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40話・ブルーシャークの女子生徒

 声の主は女子生徒だった。

 蔵書塔の壁際に立ち、激しく睨んでいる。

 そんな彼女へ詰め寄るのは二人の男子生徒。


 彼らは女子生徒の叫びを意に介さず言う。


「おいおい、急に大声出すなよ? あー分かってる分かってる。本当は俺たちの誘いに乗りてぇけど、恥ずかしいんだよな? ハハッ!」

「ていうかあのアロガン主催のパーティーっショ? 断るとかマジ、ありえねー。オーケー以外の言葉、いる? 要らないよねぇ〜ッマジで!」


 頭の悪そうな口説き文句の数々。

 アイツら……アロガンの仲間、だよな?

 名前はヘビィとカレスだった筈。


 こんな穏やかな日にもナンパか。

 しかも見る限り、かなり強引な誘い方。

 ここは夜の歌舞伎町じゃないんだぞ、全く。


 思わずため息を吐いていると――


「貴方がたは――」

「あ? 何だよ? 文句でもあんのか?」

「っかさ〜、なんかもう、メンドくね? オレ達の誘い拒否るとか、ネーから。マジで」

「ぁ、う……!」


 ヘビィが女子生徒の片腕を乱暴に掴む。

 カレスは取り立て屋のように顔を近づけた。

 途端に彼女はビクリと体を震わせ、後退を試みる。


 だが背後は壁。これ以上は下がれない。


「先輩として、忠告してやる。この学園は俺たち……アロガンのモノだ。意味、分かるよなぁ?」

「そーそー。ココじゃあオレたちが王様なの! てことで……王様命令で、身体検査でも初めちゃいましょーか! ハーイ、危険物の持ち込みチェックしまーす!」

「やめっ……!?」


 ウネウネと指を動かすカレス。

 彼がその五指を女子生徒の胸元へ這わせる――瞬間、俺は割って入り手首を捻り上げた。


「いだだだだだだだだだだだっ!?」

「……ただのナンパなら、見過ごしたんだけどな」

「うおっ!? て、テメェ誰だ!」


 驚くヘビィ。

 女子生徒も目を白黒させていた。


「ナンパもセクハラも、他所でやってくれ。心地良い気分が台無しだ」

「っううう! はな、せやああああ!」

「ほらよ」


 カレスの手を離す。

 直後、彼は殺意を迸らせた。

 隣に立つヘビィも俺を睨む。


「見たことねぇ顔だな……一年か?」

「正解ですよ、先輩」

「知るかっ! お前、オレに何したか分かってんのかっ!? バレッ――ごほぉ!?」


 魔法を唱えようとしたカレスの喉元を指で突く。

 この距離なら、素手の方が遥かに早い。

 魔法頼りの者が陥りがちなミス。


「ごほっ、げっ……! こ、いつ……!」

「落ち着いてください、先輩方」

「――そうだ。落ち着けカレス」


 ニヤニヤと笑うヘビィ。

 彼は既に女子生徒の腕を離していた。

 と言うより、もう興味を失っている感じ。


 新しい玩具を見つけて喜ぶ子供のように。


「久しぶりだぜ、お前みたいな威勢の良い奴はよ。それで……俺たちに何の用だ?」

「用も何も、彼女へ卑猥な暴行を加えようとしたのを止めただけです」

「暴行ぅ? おいおい、冗談キツイぜ」


 ヘビィは両手を上げ、戯けながら言う。


「俺たちはアロガン主催のパーティーに誘おうとしただけだぜ? ま、ちょいとスキンシップがいきすぎたかもしれねえが、その程度だ。なぁ?」

「…………っ」


 同意を求めるように、女子生徒へ視線を飛ばす。

 彼女は何も言わず、俯くばかり。

 本音は否定したい雰囲気。が、相手は上級生。


 まして家の『格』が上なら尚更だ。

 無言はせめてもの抵抗。

 けれど彼は肯定と受け取ったのか、会話を終える。


「そういうワケだ。じゃあな一年」

「おい、ヘビィ!」

「いいからお前も来い。あとで話す」

「チッ……!」


 ギロリとこちらを睨むカレス。

 明確に憎悪と殺意が宿っていた。

 だが何もせず、ヘビィと共に去って行く。


 残されたのは俺と女子生徒。


「災難だったな、あんたも」

「いえ……それより、助けて頂きありがとうございます」


 綺麗に礼をする女子生徒。

 面を上げた時、改めて彼女の姿を見る。


 眼鏡を掛けた、褐色肌の少女。

 紫髪緑目。

 二束の三つ編みを左右に垂らした髪型。


 身長は155センチ前後。

 校則通りに着た制服とポンチョ。

 両脚は黒タイツに包まれている。


 最も目を引くのは、額の紋様。


 六角形の紋様が額の中心に刻まれていた。

 容姿を損なわない程度の主張

 紋様の有無に関わらず、彼女は美少女だけれど。


「私はリネット・メディウム。ブルーシャーククラス所属の一年です」

「そうか。俺は――」

「同じ一年生のクオンさんですよね? クラスは確か、レッドイーグル」

「……よく知っていたな」


 僅かに驚く。

 同学年とは言え、有名でもない他クラスの生徒の名前を把握しているのは珍しい。


 すると彼女はサラリと言う。


「在校生の名前は殆ど覚えています。それに貴方の顔は入試の時に拝見しましたので。名前もその時に」


 本当なら凄い記憶力だ。

 落ち着いた喋り方も理性的。

 リケジョっぽい印象を受けた。


「なら、自己紹介は要らないな。それで……どんな経緯でアイツらに?」


 聞くと、リネットは淡々と話す。


「別に、大したことではありません。ここで友人を待っていたら、突然アロガン・ブレイン主催のパーティーに来ないかと誘われまして。興味が無いので断ったのですが、彼らは執念深く……傍迷惑な方々です」


 彼女の様子を伺う。

 表面上は気丈。しかし、隠し切れない動揺が言動の節々に見受けられる。


 これは早々に離れた方がいいかもな。

 男の俺がいると、心も体も休まらない。

 とは言え置いて行くのも気が引ける。


 どうしたものかと悩んでいると――本校舎側から蔵書塔へ走って来る人影を見つけた。

 その人物は手を振りながら駆け寄って来る。


「ごめーん、お待たせー!」

「ランカ……」


 リネットが呟く。

 恐らくは友達。

 なら、お役御免だな。


「じゃあ、俺はここで。もしさっきの件で不安があるなら、アムール・カシオン先生を頼るといい。あの人なら、真摯に対応してくれる筈だ」

「あ、クオンさん――」


 競歩のつもりで蔵書塔から離れる。

 これ以上関わるのは面倒だ。

 趣味の欄に人助けと書くつもりはない。


 そういうのは主人公っぽい奴に任せよう。

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