物軍に突撃していった。
「今は屈辱に耐えねばならないか…分かった、頼んだぞ!」
「はい!」
リーダーと別れを告げた青年は隊に戻り、他の生存者たちと合流した。
「みんな、俺について来い!我々虎人族が最強の種族だと見せてやれ!」
「そうだ!この畜生どもに俺たちの意地を見せつけてやれ!」
「何があっても一匹道連れにしてやる、かかってこい!」
恒星が消滅する前に放つ最後の輝きのように、虎人たちは生死を顧みず、思いつく限りの手段を用いて、絶え間なく続く魔物軍と死闘を繰り広げた。
(だいたいこんなもんだろう。残りの兵を倒して、追撃を開始するが、生け捕りにして、全滅させるな)
虎人たちの捨て身の攻撃に対して、眠竜は心中に一切の揺らぎを感じなかった。冷静に魔物たちに指示を出し、虎人戦士を殲滅した後、村へ進軍させた。
情報が<諸国連盟>全域に確実に伝わるよう、生存者を残す必要があった。
「樹海の内部にはヴァンパイア、エルフ、ダークエルフ、樹精などの高級種族がいるらしい。竜人もいるのか?彼らがどの程度抵抗できるのか、楽しみだ」
虎人族に対する興味を完全に失った眠竜は、遠方を見据えた。
虎人族の難民が無事に逃げられるように、彼は進軍を一時停止せざるを得なかった。
待つ時間は長く感じられたが、収集した情報を整理することで眠竜はそれほど退屈せずに過ごすことができた。
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