Ep 54:崩壊の時③
浮遊都市――<方舟要塞>の会議室内。
ユリオンを中心に<遠航の信標>のメンバーたちが長テーブルに囲まれて座り、空中に投影された複数の半透明スクリーンを見ていた。
魔法のアイテムによって生成されたスクリーンには、地上の<偽・方舟要塞>内の各戦場が映し出されていた。
調査隊との決戦が始まった後、しばらく経った。最初に戦闘を終えたシーラー・エロスが特殊なアイテムを使って会議室に帰還した。
「戻ったぞ〜進展は順調か?」
「あなたが余計なことをした以外は、他は順調だ」
シーラーは伸びをしながら、席に座っている仲間たちに挨拶をした。
返事をしたのは、少し冷たい口調の恋人、緋月だった。
「あ……次、次は気を付けるよ」
「次があると思っているの?」
緋月との口論中、シーラーは友人であるユリオンの表情が少し険しいことに気づいた。
「どうしたんだ、ユリオン?顔色がよくないようだけど」
緋月の隣に座ったシーラーは、銀髪の青年に声をかけた。
「……」
「ユリオン?おい……ユ〜リ〜オン〜ちゃん」
「気持ち悪い……シーラー、そんな言い方で名前を呼ぶなよ」
ユリオンが返事をしなかったため、シーラーはわざとわざとらしい声で彼を呼んだ。
返事はあったものの、友人から辛辣な評価を受けた。
「お前が何も返事をしないから、結局どうしたんだ?」
「どうしたって?」
「やっぱり聞いていなかったのか……」
仕方なく、シーラーはもう一度自分の質問を繰り返した。これに興味を持った女性メンバーたちが、一斉に静かに耳を立てた。
「予想外のトラブルが発生して、介入すべきか考えているんだ」
少し間を置いて、ユリオンは続けた。
「元々、ライインロックに相手の最高戦力、つまりノーデンという騎士団長を処理させる予定だった……しかし、強制転送の座標にズレがあったようで、その人が美羽のところに送られてしまった」
「そうか……でも問題ないだろう?あの子もlv1,000の最高レベルキャラで、lv800以下の騎士を片付けるのは朝飯前だろう」
ユリオンの不安の理由を理解したシーラーは、軽い口調で彼を慰めた。
「彼女もそう言っていたし、いい機会だと張り切っているみたいだ」
「この時期は彼女たちを信頼すべきだよ。本当に万が一があったら、すぐにその連中の時間を止めてから、介入すればいいだけだろう?」
「確かに……」
シーラーが言ったのは、各戦場にあらかじめ設置されている魔法の罠のことだった。聖国の騎士たちが指定座標に転送された際に、それが直接発動し、魔法の効果で『体感時間』を『停止』させる。
安全のために、ユリオンは敵が転移した後、まず全員の『時間』を停止させ、その後の戦闘進行に応じて制限を解除する方針を取っていた。
初戦はシーラーが開始し、その後、戦闘が終わるごとに次の騎士を解放してエレノアたちと戦わせ、全部で5回の戦闘を行う予定だった。
「さてさて、次の戦闘を見て、気分転換しよう」
シーラーはユリオンの不安を吹き飛ばすかのように、タイミングを見計らって話題を切り替えた。
言われた通り、次の戦闘を示すスクリーンが中央に移動し、拡大された。
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