Ep 14:群魔の軍勢⑤
犬人族が部落に到着してから一時間後、大群の魔物軍がついに山の向こう側から姿を現した。
(どうやら彼らは迎撃するつもりらしい。無謀だが、それで良い。データをたくさん収集できるからな)
空中に浮かぶ竜人の男性——眠竜は、厳戒態勢の虎人戦士たちを冷ややかに見下ろしていた。彼が指揮する魔物の平均レベルは300から400の間で、数は3,000頭に及ぶ。この数を短期間で集めるために、眠竜たちは魔物の質に妥協するしかなかった。
しかし、それでもこの世界の人々にとって、この軍隊は国家を滅ぼすに足る威力を持っていた。
魔物軍の編成は大まかに以下の通りである。
前衛——カマキリ、コガネムシ、カブトムシ、ドクガのような姿をした500頭の昆虫軍団。体はサイのように巨大で、平均レベルは300。
前衛——昆虫魔物と混ざり合った、様々な獣族の魔物が中心。数も同じく500で、平均レベルは300。
中衛——杖や弓を持つ骸骨やゾンビで構成された1,000の亡霊軍団。遠距離攻撃が可能で、魔法や矢のバリケードを展開できる。平均レベルは350。
後衛——人型の魔物とゴーレムが主で、数は1,000。進行速度が最も遅く、これが後方に配置された理由かもしれない。けれど、全員がレベル400で、その戦力は保証されている。
軍隊の最も後ろには、5頭の地竜がゆっくりと進んでいた。地竜のレベルは一律500で、この軍隊の最大戦力となっている。
「くそっ…終わりが見えない。一体どれだけいるんだ」
「絶対にこいつらを通してはならない。死守するんだ!」
「恐れるな!我々は誇り高き虎人戦士団だ。この魔物どもには決して負けん!」
士気は高まっていたが、数多くの敵を前に、不安の波が虎人の間に広がっていた。
「元気を出せ!背後には我々の家があり、お前たちの家族、友人、恋人、子供たちがいる。誰が彼らを守るんだ!?お前たちが退けば、彼らが魔物に襲われる。それで本当にいいのか!?戦士たち、答えろ!お前たちは何のためにここに立っているんだ!」
「だめだ!考えもしない!」
「冗談じゃない、絶対に指一本触れさせない!」
「おおお!かかって来い、畜生ども!」
「タイゴルさんについて行こう、我々の故郷を守るんだ!」
同胞たちの不安を見抜いたタイゴルは、天に響く怒号を放った。大いに鼓舞された虎人戦士たちは、興奮して叫びで応えた。
虎人部落の周りには、高い木製の囲いが張り巡らされ、複数の見張り台が設置されていた。囲いの上には、上半身裸の虎人戦士が数十人立っており、足元には大量の石や丸太が置かれていた。村の外には600名の虎人兵士が三隊に分かれて並び、彼らは皮鎧を身に着け、武器は主に戦斧と鉄槌であった。
虎人側が動員できる戦力は、総数で1,000余り。
前衛——250名の虎人重戦士、平均レベルは350。鉄製の全覆鎧を着用し、巨大な斧や槍を手にして、全身を覆うタワーシールドを装備している。
中衛——350名の虎人軽戦士、平均レベルも350。皮鎧を着用し、武器は主に大剣、戦斧、鉄槌。
後衛——400名の守城軍、彼らは城壁を占拠し、投擲物を投げて攻撃する。平均レベルは300。
1,000人の虎人戦士が、自分たちの三倍の敵に立ち向かう。この難関を乗り越えれば、吟遊詩人によって語り継がれる伝説となるに違いない。
樹海の中では視界が限られており、このため虎人族は敵軍の総数を具体的に把握できず、せいぜい「1,000人以上」という曖昧な情報しか得られなかった。これが良いことか悪いことかは、まだ分からない。
「射程に入った!撃て!」
両軍の距離がさらに縮まった。待ち構えていたかのように、タイゴルは城壁の上の衛兵たちに鋭く命令を下す。
すると、雨のように石塊が城壁から飛び出し、300メートル先の魔物軍団に向かっていった。
飛び出した石塊は、成人の上半身ほどの大きさで、その大質量の石を敵に向かって投げるのは、投石機などの器材によるものではなく、純粋に腕力によるものだった。
筋肉密度が人間を遥かに超える虎人族は、魔法を得意としないが、身体能力を強化する程度の魔法は容易に使いこなせる。強力な爆発力と魔法の加持によって、虎人の戦士たちは大きな岩石を軽々と投げることができた。
ちなみに、彼らが投げる石塊は、同胞が低階の土属性魔法で生成したもので、魔力が尽きない限り、生成し続けることができる。
空から降り注ぐ岩石は、砲弾にも劣らぬ威力を持ち、群れを成す魔物たちは回避が難しく、容易に石塊に打たれてしまった。
体型の小さい虫型の魔物は、石弾に打たれて皮が裂け、体液が四方に飛び散った。防御力が高い甲虫の魔物も傷を負ったが、甲殻に数本の亀裂が入っただけだった。
虫魔物と並行する獣型の魔物たちも、同じように巻き込まれた。石塊に打たれた獣たちは悲鳴を上げ、地面に倒れて後方の戦力の進軍を妨げた。しかし、同属の魔物たちは傷ついた仲間を全く顧みず、戦闘力を失った魔物の上を踏みつけて、村に向かって進軍し続けた。
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