Ep 2:叙勲と祝賀宴②
実際のところ、この作戦で功績を立てた者たちに対して、ユリオンは既に事前に個別面談を行い、どのような褒賞を与えるか決めていた。つまり、今行われているこの表彰式は、単なる形式的なものであり、ユリオン自身も省略したいとさえ思っていた。
しかし、その考えは緋月とシーラーから強く反対され、「形式も重要だ」と説得された。二人は「従業員の意欲向上」などの企業経営知識をユリオンに教え込み、最終的に彼はこの式典を主催することに同意し、ほぼ全ての部下の前で功績を立てた者たちを表彰することになった。
「凪、澪、嵐、雫――前へ」
ユリオンの言葉が落ちた瞬間、誰もいなかった場所から突然、四人の少女が姿を現し、彼女たちもまた片膝をついて、高台の玉座を仰ぎ見た。
彼女たちは全員仮面を着けており、見た目の年齢は17歳くらい。体のラインを強調する黒い密着服を身にまとい、まさに「忍者」の姿そのものであった。それに加え、少女たちには獣耳と尻尾という亜獣人の特徴が備わっていた。
先頭に立っているのは黒髪で猫耳を持つ少女、彼女が凪であり、このチームのリーダーである。
彼女たちは「忍者小隊」の主力メンバーであり、潜伏、追跡、暗殺、情報収集を専門とする、ユリオン配下の最強の諜報員たちであった。
「今回の作戦で、君たちの活躍は見事だった。俺はとても満足している」
「恐れ多いお言葉でございます。……拙者の力は、すべて殿から授けられたもの。このように恩返しの機会をいただけること、心より感謝申し上げます」
「感謝申し上げます」残りの三人も、凪の言葉に同意し、声を合わせた。
彼女たちの表情は仮面で見えなかったが、四人の耳と尾が微かに揺れ、彼女たちの喜びが直に伝わってきた。
元々10人未満だったこの部隊は、人員が増強されてからわずか1か月の訓練で、即座に実戦に投入された。通常、400人規模の部隊をこの短期間で完全に連携させるのは難しいが、凪たちはそれを成し遂げ、ユリオンの期待を遥かに超えた成果を上げた。
この一週間、二国の調査隊が侵入する中、彼女たちはそれぞれの部下を率いて、敵の情報、人員構成、個々の戦力を正確に把握し、痕跡を残さずに指定された位置に誘導することに成功した。
状況をリアルタイムで把握するため、彼女たちはほぼ24時間体制で調査隊を監視し続けた。このような状態を一週間も維持したのは、間違いなく高強度の作業だった。
凪たちの協力がなければ、今回の作戦は成り立たなかったと言えるだろう。
「君たちは相変わらず謙虚だな……とにかく、君たちの労をねぎらうため、俺は以下の褒賞を与えることに決めた」
少し間を置いてから、ユリオンはやや軽い調子で凪に話しかけた。
「凪、今の部隊は大体何人くらいいるのか教えてくれるか?」
「殿、実戦投入された従者を含めると、総勢約400人でございます」
「400人か……それなら、もう『小隊』と呼ぶわけにはいかないな」
「おっしゃる通りでございます」
表情には変化はなかったが、ユリオンの口元には微かに笑みが浮かんだ。
「それなら、まず俺が君の部隊に名前を授けることにしよう。これを祝いの印としよう」
「――!?感、感謝申し上げます!」
この決定は事前に凪と話し合われたものではなく、完全にユリオンのサプライズであった。4人の忍者少女たちの目は輝いており、そのサプライズが成功したことがうかがえた。
「<遠航の信標>ギルド長として命じる。今日から、忍者小隊は<影鳶衆>と改名する」
「部隊長は引き続き凪が務め、残りの三人は副隊長に昇格する。」
「今回の任務の報酬として、我々は森の一部を<影鳶衆>に領地として与えることにした。その土地を自由に使って構わない。わざわざ俺たちに許可を求める必要はない」
人が足を踏み入れない<アルファス辺境森林>は、現在<遠航の信標>の所有物であり、この森の資源をどう使うかは、ギルドの最高権力者である君臨者たちが決めることだった。
