06 約束
何か、長くて要領を得ない話だった。
途中で泣いたり怒ったりしなけりゃもっと分かりやすくなるのに、何でみんなそんな簡単なことが出来ないのかな。
えーと、折角だからまとめてみるか。
あの人の仕事は調査員だと聞いて、少しだけ共感しそうになってしまった。
ただ分からないのが、仕事で失敗して同僚から追われて逃げているってところ。
よその仕事って、失敗するとみんなからいじめられるのかな。
それとも雇い主に取り返しのつかないほどの損失を与えたとか。
何にせよ、思っていた以上の厄介ごとだったよ。
「で、これからどうするわけ」
「分からない」
「何それ、あんなにいっぱい話すことあったのに先のことは何も考えてなかったんだ」
泣いちゃったよ、これって本当に僕が悪いの?
「自慢じゃないけど僕はすごく弱いんだ。 君を追っかけてくる連中を何とかしてくれるなんて思わないで欲しいな」
「こんな山奥までどうやって来たの」
「さっき君が言ったじゃないか、気配が無いって」
「そんなの有り得ない」
「悪かったね有り得なくて。 僕は気配が無いんで何かと争わなくてすむからどこへだって行けるし、誰かと戦ったことも一度だって無いんだ」
「すごい……」
「はいはいどうも。 お褒めに預かって光栄ですけど僕が君のために何か出来るなんて期待しないで欲しいな」
「一緒について行っちゃ駄目かしら」
「分かったよ。 君がやりたいようにすればいいさ」
「さっきも言ったように僕はすごく弱いから、君が強盗しようが命を狙おうが僕には逆らいようが無いんだからね」
「そんな事はしないわ」
「じゃ、ひとつだけ約束してくれるかな」
「出来るだけお互いのことには干渉しない」
「それならついて来ても良いよ」
「これからよろしくね」
「はいはい、こちらこそよろしく」
こうして、僕の旅はひとり旅じゃなくなった。
あの人がいつまで僕といることに我慢出来るか知らないけどさ。