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ギルドと共に異世界へ転移し、美少女ハーレムを手に入れた  作者: 曲終の時
第四章:滅びへと導く外来者――滅亡の序曲
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Ep 29:一時的な同盟①

早朝、商業都市『ジセ』のある宿屋の客室にて――


ユリオンは机に向かい、一束の書類を集中して読んでいた。


朝の光が窓から差し込み、白銀の髪に当たって静かな輝きを放つ。その端正な顔立ちと相まって、まるで童話の登場人物が現実に現れたような不思議な錯覚を与える。


彼が真剣に読んでいるのは、<方舟(アーク)要塞(フォートレス)>から持ち出された重要書類の一部だ。その書類は優先度が高く、冒険者として活動している間でも、彼は時間を割いて一つ一つ確認するのだった。


部屋の中は、情報漏洩を防ぐためにいくつもの結界が施されているため、外部の者にこの書類が見つかる心配はなかった。


「<人員配置申請書>の提出者は……シーエラ?」


気になる名前がタイトルの下に現れ、ユリオンは少し戸惑いを感じた。


目の前のこの書類は、一緒に冒険者活動をしているエルフの少女からのものだ。


ジセに滞在している間、ユリオンとシーエラは常に一緒に行動しており、シーエラに関することならユリオンはほとんど何でも知っていると言える。


しかし、人員配置の件については一度も彼女から聞いたことがなかった。


ユリオンは疑念を抱きながら、<申請書>の内容を注意深く確認した。


要するに、シーエラは『長期探索部隊』を編成することを提案しており、これは他の<Primordial Continent>プレイヤー、特に<遠航の信標>に所属するプレイヤーがこの異世界に来ているかどうかを探すためのものだった。


この要請自体は合理的だった。リゼリアのような前例がある以上、他のギルド仲間がこの大陸に巻き込まれている可能性を否定できない。もし彼らを早期に発見し、保護できるなら、それが理想的な状況だ。


しかし――


「……この過剰な戦力は何だ?」


<探索部隊>の候補者は多くないが、注目すべきは、その大部分がユリオンの指揮下にあるトップ戦力だという点だ。そのようなメンバーの実力なら、他のプレイヤーを探すどころか、精鋭ダンジョンのボス攻略にも適任だ。


それだけでなく、シーエラは創生級(Lv6)原初級(Lv7)アイテムの使用許可まで申請していた。これほどの装備は、ギルド戦の『別動隊』が用いるようなもので、いくら何でも過剰すぎる。


(うん?よく見たら、候補者の中にフィリアもいる……じゃあ、彼女もこの件を知っているのか?でも彼女からも何も聞いていないな……)


『もしかして優先度が低いのか?』ユリオンはそんな考えが頭をよぎった。


しかし、彼はすぐにその考えを振り払い、否定した。


ここに置かれている書類は、すべて彼の第一策士――美羽が厳選したものだ。それだけで、これらが重要なものであることは明白だ。


さらに、複数の満級NPCとゲーム内で最高クラスの原初級(Lv7)アイテムを使用する計画となれば、ギルド長であるユリオンの許可なしに通せるものではない。


すぐにでもシーエラに確認したいところだったが、彼女は病人の治療のため、早朝に宿を出ていた。


ジセで『聖女』と崇められているシーエラは、ユリオンの指示に従い、時折市内の病人に無償で治療を施している。地元の診療所の収入に影響を与えないよう、彼女が受け入れるのは、不治の病にかかって余命わずかな人や、治療費が払えない貧しい人々だけだ。


これも名声を積み重ね、将来的に他国の重要人物に接触するための一環である。


(気になるが、後で彼女に聞けばいいか)


ユリオンが次の書類を読もうとしたその時、彼の部下――ガベートから連絡が届いた。


【首領、申し訳ございません……お仕事中にお邪魔して。問題が発生しまして……お手数ですが、来ていただけますか?】


【ガベートか?問題ない、ちょうどこちらも一段落ついたところだ。何があったか教えてくれ】


相手が目の前にいないにもかかわらず、ユリオンは何故か、その巨漢が困惑しながら自分に頭を下げて謝罪している様子を想像できた。もしかすると、ガベートはユリオンの仕事を中断させたことを非常に申し訳なく思っているのかもしれない。


ユリオンの言葉により、ガベートは安心し、軽く咳払いをしてから続けた。


【この国の第二王子、アササン……トル?あ、違う、アサシン……?うう……】


【……無理して覚えなくてもいい。この国の貴族の名前は長くてややこしい、俺でも覚えられる自信がない。】


【す、すみません、首領……】


名目上、ガベートはチームのリーダーで、ユリオンたちは彼の弟分(ていぶん)という形になっている。貴族の名前を覚えられなかったことで、ガベートは自分の役割を完璧に果たせなかったと思い、非常に申し訳なく感じているようだった。


彼があまりに落ち込まないよう、ユリオンは少し軽い調子で話題を進めた。


【大丈夫だよ、気にするな。それよりも、さっき第二王子って言ってたな?そんな大物がここに来たのか?】


【あ、そうなんですが――】


ガベートによれば、その第二王子はギルドを通じて、ユリオンたちに護衛を依頼し、ジセに滞在している間の安全を確保したいとのことだった。


一国の王子の依頼であるため、断るわけにもいかず、ガベートはユリオンの許可を得ずにその依頼を受けるしかなかった。


推測だが、その第二王子はシーエラを目当てにしている可能性が高く、この考えはほぼ間違いないだろう。


【分かった、今からそちらに向かう。ところで、彼女たちはもう来ているか?】


【首領、チビ(ティナ)は私と一緒にいますが、シーエラはまだ少し時間がかかりそうです】


【そうか、わかった。今どこにいるんだ?】


【冒険者ギルド本部です。到着されたら、スタッフが案内してくれるはずです】


【そうか、では後で会おう】


通話を切った後、ユリオンは机上に置かれた書類を収納スペースに収め、情報を隠すための複数の結界を解除した。


(冒険者ギルド……国家の制約を受けないと標榜しているが、やはり貴族と結託するのか。ギルドの信頼性を再評価する必要がありそうだ)


もしユリオンの考えが正しければ、第二王子はすでに、彼が冒険者ギルド長ゼノスに流した偽情報を知っている可能性がある。


そうなると、第二王子はシーエラが本当にエルフ国の王女であるかどうかを確認しようとするはずだ。


その後に起こるかもしれない質問を予測しながら、ユリオンは足早に宿の扉を出た。

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