特に、この隠された森の奥は、外部の目を気にする必要がなく、開発可能な土地が数多く存在する。部下たちへの褒賞としても適しており、ついでに<方舟要塞>の人口増加問題も解決できる。
今回の作戦を経て、ユリオンは戦力をさらに強化することを決意した。その結果、<方舟要塞>の人口は600人から数千人へと急増する見込みだ。現在の拠点はまだこの人数を収容できるが、将来的な発展を考えると、この森を開発する必要がある。
古代の王も、功績を上げた部下に領地を与えることがあったという記憶がある。ユリオンはこのアイデアに触発され、封地の贈与を思いついた。幸いにもNPCたちは彼を絶対的な支配者と見なしており、この行動は問題なかった。
「さすが君臨者様、こんなに貴重な褒美をお与えになるなんて!」
「何と英明な判断です!さすがは至高の創造主!」
「こんな恩恵を受けられるなんて、本当に羨ましい……私たちももっと努力して、この栄誉を手に入れなければ!」
「その通りです!功績を立て、主人に自分たちの価値を証明しなければ!」
多くの人々の前で封地を授かった凪たちは、四方八方からの注目を浴びていた。羨望、嫉妬、称賛、敬意……様々な感情が交差し、忍者少女たちに向けられた。
「うっ……」
この騒ぎに驚いたのか、凪は少し体を縮めた。彼女はもともと内気な性格で、このような大きな場に出ることに慣れていなかった。
本来であれば、彼女はここで声を上げ、ユリオンの褒美に感謝を述べるべきだったが、彼女は突然動けなくなってしまった。
凪の内心の混乱を見抜いた隣にいたウサギ耳の少女――澪は、目配せで残りの二人に合図を送り、代わりに応答することにした。
「君臨者様たちからの褒美、誠にありがとうございます。我ら<影鳶衆>は、命を懸けて忠誠を誓い、この恩に報いる成果を必ずや上げてみせます!」
「ユリオン様から頂いた名に恥じぬよう、我ら<影鳶衆>は全力を尽くします」
「臣下として主人に仕えるのは当然の務めですが、これほどの恩寵を頂けるとは、感謝申し上げます!」
澪の先導に続いて、嵐と雫も同様に丁寧に礼を述べた。
その時、凪はようやく混乱から抜け出し、慌てて感謝の言葉を口にした。そして、視線を横にやると、三人の同僚たちが温かい眼差しで自分を見つめていることに気づいた。彼女たちはこのようにして凪を気遣っていたのだ。
凪の怯場に対して、彼女たちは不満を感じるどころか、むしろ助け舟を出し、静かに彼女を励ましていた。この優しさに、凪の心は暖かく満たされた。
【本当に申し訳ない、拙者が失態を……】
【ふふっ、大丈夫だよ。凪ちゃんは十分頑張ってるから】
【澪の言う通り、凪は気にしなくていいよ】
【誰にだって苦手なことはあるんだから、こんな時は私たちに頼っていいんだよ】
4人が退場した後、凪はすぐに伝訊魔法を使い、三人の同僚に謝罪した。隊長としての能力は申し分ないが、このような状況にだけは少し弱く、彼女はそれを少し恥ずかしく感じていた。
しかし、澪たちは全く気にしていなかった。むしろ、この弱点が凪の可愛らしさの一部だと感じていたのだ。もちろん、彼女たちはこの考えを凪本人に伝えるつもりはなかった。伝えたら、きっと凪に恨まれるだろうから。
与えられた領地をどう活用するか、実は四人はすでに計画を立てていた。後日、その地に村を作る予定であり、彼女たちの部隊は全員諜報員で構成されているため、その村、当然は「忍村」になるだろう。村が完成した後、忍者部隊<影鳶衆>の主力はその村に移り住み、部隊を率いるこの四人を除いて、許可を得なければ<方舟要塞>に戻ることはできなくなる。
本作をお読みいただき、誠にありがとうございます。
これからも引き続き頑張って執筆してまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
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