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ギルドと共に異世界へ転移し、美少女ハーレムを手に入れた  作者: 曲終の時
第三章:遥かなる場所からの侵入者
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Ep 62:要塞都市の覇者④

方舟(アーク)要塞(フォートレス)>の指揮部内――


異変はあまりにも突然で、スクリーンを通じて戦局を見守っていたユリオンたちは、一体何が起こったのか理解できなかった。


誰も予想していなかった。レベル1,000の狐耳少女、美羽が、レベルの遥かに低い敵によって負傷するなんて。


彼女のしなやかな体は、効果が不明な原初級(Lv7)アイテムによって胸に穴が開けられ、血が止めどなく流れ出ていた。


「美羽ちゃん――!?」


「美羽!!!」


「ユリオン、あの子……!」


画面の向こうで美羽が重傷を負っているのを見たアシェリと千桜は驚きの声を上げ、彼女たちの対面に座っている銀髪の少女、リゼリアは急いで隣の青年に呼びかけた。


「美……羽?」


友人の呼びかけにまったく反応しないユリオンは、呆然と呟き続けていた。


「ユリオン!しっかりして――!」


「リゼ……?」


彼女は再度試み、ようやく自分の声が顔色の悪いユリオンに届いた。


「今すぐ出発しましょう、私も一緒に行く!」


「いや……俺が自分で処理する」


「え?」


拒否されるとは思っていなかったリゼリアは驚き、目を大きく開けたが、彼女が反応する前にユリオンの姿は座席から消えていた。

※※※※※※※※※※

指揮部から「偽.謁見室」へと転移したユリオンは、すぐに負傷した美羽を身に隠した。


(汚い手で俺の女に触れようとするな!)


「どけ――ウジ虫!」


彼は右拳を握りしめ、その後、瞬速の一撃をノーデンの顔面に叩き込んだ。ユリオンに奇襲されたノーデンは、受け身を取る暇もなく、真っ直ぐに飛ばされていった。


敵に魔法アイテムで移動させられた二頭の妖狐が、数十メートル飛ばされたノーデンとすれ違い、ユリオンの元へと急いできた。


「主君……」


突然現れた主人に、美羽は少し不安そうな目を向け、まるで何かを間違えた子供のようだった。


「申し訳なしに候……主君にこのような姿を見せてしまい――う?」


「謝らないで、これは君のせいじゃない」


ユリオンは美羽が謝ろうとするのを止めるために、指を彼女の唇に当てた。


「傷口が開くから、少し静かにして」


「はい……」


真紅の瞳に罪悪感を抱き、ユリオンが悲しみに満ちた顔を歪めているのを見て、美羽は心が締め付けられる思いがした。それで彼女は素直に唇を閉じた。


彼女が倒れないように、ユリオンは片手で美羽の腰を抱え、彼女の体を支えた。


体がくっついているため、美羽の傷から流れる血が自然とユリオンの外套にも染みていた。


主人の服を汚してしまうのを恐れた美羽は、本能的にユリオンを押し退けようとした。


「大丈夫だ、気にしないで」


彼女の考えがユリオンに伝わり、彼は優しい口調で罪悪感に苛まれる美羽を慰めた。


美羽の気持ちが落ち着くと、ユリオンはスキルを使って彼女の状態を確認した。


(スキル<命力測定><状態鑑別>……生命値(Hp)が30%減少して、さらに出血のデバフがかかっている……くそ!これもあのアイテムの効果か?)


ユリオンは、美羽が持続的に生命値を回復する魔法を発動していることに気づいた。そのため、出血による損失が魔法の回復で相殺され、彼女の生命値(Hp)はこれ以上下降しなかった。


(おかしい、美羽は回復魔法を使っているはずだが?なぜ血量が70%以下で、全く上昇の兆しがないんだ?デバフは『出血』だけじゃないのか?)


