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ギルドと共に異世界へ転移し、美少女ハーレムを手に入れた  作者: 曲終の時
第三章:遥かなる場所からの侵入者
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Ep 40:深淵に立つ魔城①

アルファス辺境大森林の奥深く――


聖国と王国から成る調査隊は、真剣な表情でキャンプの周囲を警戒していた。


森に入ってから6日が経過し、彼らは文献には記録されていない領域にたどり着いていた。


皆の顔には明らかに疲労が見え、連日の戦闘によって心身が削られているのに加え、探索も進展がない。部隊が深く進むにつれて魔物の実力は増しているが、推測されている「隠れた勢力」はまだ発見されていない。


さらに問題なのは、昨日から魔物の襲撃頻度が徐々に高まっており、隊内に多くの死傷者が出ていることだ。


昼間の光は遮る木々によって完全に入らず、目視で昼夜を判断することはできない。


唯一の頼りは魔法で作られた光源だけだ。


現在、騒がしい音が森の一隅に響いている。


「イヴィリア、お前のところへ行った!」


「了解!」


金髪の青年の急報が森の中に反響する。それに応じて、イヴィリアは目もくれずに目標に向かって走っていった。


「見つけた!エフィス、魔法で支援して!」


二人が狙っているのは、非常に細長い昆虫型魔物で、体長は2メートルもあり、見た目は竹節虫に似ているが、非常に恐ろしい四肢を持っている。異虫の四肢は鋭く狭長な鎌刃から成っている。


その頭には目玉のような器官はなく、代わりに長い触角と強力な顎を持っている。調査隊はこの魔物を「刃足虫」と名付けていた。


対峙しているのは、<神託騎士団>の分隊長二人で、この二人だけがこの魔物に対応できるといっても過言ではない。


最初にそれぞれの部隊を率いていた二人が一緒に行動しているのは、森林の内側の異常な危険性からだ。


今のこの魔物は、この魔境の危険性を完璧に体現している。


「<アイススパイク>!」


虚空から現れた複数の氷の槍が、イヴィリアの側から刃足虫にまっすぐに飛んでいく。目玉がないにも関わらず狙われた魔虫は、氷の槍が発射される瞬間に、敏捷な足取りで位置を変え、巨木の間を行き来する。


「<ストライク.ウィンドブレード>」


空中に浮かんでいる刹那の隙間を狙って、青年騎士エフィスは第8位の風魔法で数枚の無形の風刃を編み出し、空中でこの化け物を切り裂こうとする。


「ゲイィィ――」


刃足虫の耳障りな叫びとともに、それは空中で身体を変な角度にねじり、予想外の動きで迫ってくる風刃をかわした。


「こんもいける!?冗談だろ!!?」


勝ち誇っていたエフィスは、刃足虫が追撃をかわしたのを見て、驚きで目を大きく見開いた。


似たような光景はすでに何度も繰り返されているが、これほどの回避方法はまだ想像を超えている。


「ゲイィィィィ――!」


樹上の刃足虫が突然動き出し、身体を丸めてから猛然と地面に飛び降りる。


「気をつけて、早く避けて――!」


反応する暇もなく、空中から降ってきた魔虫は、その恐ろしい鎌刃を振り回し、他の魔物と戦っていた騎士たちを容赦なく襲った。


ゴロゴロ――ゴロゴロ――


二つの丸い球体が乾いた音を立てて地面に転がり落ちる。それはアルファス王国の騎士たちの首であり、彼らの表情は先ほどと変わらず、まるで自分が襲われていることに気づいていないかのようだった。


また仲間が犠牲になったことに警告を発していたイヴィリアは、痛みに歪んだ顔をしていた。


「憎い!」


彼女は急いで人混みの中にいる刃足虫に向かって駆け寄り、周囲が味方であるため、魔法で撃退することができず、理解したエフィスも続いて駆け寄った。


「助、助け――!?」


「ば、化け物、死ね――」


「わあああ――!!?」


二人が必死に近づく間に、刃足虫はさらに凶悪な鎌刃を振り回し、数人の王国騎士を葬った。


その後、間もなく到達しようとしている二人の隊長に対して、刃足虫は再び身体を丸め、その場から跳び上がり樹上に戻った。


「一体この化け物は何なんだ!?きりがない!」


「落ち着いて、エフィス。この魔物は明らかに私たちを避けている。つまり、私たちよりも弱い可能性が高い。動きを制限できれば、必ず倒せるはずだ」


「わかってる……」


徐々に冷静さを失いつつあるエフィスは、イヴィリアの説得により、辛うじて理性を保った。不満げに唇をかみ、鉄のような味が口の中に広がった。


遭遇したその瞬間から、刃足虫は二人を無視し、襲撃の標的を彼らが指揮する部隊のメンバー、正確にはアルファス王国の兵士たちに定めていた。


それは必死に彼らとの戦闘を回避し、能力の劣る王国の兵士たちを狙っている。この行動はまるで味方の力量を見透かしているかのようだ。


昆虫型魔物は強い危機感知能力と目標選定能力を持っている。


複雑な地形と敏捷な動きが、脅威の度合いを何倍にも増している。イヴィリアが一撃で仕留められると確信していても、相手は致命的な隙を一切見せていなかった。


(地形を巧みに利用し、我々との接触を避け続け、さらに弱者を狙う行動……このやろう、間違いなくとても高い知能を持っている)


