表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/47

42話・アロガンの噂

 翌日の昼休み。


「探しましたよ、クオンさん」

「……リネット?」


 食堂で昼食を摂っていると、昨日会ったブルーシャーククラスの少女――リネットに声をかけられた。

 隣には別の少女も立っている。


「クオン? その子、知り合い?」

「そんな感じだ」

「曖昧だな」


 同じ卓に座るクラージュとタスクが各々言う。


「お食事中、すみません。私はリネット・メディウム。こちらは友人のランカ・サーベルです」

「や、なんかクオンって人にうちのリネットが助けられたみたいでさ。そのお礼? みたいな? はは。とりあえず一緒に座っていい?」


 ランカと紹介された少女はリネットと違い、明るくフレンドリーな性格の人物だった。

 カールされたセミロングの赤髪に同色の瞳。


 身長はリネットよりも僅かに高い。

 クリーム色のカーディガンの上からポンチョを羽織り、白のニーソックスを履いている。


 拒否する理由もないので座るように促した。


「ありがとー」

「ランカ。初対面の相手に、少し馴れ馴れしいですよ。距離の詰め方を覚えてください」

「えーいいじゃん。クラスは違っても、同じ一年なんだしさー」


 クラージュの隣に座るランカ。

 その横にリネットも座す。

 すると早速新顔同士で自己紹介を始めた。


「クラージュ・アバンギャルドよ。よろしくねランカ、リネット」

「タスク・ブルーネイルだ」

「おー、こっちこそよろしく〜」

「はい。よろしくお願いします」


 こうして同じ卓に五人が集う。

 最初に口を開けたのは、クラージュ。


「クオン。二人とはどういう関係なの?」

「ああ。実は――」


 俺は昨日の経緯を手短に話した。


「――というワケだ」

「お前は揉め事に巻き込まれやすいな……」


 タスクに同情的な視線を向けられる。

 ドロン、マガトと続き今度はアロガングループ。

 正直もうウンザリしていた。


「申し訳ありません。私が不甲斐ないばかりに……」

「いや、お前は悪くない」

「そうよ。聞く限り、リネットに非は無いわ」


 巻き込まれたのは自分の所為だと言わんばかりに落ち込むリネット。

 すかさずフォローし、彼女の罪悪感を減らす。


「ほらリネット。本人もこう言ってんだし、塞ぎ込むのはもうやめれば? 気を使わせて逆に悪いじゃん」

「それは……」


 ポン、とリネットの肩に手を置くランカ。

 その表情はとても優しい。

 二人の姿が姉と妹のように映る。


「だから代わりに、アタシがお礼するよ――ほんと、ありがとねクオン」

「気にしなくていい。助けたのは偶々だ」

「偶々かー。そりゃあ残念だな〜」


 快活に笑うランカ。

 冗談だと思っているらしいが、割と本気だ。

 ただのナンパだったら見過ごしていたし。


「それで結局、二人は俺に何の用だ? 昨日のお礼ってだけじゃないんだろ?」


 手元のスープをかき混ぜながら言う。

 途端、リネットは眼鏡の位置を整えた。

 重要なことを告げる前の儀式のように。


「――はい。今日は、注意喚起の為に来ました」

「注意喚起?」


 思わずオウム返しになってしまう。


「クオンさんは、アロガン・ブレインに目をつけられてしまったかもしれないので」

「何かマズイのか?」

「んー、それを伝えに来たんだよね、アタシら。その様子だと、あの人の噂も知らないっぽいし」


 ランカも続く。

 彼女達の言う通り、俺は世情に疎い。

 アロガンも昨日知ったばかりだしな。


「悪い。頼んでいいか?」

「勿論です」


 頷くリネット。

 彼女は機械音声の如く正確に話し始めた。


「アロガン・ブレイン。十八歳。三年生。クラスはイエローパンサー。実家は名門中の名門、ブレイン公爵家。入学当初から高い成績を残し、二年生に上がってからは『学園最強』の名を得て生徒会長にも就任しました」


 スープを一口飲む。

 これだけ聞けば、ただの優等生。

 しかしそれでは終わらないのだろう。


「人望にも優れ、多くの同級生や下級生に慕われています。生徒間のコミュニティでは、まず間違いなく最も大きい勢力でしょう」

「あ、それなら私も聞いたことあるわ。グループの上級生が下級生を指導したり、休日に交流会を開いたりとか何とか……」


 どうやら想像以上に大きなグループのようだ。

 リーダーは当然、アロガン本人。

 幹部がヘビィたち三人組ってところか。


「随分賑やかなグループだな」

「はい。それ故に、噂も頻繁に飛び交っています。良い内容も、悪い内容も」


 さっきランカも言っていた『噂』。


 まぁ、有名人には大なり小なり付きものだ。

 それこそ前世のインターネットでは、昼夜を問わず毎日多種多様な噂話が転がっている。


 大半は根も葉も無いデマだろうけど。


「賭博、恐喝、違法物の売買、娼婦の斡旋……あげればキリがありません。最も証拠がない以上、単なる虚偽情報の可能性は充分にあります。しかし、その手の噂が多すぎるのもまた事実です」

「それにあのブレイン家だからねー。『メイジの双翼』と謳われた二大公爵家の片割れ。出来ないことの方が少ないと思うよアタシは。陰謀論だって言われたら、まあそうなんだけどさ」


 メイジの双翼。

 これには聞き覚えがある。

 建国当初から国を支えた、二つの公爵家。


 子供でも知る、貴族の象徴。


「……そうか」


 ふと、昨日の今朝を思い出す。

 精神干渉魔法を使っていたアロガングループ。

 加えて彼らの悪い噂とリネットへの強引な勧誘。


 噛み合う。合ってしまう。

 噂と、実際の行動が。

 つまり……リネット達の危惧は、正しい。


 正しいからこそ、これ以上の話しはやめるべきだ。


 アロガンの手先が何処に潜んでいるか分からない。

 タスクも同様の考えか、会話の途中からさり気無く周囲への警戒を強めている。


「忠告ありがとう。気をつけることにする」

「いえ。こちらこそ、長々と申し訳ありませんでした」

「もー、カタイなーリネットは〜」

「ランカ……貴女が柔軟すぎるのです……」


 笑うランカとため息を吐くリネット。

 彼女たちを見て、クラージュも微笑む。

 和気藹々とした穏やかな空気。


 叶うなら、この平穏がずっと続いてほしい

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