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03 あの人
とある国、とある山中、いつも通りの調査。
徹夜の調査を終えてくたくたになって野営地に戻ってくると、テントの中に人がいた。
ちらっと中を覗くと寝ているようだったので、どうしようかと考える。
かなり深い山中なのに、その人の格好は明らかにこの場に不似合いだった。
何というか、普通すぎる。
まるで町近辺の日帰り薬草採取にでも来たかのような装備と服装。
いつも通り感情は動かない僕だったが、嫌な予感くらいはする。
厄介ごとはごめんだな。
なにせ僕は弱い。
魔物を倒すどころか、戦ったことすら一度も無い。
もちろん対人戦なんて考えたくも無い。
どうしよう。
起こしてトラブルになるのは御免だが、
ここから逃げて愛用している野営装備一式を置いて行くのも嫌だ。
さすがに眠っている最中のことには自信が無かったので、野営用品は良い物を選んである。
買える範囲で最も強力な結界を張れるテントは野営の命綱であり旅の相棒だ。
本当にどうしようかと考えていると、あの人が目を覚ました。