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ギルドと共に異世界へ転移し、美少女ハーレムを手に入れた  作者: 曲終の時
第四章:滅びへと導く外来者――滅亡の序曲
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Ep 4:叙勲と祝賀宴④

儀式が終わった後、一同はすぐに城内のレストランに移動した。


作戦に参加した全てのメンバーを労うため、千桜と緋月の提案で盛大な宴会が開かれている。


もちろん、参加者は人型NPCと従者たちであり、彼らこそが今回の作戦の最大の功労者である。


「はあ…疲れた、ようやく無事に終わったな…」


「ふふっ、お疲れ様、ユリオン」


銀髪の少女が優雅な笑みを浮かべ、疲れた顔のユリオンを労った。


「ユリオン、本当にすごいよ。さすが私たちのギルド長ね――あ、ギルド長というより、ドラマに出てくる王様みたいで、貴族の風格がある感じ?ふふっ~~」


「やめてくれリゼ…それ、本当に褒めてるのか?なんか羞恥心が爆発しそうなんだが…」


そう言われた銀髪の少女リゼリアは返事をせず、いたずらっぽく微笑みながら口元を手で隠した。


「それもギルド長の仕事だよ、ユリオン。諦めなって」


「冷やかすなよ。少しは手伝ってくれてもいいんじゃないか、シーラー」


ユリオンは皮肉を言う友人、シーラー・エロスに恨めしそうな目を向けた。


シーラーは少し乱れた茶色の髪を弄りながら、悪意のある笑みを浮かべた。


「冗談はやめてよ。俺は副会長でもないし、どうやってお前の代わりができるんだ?」


「もし望むなら、今すぐお前を副会長に任命するが、どうだ?」


「断る。だいたいユリオン…お前がいる限り、その役目は誰にも回ってこないさ。これがギルド長特権ってやつだろ」


「ぐっ…」


こんな時だけ真面目なシーラーに対して、ユリオンは妙に苛立ちを覚えたが、反論の余地もなく、怒りを飲み込むしかなかった。


レストランに到着した一行は、それぞれの所属に応じてグループに分かれ、用意された料理を楽しんでいた。ユリオンも当然、自分の6人の仲間と一緒に集まり、この支配者たちからなるグループは、他のNPCたちにとっては近寄りがたい存在となっていた。


ユリオンにとっては、部下たちの目を気にせず、仲間と一緒にリラックスできるという点で、この状況は理想的だった。


しかし、どうやらその計算は外れたようで、先ほど謁見の間での彼の行動が仲間たちの話題になっていた。ユリオンはひとり、羞恥心に耐えるしかなかった。


「もう、シーラー。そんなこと言ったら失礼よ」


シーラーの隣から、鈴の音のような声が聞こえた。


ユリオンに手を差し伸べたのは、もちろんシーラーの恋人である緋月だった。


「いや、だって本当に面白かったんだよ。ユリオンが儀式を司ってる姿、テレビに出てるスターよりも迫力あっただろ?ははは~~」


「本当は羨ましいんでしょ?」


「ぐっ…そ、そんなことないよ」


(俺の彼女、なんでこんなに鋭いんだ…)


ユリオンと長年の友人であるシーラーは、謁見の間でのユリオンの姿を見て、心から面白いと感じていた。あの恥ずかしさをこらえて君主の役を演じる様子は、シーラーが今まで見たことがなかったものだ。一方で、そんなユリオンがかっこよく見える面もあり、からかいたくなる気持ちもあった。


緋月に心の内を指摘されたシーラーは、恥ずかしそうに視線をそらした。


おそらくユリオンから離れるために、緋月はシーラーの手を引き、他のテーブルに移動してNPCたちに挨拶させた。


解放されたユリオンは再び料理に集中し、心の中の恥ずかしさが完全には消えていなかった。仲間と目が合うと、授勲式での場面が思い出され、ギルド長としてどうしてもやらなければならなかった行動だったとわかってはいるものの、熟人、しかも長年の友人の前で君主を演じるのは、精神的にかなりの負担だった。


「お疲れ様です、ユリオン会長」


「千桜…ああ、ありがとう」


黒髪をポニーテールにしたエルフの少女、千桜は料理がたくさん盛られたプレートを持って、ユリオンの元へ歩み寄った。


「よく食べるね、大丈夫?」


「問題ない、これでもまだ二回目だよ」


「そう、そうなんだ」


(それなら、何回食べるつもりなんだ…?)