戦闘開始からの情報を総合すると、エフェスは刃足虫の知能が、これまで見たどの人型魔物よりも高いことを認識した。


当初は、見た目が頼りない魔物だと軽視していたが、今や刃足虫の存在が恐ろしいものであることを感じている。


強度(レベル)が全てではない……まさか、こんな形で教えられるとは)


経験がまだ不十分なエフェスは、刃足虫の正確なレベルを判断できず、せいぜい自分より下だろうと感じるだけだった。しかし、それは現状に対して全く意味がなく、せいぜい自分の無力さを感じさせるだけだった。


「<アイススパイク>!<アイススパイク>!<アイススパイク>!」


「魔力を無駄にするな、イヴィリア!」


仲間がほぼ狂ったように、刃足虫の通った跡を掃射しているのを見て、エフェスは驚きの声を上げた。


普段は冷静沈着なイヴィリアが、こんなにも魔力を浪費する無謀な行動を取るとは、どう見ても精神的に限界を迎えているように見えた。


「まだ終わってない――!<アイススパイク>!<アイススパイク>!<アイススパイク>!」


エフェスの制止を無視して、イヴィリアはさらに氷の槍を生成し、逃げ回る刃足虫に向けて射撃を続けた。


次第に、周囲の巨木にはイヴィリアが射出した氷の槍がびっしりと刺さり始めた。しかし、それでも刃足虫の行動を制限することはできず、イヴィリアの猛攻によって、刃足虫は一時的に攻撃の余裕を失った。


ついに――


「今だ!咲け!!!」


刃足虫が氷柱に立ち止まっているほんの一瞬の間に、イヴィリアは木に刺さった氷の槍を爆発させ、瞬く間に無数の氷の針が氷の槍の表面から噴出し、刃足虫の二足に深く突き刺さった。周囲の他の氷の槍も一緒に影響を受け、四方から流れ込む氷の針がその肢体をしっかりと固定した。


まるで瞬く間に咲いた氷の棘が、捕らえた獲物をしっかりと噛みしめるように。


「今のだ、エフェス!」


「おおおおお――!!!」


イヴィリアの呼びかけに応じて、エフェスは体力を限界まで強化し、動けない魔虫に向かって真っ直ぐに跳びかかった。


長年の怒りを発散するかのように、瞬く間に剣を抜き、六つの斬撃を振るって、自分を怒らせた化け物を討ち取った。


「持ちこたえて!すぐに援護に行く!」


目標が動きを止めたのを確認すると、イヴィリアはすぐに振り向き、魔物の群れに足止めされた隊員たちの元へ走っていった。


刃足虫の死や、彼女とエフェスの接近が影響してか、分隊のメンバーたちと戦っていた虫型魔物たちは、すぐに散り散りになった。


最終的に、隊員たちの集計によると。


イヴィリアとエフェスの分隊のこの戦闘での死傷者数は以下の通りだ


戦死者:76人


軽傷:87人


重傷:15人


「すぐに負傷者の治療を行い、余力のある者は周囲の警戒をお願い!」


「イヴィリア、団長からの連絡があった。彼らの方は戦闘が終わり、すぐにこちらに合流するって」


「そう……わかった」


友軍の無事を聞いて、イヴィリアの緊張した表情はようやく和らいだ。


地形の制約により、調査部隊は人員を分散させ、2名の隊長級が指揮する3つのキャンプを隣接した場所に設置していた。


本隊は団長ノーデンと分隊長カボネルが指揮し、第二キャンプはサイドロンとシルフィンが担当し、イヴィリアとエフェスが指揮するのはこの第三キャンプであった。


もともと千人の調査隊が魔物の攻撃を受け、現在は約800人が残っている。落伍者や戦死者が200人以上で、その大部分はアルファス王国の人員であった。


最近の戦闘で、この数字はさらに変化した。


ほぼ同時に、3つのキャンプすべてが魔物の群れに襲われ、その中には指導者らしき上位魔物も含まれていた。


魔物がこんなにも組織的に、しかも同時に進軍するとは、非常に変な感じがする。


「まさか、本当に誰かが彼らを指揮しているのだろうか……?」


真っ黒の樹林の奥を見つめながら、エフェスは呟いた。

本作をお読みいただき、誠にありがとうございます。


これからも引き続き頑張って執筆してまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。


最後に――お願いがございます。


もし『面白い!』、『楽しかった!』と感じていただけましたら、ぜひ『評価』(下にスクロールしていただくと評価ボタン(☆☆☆☆☆)があります)をよろしくお願い致します。


また、感想もお待ちしております。


今後も本作を続けていくための大きな励みになりますので、評価や感想をいただいた方には、心から感謝申し上げます!

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