原初アイテムの効果は、通常スキルや魔法では解除しづらい。経験から判断して、ユリオンは美羽がデバフを解除しようと試みたものの、高位の魔法ですら期待した効果を得られなかったと考えた。


美羽の傷は深刻に見えるが、Hpが安全圏に留まっている限り、行動力を失うことはない。レベル1,000のキャラクターにとって、『致命傷』を負っても直接死ぬわけではなく、Hpが残っていれば戦い続けることができる。


美羽の大まかな状況を確認した後、ユリオンはアイテムボックスからあるアイテムを取り出した。


「これを使って、美羽」


「これは!?絶対にダメなり!主君、これは使い捨てアイテムで、しかも原初級(Lv7)なり。この程度の傷なら原初級魔法にて回復可能なれば、どうか――」


「構わない。君に比べれば、こんなものはどうということはない」


ユリオンが手に持っていたのは、精緻な模様が刻まれた符紙で、それは原初級(Lv7)アイテム<霊脈癒符(レイミャクユフ)>だった。このアイテムの効果は、使用者にかかっている「負の効果デバフ」を対応する「恩恵の効果バフ」に変換するもので、もちろん生命値の回復効果も備えている。


このアイテムを使用するのに、代償や長時間の作業は必要ないが、唯一の欠点は使い捨てであること。高価なため、通常はギルド戦などの重要な場面で使用される。


美羽は、このアイテムを自分に使うのは少々もったいないと感じていた。しかし、ユリオンが譲るつもりはないようなので、彼女は渋々<霊脈癒符>を受け取り、使用した。


美羽の体に白い微光が浮かび、胸の傷も次第に癒されていった。


美羽の傷が完全に回復すると、ユリオンはようやく安堵の息をついた。


しかし、<霊脈癒符(レイミャクユフ)>が発する光が、下にいる騎士たちを慌てさせた。


「それは何だ!? 何か攻撃魔法か!?」


「すぐに退け! 彼らと距離を取れ!」


「その人はどこから現れた!? 敵の援軍か!?」


「ノーデン様の状況を確認しろ、急いで治療しろ!」


騎士たちの騒ぎにうんざりしたユリオンは、すぐに振り返り、下の人々に向かって告げた。


「蟻ども、そこにじっとしていろ。急ぐな、すぐにお前たちの相手をしてやる――」


彼の言葉には抗しがたい魔力が込められており、騒がしかった人々は一斉に静まり返った。


美羽の傷は既に治ったが、ユリオンは完全に安心できず、さらに複数の高位スキルを発動して見落としがないか確認を続けた。


「どうやら一時的には問題なさそうだ……帰ったら、『琉璃』に君の診察をさせるから、それまで仕事は禁じて、まずは数日休むように」


「え!?主、 主君、それでも――」


ユリオンが言及した『琉璃』は、彼の部下で最強の回復術士で、治療専門のNPCだ。


このような人物を使って診察されることに、美羽は少し驚いていた。


実際、戦闘前に彼女はユリオンの指示で、予備の一回限りの復活アイテムを3つ持っていたのは、何かの事故を防ぐためだった。


主人の過保護な一面は理解していたが、実際に体験してみると驚きが隠せなかった。


「異議は認めない、今回は君は俺の言うことを聞かなければならない。お願いだ……君が傷ついた姿を見て、心臓が止まりそうだったんだ。俺のわがままを少しは理解してくれ」


「主君……わかりました、御心のままに」


「よし。君は先に帰っていい。ここは俺に任せておけ」


微笑むユリオンの姿に、美羽はわずかな不安を覚えた。


「いいえ、どうか妾をお傍にいさせてください」


「うーん……心配するな。それとも、俺がこんな虫どもに負けると思っているのか?」


「そんなことはございません!ただ、どうかお願い申し上げます。妾をここに残してお待ちさせていただけませんでしょうか」


「……わかった」


美羽が譲らないため、ユリオンは彼女の要求を承諾するしかなかった。


「そうだ、美羽――ここでの映像を切断して、彼らに見せるな」


「かしこまりました……」


現在、この部屋内で起こっていることは、魔法アイテムによって<方舟要塞>の指揮部に放送されている。つまり、他の6人の仲間がユリオンの動きを見守っているというわけだ。


これから起こることを考慮し、ユリオンは美羽にこの場所の映像を遮断するよう命じた。

本作をお読みいただき、誠にありがとうございます。


これからも引き続き頑張って執筆してまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。


最後に――お願いがございます。


もし『面白い!』、『楽しかった!』と感じていただけましたら、ぜひ『評価』(下にスクロールしていただくと評価ボタン(☆☆☆☆☆)があります)をよろしくお願い致します。


また、感想もお待ちしております。


今後も本作を続けていくための大きな励みになりますので、評価や感想をいただいた方には、心から感謝申し上げます!


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