この宴会はビュッフェ形式で、レストランには十分な座席が用意されているが、皆基本的には歩き回りながら立食形式で楽しんでいた。


テーブルには豪華な料理が並び、量が多く香り豊かな肉料理から、芸術品のような美しいデザートまで揃っている。この環境にいるだけで食欲が刺激され、つい食べ過ぎてしまいそうだ。


千桜は非常にスリムな体型で、この細身の体にこれだけの食べ物が入るのかと思うと、ユリオンが驚くのも無理はない。


「この後は忙しくなるでしょうけど、まずはちゃんと休むことが大事だ。仕事は一旦置いておいてください」


「大丈夫、この程度なら問題ない」


「だめです。昨日からずっと眠っていないでしょう?いくら身体が大丈夫でも、精神的な疲労は蓄積されるものだ」


「特別な時期には特別な対応が必要だ。緊急の問題を片付けた後で休むのも遅くない」


千桜の提案に対して、ユリオンは感謝しつつも彼女の好意を断ることにした。


「本当に頑固だね…私も手伝うから、宴会が終わったらそのまま部屋に戻って休んでください。先に言っておくけど、今日は会長室に入れさせないから。徹夜で働くつもりなんてないでしょう」


「おい…俺は一応会長なんだけど、千桜、これでいいの?」


「会長が無理をするのを止めるのが副会長の仕事じゃないか?それに、情報収集やまとめる作業自体がとても時間がかかる。会長がいても役に立たないので、しっかり休んだほうがいいよ」


「うう、こ、これだけじゃないんだけど…」


反論しようとしたユリオンは、口ごもってしまった。


「もういい加減にして…リゼ、この石頭を説得してあげて」


「助けるって!?ずいぶんと狡猾だな、千桜」


「自分の問題を考えてみたらどうだ?仕事中毒」


千桜は不満げに鼻を鳴らし、綺麗なプレートを持って他のテーブルへと向かって行った。


(彼女、いつの間に食べ終わったんだ…?はやっ、全然見えなかった…それとも、もう三回目を食べに行ったのか?)


ユリオンは千桜と話しているうちに、千桜の盛りだくさんの料理が知らぬ間にきれいさっぱりと片付けられ、まるで新品のようになっていたことに驚いた。


ユリオンは思わず呆れて口にした。


「夜にそんなに食べたら太っちゃうよ――」


「……」


「何、何でもない……」


一瞬、千桜の目に冷たい霜のような寒気が浮かび、ユリオンは背筋が凍るような感覚に襲われた。


「ユリオン、相変わらず千桜を怒らせるのが好きなのね……それはあまり良くないよ。」


「リゼ、俺は……わざとじゃないんだ」


「もう条件反射になってるのね」


リゼリアは諦めたように軽くため息をついた。


「千桜の言う通りよ、ユリオン。君は休む必要があるわ」


「君もそう思うのか……」


「後での対応は私も手伝うから。いくらなんでも君一人に負担をかけすぎよ。もし万が一君が何かあって身動きが取れないと、公会が直接停止しちゃうかもしれないし。今のうちに私たちに頼って、業務処理のスキルも鍛えられるし、逆にメリットが多いと思わない?」


「なるほど……はぁ――それじゃあ、君たちの言う通りにするよ」


(やっぱり彼女には勝てないな……)


多少不承不承な感じもあったが、ユリオンはリゼリアの主張が正しいことはよく分かっていた。


彼らが話している間に、満載の料理を持った千桜が再び二人に近づいてきた。


千桜の満足そうな表情を見て、ユリオンもなぜか食欲が湧いてきた。


「俺も少し食べてこようかな。リゼ、君も一緒に行く?」


「ええ、いいわよ」


千桜に軽く挨拶した後、二人は自分たちの好きな料理を選びに出発した。


ユリオンが選んだのは大半が肉類や海鮮で、焼き物、揚げ物、煮物、塩焼きなど……種類が豊富でどれも高級感があり、香りも魅力的で、盛り付けも特にこだわっていて、食材もトップクラスで、完璧と言えるほどだった。


通常、こんなに豪華な料理は結婚式の会場や富豪が催す宴席でしか見られない。平凡な生活を送っていたユリオンにとって、こんな会食は贅沢すぎる。


(味はとても良いし、俺の好きなものも多いけど、どう言うか……やっぱりちょっと馴染めない感じがするな)


この世界に来て以来、ユリオンのすべての食事はNPCたちが手配してくれ、どれも高級料理店レベルだった。当然、彼の仲間たちも同様だ。


(たまには自分で料理を作る機会を作ろう……家庭料理を食べるのは久しぶりだし、やっぱり懐かしいな)


独身のユリオンにとって、数少ない趣味の一つが料理をすることだったが、その腕前は特別に優れているわけではない。


それよりも、料理を作るときには心が非常に落ち着き、頭の中が空っぽになって余計なことを考えなくなる。そのためか、彼はこれまで自分で料理を作り続けてきたのだった。


「ユリオン、どうしたの?」


「あ……ああ、何でもない、ちょっと考え事をしていたんだ」


「また仕事のこと?」


リゼリアはユリオンのぼんやりとした様子を見て、疑いの表情を浮かべた。


「違う……ただ、これから時間があれば料理をしようかなと思っていただけだ」


「料理ができるの!?」


「そんなに驚くことか?」


「だって、一般的に独身男性は外食で済ませることが多いって聞いたから、君もそうだと思ってたの」


「それは偏見だ……完全にそうというわけではないけど。とにかく、料理はするよ。ただし、簡単なものだけだけどね」


「その時、私にも試させてもらえる?」


興味津々の銀髪少女が、無意識に顔を近づけてきた。


「わ、わかったよ。問題ないさ」


少し恥ずかしそうなユリオンは、顔をそむけてリゼリアの頼みを受け入れた。


「うん!楽しみにしてるね」


「一応言っておくけど……簡単な料理だから、あまり期待しない方がいいよ」


ユリオンは恥ずかしそうに頭をかいた。


「ふふ~それでもいいの。君の料理が食べたいわ」


「う……そ、そうだね、じゃあその時に声をかけるよ」


「うん、約束よ」


リゼは喜びの笑顔を浮かべた。


その笑顔を見て、ユリオンも優しく微笑み返した。


その時、周りで食事をしていた人々は、温かい視線を送りながら静かに二人を見守っていた。


ちなみに、祝賀宴が終わった後、ユリオンは大まかに計算してみたところ、千桜は合計で8回も料理を取りに行き、ほぼ最初から最後まで食べ続けていた。


しかし、この世には触れてはいけないことがある……そのことを深く理解しているユリオンは、その出来事を心の中に密かにしまい込むことに決めた。

※※※※※※※※※※

本作をお読みいただき、誠にありがとうございます。


これからも引き続き頑張って執筆してまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。


最後に――お願いがございます。


もし『面白い!』、『楽しかった!』と感じていただけましたら、ぜひ『評価』(下にスクロールしていただくと評価ボタン(☆☆☆☆☆)があります)をよろしくお願い致します。


また、感想もお待ちしております。


今後も本作を続けていくための大きな励みになりますので、評価や感想をいただいた方には、心から感謝申し上げます!

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